TikTokショップは本当に成功するのか?



TikTokを巡っては、米国政府によって「禁止」される危機にさらされたり、TikTokショップ(TikTok Shop)という夢を実現するためにサポートを続けていたりと、さまざまなことが起きている。3月31日から4月3日まで、TikTokショップはAmazonプライムデー(Amazon Prime Day)に似たショッピングホリデーであるTikTokショップ・スーパーブランドデー(TikTok Shop Super Brand Day)という米国市場向けのプロモーションを実施している。これに参加する美容品ブランドのひとつがe.l.f.コスメティクス(e.l.f. Cosmetics)だ。

e.l.f.コスメティクスや化粧品メーカーのタルトコスメティクス(Tarte Cosmetics)などの大手ブランドは、TikTokショップが自社ブランドでどれだけ成功しているかを公言しているが、TikTokショップが確実に成功するかどうかは依然として疑問だ。

大手情報サービス会社ブルームバーグ(Bloomberg)の1月の記事によると、TikTokは米国のeコマース事業を2024年に10倍の175億ドル(約2兆6500億円)まで成長させることをめざしているという。2023年、全世界におけるTikTokの総売上高は200億ドル(約3兆280億円)に達する勢いだったが、その売上の大部分は東南アジアが占めていた。一方、メディア会社のインフォメーション(The Information)は2023年8月、TikTokは2023年に米国のTikTokショップにおいて5億ドル(約757億円)の損失を被るだろうと報じた。

ほとんどが「1回限り」の注文



あるボディケアブランドのエグゼクティブは匿名で、TikTokショップはShopify(ショッピファイ)で構築した自社ECのバックエンドに統合されており、ほとんどの注文が1回限りのものであることが確認できたと語った。TikTokショップは同ブランドのD2C売上の「大部分」を占めているが、自社ECは同ブランド全体の売上のごく一部でしかない。

この種の消費者行動に関しては、いくつかの疑問とその意味がある。まず、一貫して1回限りの購入を続けることは、送料を考慮すると消費者にとってもブランドにとっても高くつく。同氏によると、TikTokショップは買い物客の購買促進のために送料割引やセールを実施してきたという。しかし、これらの割引がいずれ減少・廃止された場合に、TikTokショップの買い物客がどれくらい残るかが問題となるだろう。TikTokはすでに、売り手を誘引するためのプロモーションに終止符を打ち、売り手に課せられる手数料を4月から各売上の6%、7月からはほとんどの商品カテゴリーで8%に引き上げると発表している。

TikTokでは、買い物客は1回の注文で複数のブランドや商品を購入することができるが、別の美容関連ブランドのエグゼクティブは、TikTokショップブランドのストアフロントにない限り、複数の商品を購入してもらうのは難しいと話す。

Z世代にとっては邪魔な存在?



フレグランスブランドのドシエ(Dossier)で共同創業者兼CEOを務めるセルジオ・タッシェ氏は、同社のTikTokショップ利用について、「我々は人々により多くの商品を買ってもらえるよう働きかけ、そこで買うことにメリットがあることを理解してもらうように努力している」と語った。「このショップの柔軟性は非常に高いが、自分たちで販売ファネルをコントロールできないため、我々のビジネスをそのファネルに適応させなければならない。当社はたいていの物事に対しては迅速に動くが、TikTokショップに関してはより慎重に動いている」。

タッシェ氏は、ドシエではTikTokショップでのショッピング体験を自社ECで提供している体験とほぼ同じにしたいと考えているため、ゆっくりとしたアプローチになっていると説明している。自社ECでは、フレグランス商品を3個購入すると割引が受けられるため、平均注文額はTikTokショップよりも高い。しかし同氏は、TikTokショップは非常に良い成果をあげそうだという確信があると語った。もちろん、それは買い物客が定期的かつ経済的に可能な範囲でTikTokショップを利用するようになればの話だ。

メイクアップブランドのミラニ(Milani)でCMOを務めるジェレミー・ローウェンスタイン氏によると、最近、Z世代はTikTokショップをスクロールの邪魔になる迷惑な存在だと認識しており、自分のおすすめ(For You)ページでそれを「消したがっている」という。ただし、米グロッシーの記事によると、同社はこの商売の場を見限っているわけではない。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Can TikTok Shop succeed?]

EMMA SANDLER(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)