ソーシャルメディアの当初の触れ込みは、「つながりをもたらす」というものだった。それらのさまざまなプラットフォームを使えば、何があっても友人や家族とつながりを保てることが売りだった。

しかし、ソーシャルメディアが進化するにつれ、当初の目的は見たところ後回しにされ、エンゲージメントやインフルエンサー、エンターテインメントが優先されるようになり、消費者のソーシャルメディアとの関わり方は変化している。

ソーシャルメディアを友人や家族とつながる手段に



Snapchatによる最新のブランドキャンペーンは、多くのソーシャルメディアプラットフォームの現状に代わるものとして自らを売り込み、ソーシャルメディアを友人や家族とつながる手段として利用していた頃を思い起させる内容だ。同プラットフォームは2024年2月、消費者が注目する数少ないモノカルチャーのライブイベントであるグラミー賞とスーパーボウルの2つを利用して、消費者とマーケターの双方にこのメッセージを訴求した。

今年のグラミー賞の視聴者は約1700万人に上り、スーパーボウルは過去最多となる1億2370万人の視聴者を記録した。これらのイベントで新たなブランドキャンペーンを展開することは、そうした広告購入がもたらし得る効率性を織り込んだ選択である一方、効率性はあくまでひとつの要素に過ぎない。Snapchatには、大勢の人々が集まるイベントのさなかに、つながりに関するメッセージを発する狙いがあったと、Snapchatの最高クリエイティブ責任者であるコリーン・デカーシー氏は説明する。

「スポーツや音楽は、人々が相互に、そして文化とつながりを持つことができる方法(の一種)だ」とデカーシー氏は話す。「我々は今年、スポーツや音楽、そして我々のコミュニティーが集まってそれらを体験するのを好む場所、ファンダムという概念、そして共通の関心に対するファンダムの行動に注力していくことになる」。

10代の若者にとって安全なプラットフォームを目指す



Snapchatは広告費をこれまで以上に増やす予定はないが、「市場に参入する方法についての戦略を変えようとしている」と話すデカーシー氏によると、同プラットフォームは今後、ユーザーにとって意味のあるイベントに露出し、つながりを重視するつもりだという。

「我々がより(注力しようとしている)のは、人々のために姿を見せ、それらの環境に価値をもたらすことだ」として、デカーシー氏は次のように述べた。「これからはパートナーシップ、フォーラム、ディスカッションなど、人々が本当に楽しさとつながりを感じられるプロダクトの要素にいっそう力を入れる。我々は行動する生きたブランドとして、生活の中でSnapchatの存在が大きくなることの意味を人々に理解してもらえるような動きを世界に示していく」。

Snapchatは、消費者の共通の関心に絡めて露出するだけでなく、リニアTVのスポット広告、ニューヨーク、ロサンゼルス、アトランタ、セントルイス、シカゴといった都市部での屋外メディアのほか、印刷物、デジタル広告を通じて、新たなブランドポジショニングを展開する予定だ。ただしデカーシー氏が詳細を伏せたため、Snapchatが広告予算をどのように配分するのかは不明だ。

ビビックス(Vivvix)のデータによると、Snapchatが2023年1〜11月にメディアに費やした額は2150万ドル(約32億3080万円)、2022年の同時期の支出額は1440万ドル(約21億6390万円)だったという。

起業家でメカニズム(Mekanism)の元最高ソーシャル責任者、ブレンダン・ガハン氏は、次のように話す。「ソーシャルプラットフォームが、(先日の米議会公聴会でも強調されたように)特に10代への悪影響を理由として、厳しい目を向けられる状況が続くなか、Snapchatのリポジショニングは、これに対抗する賢いナラティブだ。Snapchatが10代の若者にとって『安全な』プラットフォームになることは、保護者や議員がメタ(Meta)のようなプラットフォームに対する規制や監視を求める状況において重要なことだ」。

「Snapchatには規模が足りない」



しかし、たとえこのキャンペーンがSnapchatの差別化に役立つとしても、ソーシャルの巨人たちとの競争は依然として厳しい。業界アナリストは、大規模な広告費の奪い合いにおけるSnapchatの能力に懐疑的だ。

「Snapchatがコミュニティーやつながりを重視する取り組みは、差別化を図る賢明な(そしておそらくはユーザーにとってもベターな)方法だが、そこには困難な課題が立ちはだかっている」として、ガハン氏は次のように指摘する。

「スナップ(Snap)が、メタ、TikTok、YouTubeのような巨大企業にどうやって対抗できるというのだろうか。(デイリーアクティブユーザーは)4億人強で、メタ、YouTube、TikTokの数十億人と比べてはるかに少ない。加えて、スナップの(第4四半期の)広告収入13億6000万ドル(約2044億円)に対し、メタの前四半期は387億ドル(約5兆8155億円)で、ほとんど比較にもならない」

ブランドコンサルタントでメタフォース(Metaforce)の共同創設者であるアレン・アダムソン氏も、「彼らには規模が足りない。大きな広告主は大勢の目に留まる広告枠を買いたがる」と同様の見解を示した。

[原文:Why Snapchat is pitching its platform as an alternative to social media]

Kristina Monllos(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)