周知のとおり、「サードパーティCookieの廃止を再び延期にする」と、Googleは4月下旬に発表した。ポストCookie対策を練る時間が増えたと捉えるのか、そもそもCookieに依存しない戦略を構築済みなのか、ブランドによってはまちまちだろう。

延期したとはいえ、将来的にCookieが廃止される未来は変わらない。これは、デジタル上でのコミュニケーションを取るうえで決して小さい出来事ではないことだ。

ターゲティングから測定まで容易に行えるCookieの消滅がもたらす環境をどのように見ているのか、DIGIDAY[日本版]ではソリューションベンダーに一問一答形式で聞いていく。今回は、RTB HouseのŁukasz Włodarczyk(ウカシュ・ヴォダルチェク)氏に話を聞いた。

ーーサードパーティCookieがChromeから完全に消滅するという事態を、どのように受け止め、考えていますか。



もしサードパーティCookieに代わるものがなければ、クロスサイトユーザーの再識別に基づくパーソナライズされたデジタル広告に悪影響をおよぼします。これはWeb全体でユーザープライバシーを向上させますが、特定の広告において従来通りの成果を挙げることができなくなるという代償を伴います。

この段階的な廃止の主な目的はプライバシー関連の懸念を緩和することですが、そもそもサードパーティCookieが一般的に使用されていたにもかかわらず、実用性の面で完全とは言えませんでした。たとえば機能上の欠陥の例として、「Cookieマッチング」の非効率性があり、これによりしばしば多くのユーザーを失うことがありました。

また、Webサイトの遅延を増大させ、マーケティングキャンペーンの到達範囲を妨げ、パブリッシャーの収益を損なう結果も招いていました。こうしたプライバシーと実用性のバランスを考慮してゼロから新しいCookieレスソリューションを構築することは、時間とリソースを必要とします。

多くの企業は、この機会を利用してユーザープライバシーを重視したプログラマティックソリューションを再構築しています。しかし、一部の企業では、これまで通りのターゲティングを続けるために、サードパーティCookieよりも侵入的な方法を使用して、ショートカットや回避策を模索するという安易な手法にフォーカスする動きも見られます。

全体として、規制当局やブラウザがオープンウェブをより安全な環境にしようと努めていることを考えると、サードパーティCookieの廃止への対応は、デジタルマーケティング分野において革新的でよりプライバシーを保護するソリューションの採用を促進し、ポジティブな影響を与えるよう意識すべきです。

ーーサードパーティCookieなきデジタルにおいて、(単なるCookieの代替ではなく)重要になるものはなんだと考えますか?



ブランドやパブリッシャーは、持続可能なソリューションに投資するか、そうしたソリューションを提供するベンダーと提携するべきです。持続可能なソリューションはスケーラブルであり、プライバシー強化手法を使用しているため、長期的なデジタル広告戦略に最適です。これらのソリューションはプライバシー規制に準拠し、ユーザーデータを保護することで消費者の信頼を築きます。

さらに、米連邦取引委員会(FTC)は最近、顧客データを大規模な分析ソリューションに統合してユーザープロフィールを「驚くほど容易に再識別」して収益化する「持続不可能な大量データ収集業者」を取り締まる方針を明確にしました。FTCは米国の規制当局ですが、デジタルマーケティングの未規制領域に対するこの姿勢は、ほかの国々の規制当局にも同様の態度を促す可能性があります。

ーー今後重要となるサードパーティCookie消滅がもたらすネガティブ、ポジティブ(対パブリッシャー、ブランド、ベンダー問わず)はどのような点にあるでしょうか。



サードパーティCookieの不在により、オープンインターネット上の多くの環境が互いに分断されることになります。この断片化された状況において、サイロ化されたデータにもかかわらず、デジタル広告に対して同様の価値を引き出すことが重要になります。

この環境で優位に立つためには、より高度なアルゴリズムを活用することが鍵となるでしょう。たとえば、ディープラーニングは、従来の機械学習手法よりも優れた性能を発揮でき、特に限定的で断片化された情報を含むデータプールではその差が一層顕著になります。

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