人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさん。SNSでも留学生活の様子を紹介していることで人気です。そんなRitaさんは、ひとり旅が大好き。でも初めてのひとり旅はなんと50代になってからなのだそう。ハマったきっかけとその魅力を紹介します。

初めてのひとり旅は50代。徐々にハマりました

私が初めてひとり旅を経験したのは53歳のとき。今住んでいるスペインへ語学留学に来る移動時でした。それまでの日本での生活は仕事と日常に追われ、連休があっても昼まで寝られることをいちばんのご褒美に感じるタイプ。でもスペインに来たのををきっかけに、ひとり旅の極意を知り、今では丸一日空き時間があれば地図を検索してリュックを用意することが多くなったのです。

【写真】憧れのドミトリーに宿泊

最初はひとりで飛行機に乗ることにも怖さがあり、ましてや案内板は英語かスペイン語です。何泊もの旅を計画し、現地の交通手段やホテルを予約するなんてハードルが高すぎました。でもスペインに住んでみると、自分の予定に合うツアーなどほとんどなく、尻込みしていたらせっかく滞在しているスペイン国内も近隣国にも行けない状況でした。

そのため旅慣れた人の見よう見まねで、最初はバスで数時間のスペイン国内への1泊からチャレンジしました。「ネット検索で簡単に予約できるよ」と言われた長距離バスの予約すら何度も失敗して遠いチケット売場まで足を運んだり、当日も同じ時間帯のバスが2台あり、どちらに乗ったらいいのか分からなかったり、現地のホテルがまったく見つけられず別のホテルで尋ねたり…。緊張も重なりとても疲れたことを覚えています。

ひとりだからこそ「やってみたい」を詰め込める

なかでも思い出に残ったのは、北スペインを周る旅でした。それまで短期の旅を数回繰り返し、ネット予約にも慣れ、バスや電車でも寛いで過ごせるようになっていた頃でした。

スペインの北東から西方向へ、サンセバスチャン→ビルバオ→サンタンデール→レオンを2泊ずつしマドリードへ戻る行程。日程も行先も食事も自分の好みで組みました。そして密かに憧れていたドミトリー(1部屋に2段ベッドが数台置かれた共同部屋のホテル)へも宿泊。若い頃にバックパッカー的な旅行をしたことがなく、どんな雰囲気なのかを味わってみたかったからです。

恐らく友達と一緒だったら反対されそうなホテルも、ギュウギュウな行程も、おいしすぎて2日間とも同じお店で食べたくなった食事も、ひとり旅だったからこそできました。

また次の拠点への移動は長距離バスを毎回ネットで予約し、間に合いそうになければ直前に時間を遅らせたり、予定が早く終わればバスも早めて次の拠点へ行きました。この1週間以上の旅を組み立てて毎日を臨機応変に楽しめたことで、それまではビクビクしていたひとり旅が、「ひとりだからこそおもしろい!」と思えるようになったのです。

だれに気を遣うこともないのが大きな魅力

私が個人的に感じる「ひとり旅のよさ」は、だれにも気を遣わないから気持ちが軽いこと。例え気心が知れた仲間でも一緒に旅をするとなれば、お互い最低限の気遣いは必要です。

「さっき窓際の席だったから今度はどうぞ」「朝散歩すると気持ちよさそうだけどあまりに早いと悪いかな」「確かお肉よりお魚が好きだよね?」

日常的にもあるこの尊重し合う気持ちはひとり旅には不要です。同行者への気配りを一旦「無」にでき、アンテナを自分だけに向けられることは、想像以上に軽い気持ちとなるものです。

50代でも、新しい自分に出会える!

そして、ひとり旅で過ごす時間は「発見」の連続です。地域の発見はもちろんのこと自分自身に対する発見も多く、無理だと思っていたことができた…会話が完璧でなくても友達になれた…この景色でこんな気持ちになれた…、今までとは違う自分に気づくことばかりです。

また一日じゅう、自分だけに向き合う時間が多いことで本音にも向き合え、本当はなにをしたいのか、なにに困っているのか…自身を見つめなおしてリセットするにはいちばんの環境だと思っています。

ひとり旅はさまざまなハプニングを考えると踏み出しにくく、そして慣れるまではかなり緊張するものでした。でも旅での数々の出来事に対応する方法と知恵を学び、なにが起きても結局何とかなることを実感しています。

ひとりだと、列に並んでいる最中にトイレへ行きにくかったり、「きれい!」という喜びや「イタタ…」という嘆きも独り言となり、ちょっとモゾモゾするときもありますが、新しい世界と新しい自分を知る絶好の場となっています。

もう成長なんてないと思っていた私の人生は、ひとり旅を重ねる度に未熟さも進歩も感じ、まだまだ知らない自己発見が続いています。