インタビューに応じる、チェスの元世界チャンピオンで政治活動家のガルリ・カスパロフ氏。米ワシントンで(2024年3月12日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP

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【AFP=時事】チェスの元世界チャンピオンで、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)政権を批判するガルリ・カスパロフ(Garry Kasparov、60)氏は12日、米首都ワシントンでAFPのインタビューに応じ、侵攻を受けるウクライナへの支援強化を西側諸国に呼び掛けるとともに、プーチン政権に対抗する上で反体制派の意見を採り入れる必要性を訴えた。

 カスパロフ氏は今月6日、ロシア金融監督当局により「過激派」リストに追加されたばかり。

 プーチン政権についてカスパロフ氏は、「力にのみ理解があるテロリスト政権」と指弾。ウクライナに対する軍事支援拡大を呼び掛けた。

 反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が先月獄死したことに関しては、ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)に責任があると非難。「ナワリヌイ氏暗殺」はプーチン氏による反体制派弾圧の「新たな節目」となったと語った。

 その上で、「われわれが対峙(たいじ)している敵はこの戦争に勝とうとしている。プーチンはウクライナや北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)にのみ戦争を仕掛けているのではなく、自由主義と国際秩序に戦いを挑んでいる」と話した。

■「クリミアはウクライナのもの」

 カスパロフ氏はプーチン氏による侵略に対抗するため、西側諸国はロシア反体制派の声に耳を傾けるべきだと強調する「プーチン主義とそれが体現するすべての悪の勢力を打ち負かすためには、シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)元大統領の『自由フランス(Free France)』のような、ロシア組も含めた勢力を結集する必要がある」と述べた。

「自由フランス」は、第2次世界大戦(World War II)中に英ロンドンに亡命したドゴール氏が率いたレジスタンス運動だ。

「『(ロシア)政権は非合法で戦争は犯罪、クリミア(Crimea)はウクライナのもの』と主張できる人々を、この闘いに取り込まなければならない」

 カスパロフ氏は「今、ロシア国外に『自由ロシア』の土台を構築する必要がある。われわれは半ば冗談でそれを『バーチャル台湾』と呼んでいる」と語った。

 ただしロシアの反体制派は、ばらばらなことで有名だ。ナワリヌイ氏陣営もかつてはカスパロフ氏と対立していた。

 ここ数週の間にも、今週末のロシアの大統領選に際してどのような形で異議を唱えるかをめぐり、反政権派の間で新たな意見対立があった。大統領選では真の対立候補は立候補すら許されず、選挙管理委員会の職員はプーチン氏の支配下に置かれているため、同氏の勝利は確実視されている。

■「壊滅的な結末はどうなったのか?」

 チェス界のレジェンド、カスパロフ氏は2005年、政治活動に集中するため競技から引退。ここ10年ほどは米ニューヨークに住んでいるが、ロシアの侵攻に立ち向かうウクライナの戦いへの全面支援に、西側諸国が及び腰なことにいら立ちを見せる。

 西側の対ロシア制裁はほとんど成果を挙げていないとし、差し押さえたロシア資産の活用を含むウクライナ向け支援資金の拡充や、長距離ミサイルの供与を訴えた。

 また、米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領政権がロシアに与えるとしていた「壊滅的な結末」についても触れ、「あれはどうなったのか?」と語った。

「残念ながら西側は後手後手に回っている。西側が弱さをさらけ出すたびに、さらなる侵略をどうぞとプーチンにお墨付きを与えることになる」

【翻訳編集】AFPBB News

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