ラグジュアリー再販会社のザ・リアルリアル(The RealReal)は、小売業界において独自の課題を抱えている。同社は単一SKU商品の販売だけでなく、委託販売者と従来の顧客の双方の獲得と維持にも取り組まなければならないのだ。同社のライフサイクル・ロイヤルティ・リテンションマーケティング担当シニアディレクターのケリー=アン・ブッチャー氏によると、各グループのロイヤルティを確保するには個別の戦略が必要であり、新たなテクノロジーやグループメンバーの行動に応じて進化させる必要があるという。

「だが、市場の双方において、これら(の戦略)はパーソナライゼーションに大きく基づいている」とブッチャー氏は話す。

顧客と委託販売者に向けたプログラム



顧客向けのロイヤルティプログラムであるファーストルック(First Look)は、サブスクリプションベースで、買い物客の希少価値への高まる欲求に応えるものだ。買い物客は月額12ドル(約1805円)で、ザ・リアルリアルに毎日出品される2万点の商品に24時間アクセスできる。また「シークレットセール」を利用できるほか、限定商品の特別ページを閲覧したり、誕生日割引などの特典も受けられたりする。

「この層は、当社のもっとも熱心な顧客層だ。人々がファーストルックに価値を見いだすのは、このサイト上にある商品が一点ものばかりで、欲しくてたまらなくなるようなものだからだ」。

委託販売者向けには、リアルリアル・リワード(RealReal Rewards)という4段階のプログラムがある。要するに、売れば売るほど特典が得られるというものだ。リアルリアル・リワードの全会員は、販売プロセスを通じてサポートを提供する同社の委託販売コンシェルジュサービスを利用できるほか、誕生日にはショッピング特典もある。VIPと呼ばれるトップ・セラーには、さらに5%のコミッションが加算される上に、ファーストルックプログラムへの無料参加権も与えられる。

創業13年のザ・リアルリアルにとって、ブッチャー氏と6人からなるチームの仕事は成功していることが証明されている。2023年、ザ・リアルリアルの商品総売上の82%はリピーターの委託販売者によるものであり、一方で87%がリピーター顧客によるものだった。ザ・リアルリアルには3400万人以上の登録者がいる。ブッチャー氏によると、ロイヤルティ会員数は公表していない。

ザ・リアルリアルは2月29日に2023年通期決算を発表したが、第三四半期の決算報告では企業投資家の信頼を回復させている。2023年2月にCEOに就任したジョン・コリル氏の下で、同社は調整後EBITDA損失を700万ドル(約10.5億円)と発表したが、前年同期は2800万(約42.1億円)だった。この結果は、2024年までに黒字化するという目標が達成可能であることを証明している。

適切なタイミングで顧客が見たいものを見せる



ザ・リアルリアルのパーソナライゼーションへの取り組みは、ロイヤルティプログラム会員以外にも及んでいる。顧客の種類にかかわらず、同社の販売チャネルにおける習慣や行動に基づくデータが、顧客のショッピング体験に反映されている。ユーザーが「いいね!」のハートをクリックした「気になる」商品のほか、検索履歴や購入履歴、ウェルカムジャーニー中のアンケート回答などが考慮される。このデータは、アプリ内であれ、サイト内またはeメールであれ、顧客が閲覧する購入可能なカテゴリーやキュレーションをカスタマイズするために使用される。たとえば、ある買い物客が目にする新着商品は、チャネルごとにその人がもっとも興味を持ちそうな商品に基づいて、別の買い物客が目にする新着商品とは異なるものになる。

「もっとも熱心な会員のなかには、新着情報をチェックするために毎朝のメールを楽しみにしている人もいる。そしていくつかの商品に『気になる』を押すことも多く、場合によってはすでに気になっている商品もチェックしていると思われる。これはちょっとした楽しい好循環だ」。

SMSの購読者は同社でもっとも熱心な会員でもあり、そのため、ロイヤルティ的な特典を受けることができる。その特典には、シークレットセールや、厳選された商品キュレーションへの先行アクセス、独占販売などが含まれる。

さらに、会員の行動に応じて単発のeメールやテキストメッセージも送信される。たとえば、何かに「気になる」を押すと、似たようなアイテムを特集したメールが配信される。ブッチャー氏のチームはザ・リアルリアルの商品・技術・機械学習チームと連携して取り組んでいるという。

「我々は、人々が見たいと思っているものを適切なタイミングで確実に見れるようににしたい」とブッチャー氏は話す。同社はセールスフォース・マーケティングクラウド(Salesforce Marketing Cloud)とも連携し、eメールの配信時間を顧客の希望に合わせているという。ブッチャー氏は、2月26日に開催されたカンファレンス、eTail West(イーテールウエスト)で、「Standing out in a crowded inbox(混雑した受信トレイのなかで目立つ)」というテーマのパネルディスカッションに参加した。

委託販売者には人気ツールやインパクトレポートを提供



委託販売者向けのパーソナライゼーションとしては、販売した商品の寿命を延長させることによって、業界に水や二酸化炭素の排出量を削減したことを示す個別のインパクトレポートが提供される。また、1対1のサポートを提供するコンシェルジュサービスもある。

加えてザ・リアルリアルでは、販売者が費用対効果を最大限に高めるのに役立つツールを提供し続けている。オンサイトでは、分析主導ツールのインサイトセンター(Insights Center)が、販売の観点からトレンドになっている商品のスナップショットを提供する。さらに、新しいツールのハンドバッグエスティメイター(Handbag Estimator)は、ある時点でのハンドバッグのスタイルの推定価値を教えてくれる。また、ザ・リアルリアルで商品を購入した人に、その商品の需要のあるときに再販売するように促すリコンサイン(Reconsign)というツールもある。

ブッチャー氏によると、インパクトレポートは若い会員のあいだで人気があるという。気になる商品を示すオブセッション(Obsession)機能や、買い物客が過去に検索した商品を再度検索し、新たに追加された商品をチェックできる新しいセイブドサーチ(Saved Searches)ツールも同様である。

機械学習の構築で時代を先取り



だがパーソナライゼーションを提供することで、見つけやすさが犠牲になることはないとブッチャー氏は念を押した。ザ・リアルリアルのマーチャントチームは、新興ブランドなど、トレンドに基づいたコンテンツの開発に協力している。これは、エディターの注目(Editor's Picks)を含むオンサイト機能として表示される。また、入手困難な商品とその歴史に関する情報を一緒に掲載するレアファインズ(Rare Finds)という新機能もある。

さらにザ・リアルリアルの15店舗(うち12店舗は買い物可能)では、新規顧客の開拓および、既存顧客や委託販売者のエンゲージメント獲得の双方に取り組んでいる。

「我々はこの機械学習を構築し、人々が何を探しているかを理解し、独自の商品を適切なタイミングで提供することで、時代を先取りしてきた。そして自分たちの持っているデータをさらに掘り下げることで、パーソナライゼーションをさらに強化させていく予定だ」。

[原文:For The RealReal, personalization is the key to customer retention]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)