映えない系SNS「BeReal」にハマる理由とトラブル実態、リスクまでを解説します(画像:App Store公式画像より)

中高生や大学生の間で、映えない系SNS「BeReal」がはやっている。BeRealは、1日1回ランダムに来る通知に合わせて2分以内に撮影する写真共有SNSだ。一方、授業中やバイト中にBeRealの撮影、投稿をしてトラブルになる若者が増えているという。BeRealにハマる理由とトラブル実態、リスクまでを解説したい。

撮らないと見られない、加工もできない

BeRealがZ世代にウケている理由は、そのInstagramの逆張りのようなコンセプトとゲーム性のためが大きいだろう。

撮影時はインカメラとアウトカメラで同時に撮影される。周囲を撮るときに、撮影時の自分も必ずインカメラで撮影する仕組みなのだ。スマホに保存してある写真も使えず、編集や加工などもできないため、Instagramで求められていた映えは、このアプリではまったく通用しない。

ランダムに来る通知、しかも制限時間2分縛りは非常にきついが、逆にゲーム的に楽しめるポイントでもある。

制限時間内に投稿できれば、その日はさらに2回、好きなタイミングで投稿できる。一方、制限時間内に撮影、投稿しないと遅れた時刻が表示されてしまううえ、投稿するまで友達の投稿はぼかしが入った状態となり見られない。投稿が見たい若者たちは、必然的に投稿しなければならなくなる。

「休日に寝てたら見逃すとか多いし、バイト中に来てしまってアウトだったことも。遊んでいるときも1日中通知が気になって仕方がない。通知が来たら、近くにいた友達に声かけて何回も撮り直したりして」とある大学生は楽しそうに説明する。

「タイミングも選べないから、部屋が散らかってるから廊下に出るとか、寝起きだけど仕方ないから撮るかとか、授業中はバッグの中を撮ったり、天井を撮ったこともある」。いつ通知が来るのか、撮れないタイミングではどうしのぐかなども含めて楽しいようなのだ。

「インスタではわからないみんなの普段の姿もわかるし、自分で投稿を見返してもリアルにその時が思い出せるし、めちゃくちゃ楽しい」

一方、ハマりすぎた若者たちは多くのトラブルを起こしている。

授業中でも「BeReal撮ろう」、教室中に響く撮影音

X(旧Twitter)内では、「授業中にBeRealの通知が鳴り響く」「授業中でもBeRealを撮っている」話題で持ちきりだ。

「授業中にBeRealの通知音らしきものが教室で鳴って、いろんなところからシャッター音がしていた。教室は広いから先生には聞こえなかったみたいだけど、非常識ですよね」と、ある高校生はため息をつく。

「授業中でも『BeReal撮ろう』とか言われて引いたこともあります。別の子が撮っていたときには、角度的に私も映ってるのに気にしないで投稿していた。だから、通知音が聞こえたら逃げたり、顔を隠して自衛するしかない」


発表会の風景と、それを撮る楽しそうな自分の顔も映る(画像:Instagram公式アカウントより)

2分以内に撮影しなければならない縛り、授業中でもバレないようにこっそり撮るゲーム性が楽しいようで、声を出さずにこっそり撮るというのはいいほう。中には、生徒が堂々と授業中に撮り始めたことで先生が怒ったという例も多く聞いている。

通知は絶対であり、彼らにとってこの2分は絶対に守らなければならないものだ。撮るためにバッグの中や机の中を撮影する学生もおり、中には「通知が来たから『先生、トイレ!』って立って、こっそり撮った」という学生までいる。

模試中やバイト中でもおかまいなしに撮影

当然、いつも問題なく撮れるとは限らない。中には、明らかに撮るべきではない時間帯に撮影し、問題になった学生もいる。

「クラスの女子が、模試中にBeRealを撮っていて特別指導になった」と、先程の高校生は眉をひそめる。「別の高校では、テスト中に通知音が鳴っていたという話も聞いた。他人に迷惑をかけているのに平気なのかな」。

バイト中にBeRealの撮影をし、問題になった例も少なくない。ある小売店では、アルバイト従業員が接客中に客の前でスマホで撮影し始めて問題になったそうだ。バックヤードだからと気軽に撮影した中に、名前入りのシフト表が写っていた例もあるという。


シャッターを押す前の動画が撮れる「BTS」機能により、投稿が完成するまでを動画として撮影できる(画像:Instagram公式アカウントより)

職場やバイト等の仕事中には、仕事に専念する義務があるうえ、顧客の個人情報や企業秘密などを写してしまうリスクもある。私的利用は絶対に避けるべきであり、問題になるのは当然だろう。今後、バイトテロなどにつながらないことを願いたい。

着替え中に撮影した例まである。更衣室のような撮影禁止場所で撮影、投稿し、判明したら大きな問題になることは間違いないだろう。

スクショ自体を止めることはできない

「学校で制服で撮っている子も多いし、友達が映り込んでいても気にしない子も多い。リアルタイムでいる場所がわかるから、リスクがあると思う」と、その高校生は続ける。

慌てて撮った写真に、個人情報が映り込んでいることは少なくないという。「『友達が見るだけならいい』という子もいるけど、スクショしてインスタに投稿する人もいる」。

スクショされた場合、通知は来るが、スクショ自体を止めることはできない。ましてInstagramなどに投稿された場合、その投稿は不特定多数の目に触れる可能性が出てくる。

BeRealを楽しむことは悪いことではないが、振り回されすぎると疲れるうえ、周囲に迷惑をかけることにもつながる。投稿内容によっては、自分自身に不利益をもたらすこともある。一度流出したものは、デジタルタトゥーになることもある。写真や動画は多くの情報を含む。個人情報や周囲に迷惑をかけるものが映り込んでいないか、確認してから投稿する必要があるだろう。

利用する際には、授業中や仕事中は撮らないことを自分の中でルール化して利用するといいのではないか。また、個人情報や問題があるものが映り込んでいないか確認してから投稿する習慣をつけることで、無用なトラブルが減らせるだろう。ぜひ参考にして利用していただければ幸いだ。

(高橋 暁子 : 成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト)