Glossyの「未来を考える」シリーズでは、2024年のファッションと美容業界の展望をブランドや小売業者のエグゼクティブが解説する。

2023年は、Web3ブランドが派手なローンチとは反対に息を潜めて社内プロジェクト開発に重点を置く「構築」モードへと移行した年だった。

暗号規制が発表されたこともあり、今年の暗号市場は低調で、年末にかけて取引件数が増加したのみだった。これは、NFTの暗号購入を行うコレクターやファンがNFTに投資する可能性が低く、主にRTFKT(アーティファクト)やRSTLSS(レストレス)が過去にリリースしたような、より精巧なローンチを傍観していたことを意味する。しかしそうした人々はWeb3コミュニティのイベントや活動には引き続き参加しており、継続的な関心を示してブランドに機会を提供している。

「2024年は、多くのブランドがWeb3テクノロジーを活用したロイヤルティプログラムを立ち上げる年になるだろう」と述べたのは、ストラテジストでWeb3エデュケーターのアン=リース・プレム氏だ。「スターバックス(Starbucks)、ナイキ(Nike)、.Swoosh(ドット・スウォッシュ)のような業界大手による先駆的な取り組みが道を切り開いたが、まだ始まったばかりだ」。分散型ロイヤルティプログラムは改ざんができないため、将来のブランド活動のための安定した投資となる。

コミュニティとのエンゲージメントを重視し、Web3ブランドを構築



Web3のファッションブランド、9dccは今年、物理的な商品とコレクターズアイテムを組み合わせたフィジタルコレクションを2回発表した。そして来年は、Tシャツ、パーカー、キャップ以外にも商品の幅を広げる計画だ。同ブランドの匿名の創業者であるGマネー(Gmoney)氏は、商品を販売することよりも、コミュニティとのエンゲージメントを重視してブランドを構築することが、ブランドとの親和性を高めることにつながると語っている。

9dccには2500人の会員コミュニティがあり、それぞれがブランドの物理的製品に付属するデジタルコレクティブルを保持するデジタルウォレットを所有している。9dccはポイントシステムでそのコミュニティと関与している。Twitterのリーダーボードには、同ブランドの製品を身につけたり、ブランドの投稿に「いいね!」を押したり、Twitterのチャットやライブ機能を使ってブランドの会話に参加したりすることでポイントを獲得しているトップファンが掲載されている。またコミュニティメンバーは、4月に導入されたブランドのアフィリエイトバッジをTwitterの自分のプロフィールに表示することでもポイントを獲得できる。3カ月ごとにリーダーボードの上位25人が、通常は月額50ドル(約7160円)のブランドのアフィリエイトバッジを無料で獲得できる。「その背景には、これらの人々が最高のメンバーであり、最高のアンバサダーであるというテーゼがある」とGマネー氏は語った。アフィリエイトバッジは、あるブランドに対するファンの親和性を特定のコミュニティに伝えるものだ。

この戦略は、Web3のブランドとTwitterのアフィリエイトバッジのWeb2技術を組み合わせている。Gマネー氏によれば、この2つの世界を統合することは挑戦だった。来年には、同ブランドはWeb2とWeb3をより簡単にリンクさせる技術を開発する予定である。

コミュニティメンバーの真の価値を示すポイントシステム



「現在ではポイントシステムはさまざまなプロジェクトでかなり広く使われているが、我々はそれを導入した最初のWeb3プロジェクトのひとつだ」とGマネー氏は言う。このシステムを採用した他のプロジェクトには、RTFKT、RSTLSS、KIKIワールド(KIKI World)などがある。

「ナイキやアディダス(Adidas)、プラダ(Prada)のような企業が(アフィリエイトバッジを)持っていたらと想像してみてほしい」とGマネー氏。「これらの企業には熱烈なファンがいて、ブランドとのつながりを感じたいと思っている。その企業に属したいのだ」。

Gマネー氏によれば、ポイントシステムは商品購入とは異なり、コミュニティメンバーの真の価値を示すものだという。「商品を購入した人が、それをよく着用しているかどうか、あるいはよいアンバサダーであるかどうかを調べる本当の方法はない」とGマネー氏は言う。「でも、そうしたことをしている人たちこそ価値がある人たちだ。年間10万ドル(約1433万円)も使っていないかもしれないが、製品を着用して熱心に宣伝しているなら、そこに意味がある。たとえ帽子しか買えなかったとしても、その人が毎日その帽子をかぶり、毎日このコミュニティと交流しているなら価値がある」。

「そうした人々はブランドのアンバサダーでもあるので、『購入ポイント』よりもずっと価値があるかもしれない」とGマネー氏は付け加えた。

「Web3は、従来のポイントベースのシステムよりもはるかにインタラクティブな方法で顧客と関わることができる」とプレム氏は言う。「2024年には、デジタルウォレットを活用して活気あるインタラクティブなコミュニティを育成するブランドが急増し、受動的な消費者だった顧客を、物理的およびデジタルなアイデンティティのシームレスな融合によって一体化された、能動的で熱心なコミュニティメンバーに変えることが期待される」。

[原文:In 2024, web3 will offer brands new community-building opportunities]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)