この記事をまとめると

■日本の文化である「デコトラ」は1960年代頃に誕生したと推察される

■映画「トラック野郎」のヒットをきっかけに全国へと広まった

■デコトラ愛好家に人気のトラックメーカーについて解説

デコトラ愛好家に人気のトラックメーカーとは?

 1960年代から始まったと推察される、日本の文化「デコトラ」。荷物を運ぶトラックを絢爛豪華に飾り立てたものをデコトラと呼ぶのだが、1970年代に公開された映画『トラック野郎』の大ヒットにより、全国各地へと広まった。そんなデコトラ愛好家たちの間では、さまざまなこだわりが存在する。今回は、デコトラ野郎に人気のトラックメーカーについて考察してみたい。

 日本には、いすゞ自動車と日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスという4つのトラックメーカーが存在する。トヨタ自動車や日産自動車、マツダも小型や中型トラックを販売しているが、今回は大型トラックや中型トラックを主に開発する、4社に限定して話を進めてみたい。

 自動車メーカーとして日本最古の歴史を誇るのは、江戸古代末期にその端を発するといういすゞ自動車。かつてはトヨタや日産と御三家として扱われていたいすゞだが、1993年にはSUVを除く乗用車の自社開発から撤退し、トラックとバスのブランドとして再出発を果たした。大型車ではギガ、中型車はフォワード、小型車はエルフが代表作となっている。

 ギガやフォワード、そしてエルフを実際に乗ってきた筆者が感じた個人的な感想をいえば、いすゞのトラックは総じて乗りやすいというイメージがある。また、国内初となるバンパーライト(ヘッドライトの位置を下げるという要件を満たすための車両)の大型トラックを生み出したメーカーであるため、洗練されたデザインでも人気が高いブランドだ。

 日本のトラック及びバス製造業界でも広く知られる存在である日野自動車は、昭和の時代からデコトラ野郎の心を揺さぶる名機を開発してきた、デコトラ界御用達の名ブランド。

 国産では初となるハイルーフがラインアップされたことでも知られるスーパードルフィンは、昭和56年から平成2年にかけて製造された旧車であるにもかかわらず現在のデコトラ界では神格化されており、多くの愛好家たちが現代でも所有している。そんな日野のトラックも、とにかく乗りやすい。そして、乗り心地がいいという部分も特徴だと言える。

いまも昔も日野自動車の人気が高い

 かの映画『トラック野郎』でおなじみの一番星号とジョナサン号のベース車となった三菱ふそうは、デザイン性の良さで人気を集めるトラックブランド。もちろん性能面も問題なしで、変わらぬ人気を誇り続けている。

 大型車はスーパーグレート、中型車はファイター、小型車はキャンターが代表作。筆者自身はふそうの大型車に乗務した経験がなく、平成初期のファイターに乗ったきりご無沙汰のメーカーだ。それゆえやや曖昧だが、乗りやすいが排気ブレーキが弱かったような記憶がある。もちろん現在では改善されていると思うが、デザイン面ではもっとも好きなメーカーである。

 現在、スウェーデンの多国籍企業であるボルボグループの子会社であるUDトラックスは、かつて日産ディーゼルや日産UDの名称で親しまれたトラックメーカー。

 性能やデザインなどで他の3社に見劣りしていた同社のトラックは、お世辞にもデコトラ野郎に愛されるメーカーではなかった。しかし、2004年に発表された大型車クオンの登場により、UDトラックスの人気が高まることになった。

 車両価格の値引き率が高いという部分も後押しし、現代では多くのユーザーをつかんでいる。クオンの前身にあたるビッグサムはブレーキの利きが悪くて乗りにくかったのだが、クオンになって改善されたとの話も聞こえてくる。

 このような4社が存在するが、デコトラ野郎の間では日野自動車の人気が高い。これは昭和の時代から続くことで、いつの時代も日野にこだわるデコトラ野郎が多い。そして三菱ふそう、いすゞ、UDトラックスの順になる、と言ったところだろうか。

 デコトラ野郎は、どうしても見た目にこだわる傾向がある。また、有名なデコトラのベース車が人気を集めるという風潮も古くから存在している。それゆえに性能面などで判断されることは少なく、飾ればカッコイイクルマが選ばれるため、旧車の人気が高いのである。

 新型車や格上の車両へと寄せたカスタムを施す傾向がある一般的な改造車とは裏腹に、旧車のマスクへと換装させる改造法が人気を集めるデコトラ。それもまた、デコトラ界における特徴なのかもしれない。