がんになったときに病状とともに気がかりなのが「お金」こと。もし自分や家族ががんだと分かったときに利用できる制度など、備えておきたいことについてご紹介します。監修は一般社団法人がんライフアドバイザー協会代表理事・川崎由華さんです。

「がん」だとわかったときに備えておきたいお金のこと

医療費など、負担しなければならない費用がわかったら、負担を軽減する方法がないか確認を。自ら申請する必要があります。

●1:医療費のおよその金額を割り出す

<「がん相談支援センター」でだれでも相談が可能>

治療の内容や入院期間を聞き、医療費の見通しを立てましょう。病院の医療ソーシャルワーカーに相談できるほか、全国の「がん診療連携拠点病院」には「がん相談支援センター」が設置されており、病気についてだけでなく、費用についても相談できます。だれでも無料・匿名で利用が可能です。

●2:加入している社会保障制度の確認、申請

<加入している健康保険組合によっては、さらなる給付が>

「高額療養費制度」のほか、加入している健康保険などによって付加給付を受けられることがあります。利用できる制度がないか、加入している保険と付加給付の種類を調べましょう。保険証に記載されている加入先に問い合わせるか、企業に勤めている方は社内担当者も相談先のひとつです。

●3:加入している生命保険の内容を確認

生命保険に加入している場合は、給付金・保険金の支払い条件や支払われるまでの流れと期間の確認を。請求受け付けから審査、支払いまでの期間は保険会社によってさまざまですが、1か月前後かかります。審査には書類の提出が必要となることもあるので、手続き方法もチェックしておきましょう。

闘病中の助けになる社会保障制度

利用できる社会保障保証制度を上手に活用することで、負担を減らすことができます。

●障害年金

がんによって日常生活や働くことに支障が出て1年6か月以上が経過した場合は、障害年金が適用される可能性があります。手術で体の機能が変わったり、抗がん剤など化学療法によるしびれや痛みといった副作用など、がんとの因果関係が認められると、支給されることも。

●傷病手当金

会社員や公務員で健康保険に加入している人は、病気やけがによって就労できなくなったときに、おおよその給与の2/3の金額を通算で1年6か月の間、受給することができます。がんによる療養・休職が必要な場合にも利用でき、条件によっては退職後に残期間の受給が可能。

<非正規雇用でも制度を利用できることもあります>

傷病手当金は正規雇用か非正規雇用かを問わず、健康保険に加入していれば利用することができます(国民健康保険を除く)。また、2022年10月以降は非正規雇用者の社会保険加入要件が緩和されたので、加入・給付対象かどうかを確認してみましょう。

病気になる前に備えておくといいこと

いざというときに備えて、健康なうちに調べておいたり、見直しておいたりするといいことを紹介します。

●使える社会保障制度を確認

→申請主義なので、手続きしなければ利用できない。

健康保険の付加給付や傷病手当金、障害年金などの制度は先に触れたとおりですが、これらの制度はいずれも「申請主義」。自分で申請しないと給付されません。病気になる前に、制度や手続きの方法を知っておくと、いざというときの申請がスムーズです。また、病気により退職する可能性がある場合は、雇用保険の受給制度も調べておくとよいでしょう。

●預貯金の整理

→できれば医療費は別立てにしておく。

治療にお金がかかるようになると、「家族の大切なお金を目減りさせてしまった」と罪悪感を抱く人も少なくありません。あらかじめ医療費を別立てにしておくと、同じ費用がかかっても「目減りした」と思わずに、「備えていた費用でまかなえた」と気分がラクになります。家族で話し合って医療費を独立させてプールしておくと安心です。

●生命保険の見直し

→治療法の進歩で適用されないことも。

少し前の医療保険には、「通院3日目から」「入院したら」といった条件がついているものが多くありますが、現在では治療が進歩して、抗がん剤の投与が飲み薬のみで通院すら不要な場合も。保障内容をチェックし、加入する保険を見直すことも重要です。また、一時金は用途を限定せず、一度にまとまった金額が支払われるタイプは気持ちに余裕が生まれます。

<医療費に不安がある場合、病院の医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターへ>

支払いに不安がある場合も、まずは病院の医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターへ。病院によっては分割での支払いにしてくれたり、入院費用が抑えられる方法を考えてくれることも。公的な貸付制度などもあるので、支払えなくなる前に相談してみましょう。