資金洗浄などの組織犯罪に対抗することを目的に設立された国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2024年1月15日に、オンラインカジノや仮想通貨が東アジアや東南アジアにおけるマネーロンダリングを加速させ、ロマンス詐欺である「豚殺し」をはじめとする多国籍組織犯罪を助長しているとの実態を報告しました。

Casinos and cryptocurrency: major drivers of money laundering, underground banking, and cyberfraud in East and Southeast Asia

https://www.unodc.org/roseap/en/2024/casinos-casinos-cryptocurrency-underground-banking/story.html

UN implicates crypto in booming illicit economies of Southeast Asia

https://cointelegraph.com/news/un-implicates-crypto-illicit-economies-southeast-asia

今回発行されたUNODCの(PDFファイル)報告書は、オンラインカジノやそれに類するビジネスが、組織犯罪グループによって金銭や仮想通貨を洗浄する手段として利用されていることを指摘するものです。



特に勢いを伸ばしているのが、恋愛をちらつかせて仮想通貨をだまし取る「豚殺し」と呼ばれる仮想通貨詐欺や、リモートワークに見せかけてネット犯罪に加担させる「タスク詐欺」、政府関係者や法的機関の職員になりすまして金銭をだまし取る詐欺などです。

また、捜査が行われた事件の検証では、違法なオンラインカジノ業者が多角化し、サイバー詐欺や仮想通貨ロンダリングなどの分野にも手を広げているという実態や、犯罪組織の影響力がカジノ施設やそれらが位置する経済特区、ミャンマーの武装集団が潜伏する地域を含む国境地帯などに及んでいることなどが浮き彫りになりました。

UNODC東南アジア・太平洋地域代表のジェレミー・ダグラス氏は「組織化された犯罪グループは、当局の目が届かない場所に集結する傾向があり、特にカジノや仮想通貨取引所は最も抵抗を受けづらい分野です。カンボジアやフィリピンなどで行われた、犯罪シンジケートに対する作戦は一定の成果を出しましたが、犯罪者たちは国境地帯など取り締まりが行われにくい場所に避難しています」と述べています。

以下はUNODCがまとめた東南アジア諸国のカジノの位置で、特にミャンマーやカンボジアなどではカジノが国境付近に集中していることがわかります。



こうした地域の違法プラットフォームでは、特に仮想通貨「TRON」のブロックチェーン上でのテザー取引が最も人気の決済手段となっているとのこと。2022年初頭の時点で、東南アジアで営業している認可済みおよび未認可のカジノは340以上におよび、そのほとんどがオンラインに移行しています。また、オンラインギャンブル市場は2030年までに2050億ドル(約30兆円)規模に成長するといわれており、特に2022年〜2026年までの成長率の37%をアジア太平洋地域が占めるなど、アジアでの賭博ビジネスの台頭は大きなリスクとなりつつあります。

「カジノのような多額の現金を扱うビジネスは、長年にわたって違法な地下銀行の事業やマネーロンダリングの手段となってきましたが、規制の緩いオンラインのギャンブルプラットフォームや仮想通貨取引所の爆発的な増加により、状況は一変しました」と、ダグラス氏は話しました。