何か不安なことがある時、頭の中で何度も同じ考えがループしてしまい、答えが出ないのに考えるのを止められなくて苦しんだ経験があるという人もいるはず。ニュージーランドのマッセー大学で心理学の准教授を務めるカースティ・ロス氏が、「考えすぎを止める方法」について解説しています。

How can I stop overthinking everything? A clinical psychologist offers solutions

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臨床心理士としても活動しているロス氏は、患者からよく「頭の中で思考がループしてしまうのを制御できない」という悩みを聞かされているとのこと。ロス氏は思考のループから考えすぎに陥ってしまう流れについて、まずはネガティブな考えを頭の中で繰り返してしまう「反芻(はんすう)思考」という状態に陥り、それが解決策を見つけられないままだと「考えすぎ」になってしまうと指摘しています。

「これはレコードが曲の同じ部分を何度も再生してしまうようなものです。レコードの場合、これは大抵ひっかき傷のせいですが、人間が考えすぎてしまう理由はもう少し複雑です」と、ロス氏は述べています。



ロス氏は、人間の脳は脅威を探してそれに対処するようにできており、その脅威が過去の経験や将来起こりうる「もしも」の事態の場合もあると指摘。すでに終わってしまった過去やまだ起きていない未来の脅威について考える場合、それを解決することはできないため、人間は同じ考えを繰り返し続けてしまうとのこと。

誰もが反芻思考や考えすぎに陥ってしまうことはありますが、特に過去に苦しい出来事やトラウマ的な経験にさらされたことがある人は、より脅威への不安が強く考えすぎてしまう可能性が高いそうです。

また、もともと深く考える傾向があったり、不安や気分の落ち込みが激しかったり、ささいなことに敏感だったりする人も考えすぎになりやすいほか、ストレスがあったり体調が悪かったりすると思考の精度が低下して、同じ思考から離れられなくなってしまうことがあるとロス氏は述べています。



ロス氏は考えすぎをやめる方法について、以下の3つを提案しています。

◆1:なぜ考えすぎてしまうのかを考える

ロス氏は、「自分が考えすぎてしまう」という状態が一体なぜ起きているのかについて考えることが重要だと指摘。たとえば、「新しく大学生になる子どもの将来を考えて寝付けない」という場合もあれば、「新生活で孤独やホームシックを感じて思考がループしてしまう」という場合もあります。これらの考えすぎを引き起こす原因について把握することで、対処法が思いつく可能性があります。

その一方で、何かについて考えすぎてしまうということは、人生が新しい段階に入ったことを示すサインでもあるとのこと。たとえば、大学生になる子どもの将来を不安に思っている親は、子どもの教育に最善を尽くせたこれまでの状態から、子どもが自分の管理下を離れて生活する状態に移ったことで不安になっているというわけです。こうした感情の原因を認識することで、他人に相談しやすくなるとロス氏は述べています。



◆2:思考を手放す

反芻思考や考えすぎをコントロールする方法は、「変化・受容・放棄」の3段階に区別できます。まずは自分自身の考えに反論してみて、凝り固まった思考をほぐすことが「変化」です。同じ思考を繰り返しているうちに、必ずしも真実ではないことがまるで真実のように思えてきてしまうため、一度思考を変化させることでループから抜け出すことが必要とのこと。

そして、自分の感情を受け入れてセルフケアに励んだり、誰かに相談したり、社会的なサポートを受けたりすることが「受容」です。自分の人生ですら他人が関わる以上100%思い通りに管理することはできず、コントロールできるのはあくまで自分の反応や行動に限られます。このことを受け入れて、物事がどうなるのかを正確に知りたがることを「放棄」し、最後は自分の能力を信じることで考えすぎから脱却できるそうです。

◆3:気晴らしをする

ストレスがたまって疲れた脳は思考の精度が落ちてしまうため、反芻思考や考えすぎに陥ってしまう可能性が高くなります。この状態を改善するためにはよく食べて、よく体を動かし、楽しいことをして、大切な人に会い、よく眠ってストレスレベルを管理することが大事です。



ロス氏は、「考えすぎが人生に影響を及ぼし、不安のレベルが上がったり、気分が落ち込んだりしている(睡眠、食欲、人生の楽しみに悪影響を及ぼしている)場合は、誰かに相談して管理するための戦略を立てる時期かもしれません」「考えすぎている自分に気づいたら、なぜ考えすぎているのかを自問し、自分の気持ちを認め、未来を見据えた問題解決をしましょう。そして、人生は予測不可能であることを受け入れ、対処する能力を信じることに集中してください」と述べました。