地元・静岡の球団から、医学部医学科としては初の“NPB12球団入り”を目指す【写真:本人提供】

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静岡高から群馬大医学部に現役合格、整形外科医を志す24歳

 来季からプロ野球ウエスタン・リーグに参加する「ハヤテ223」が7日に新入団選手を発表。群馬大の医学部医学科6年生で、準硬式野球部でプレーする竹内奎人投手が合格した。地元・静岡の球団から、医学部医学科としては初の“NPB12球団入り”を目指す。在学中に国家試験に合格し、卒業後は野球をやり切った後に再び医師の道を歩む予定。「THE ANSWER」の取材に応じた24歳は「スタートラインに立てて身の引き締まる思い、一層頑張らないといけないという気持ちです」と心境を明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

 竹内は静岡高時代、DeNA入りした池谷蒼大投手とともに主戦級として活躍。2017年センバツで甲子園のマウンドも経験した。整形外科医を志し、群馬大医学部医学科に現役合格。準硬式野球部に所属し、病院実習も含めた学業と部活を両立し、最速147キロを記録するまでになった。

 3年生だった2020年秋に右肘に手術を受けたが、その翌日に高校時代の同級生・池谷がドラフト指名され、一念発起。群馬大のグラウンドで週2回と、前橋でグラウンドを借りて1回の週3回だけという環境ながら己を磨き、この秋にプロ志望届も提出したが、指名はなかった。

「野球を続けなかったら後悔する」。11月には地元・静岡を本拠地とする新規参入球団「ハヤテ223」のトライアウトを受験した。対戦形式の実戦テストでは、打者4人に対して四球、併殺、三振、四球。学業の合間に十分な練習時間を確保できず、調整不足ではあったが手ごたえのあるボールもあり、数日後に内定の連絡を受けた。

 福田秀平、田中健二朗ら元NPB選手10名とチームメートになる。静岡高の同期で、今オフDeNAを戦力外となっていた池谷も合格。竹内は高校時代の仲間を中心に、励ましのメッセージをもらった。「目標は1年後、ドラフト指名される総合力の高い選手になること。チームもゼロから作り上げていく地元の球団ですし、静岡、全国から応援してもらえるチーム作りに貢献したい」。チャンスをくれたハヤテ223に全力で報いる。

常について回る「医学部出身」のフレーズ「悪いことじゃない」

 体が動く今しかできない野球をやり切ったら、一旦“封印”した整形外科医への道を再び歩み始める予定。医師となるには国家試験に合格し、卒業後に研修医として2年間経験を積まなければならない。竹内の場合は2月の国家試験合格を目指し、卒業後は野球に没頭。引退後に研修医となる考えだ。

 昨年のドラフトでは、京大医学部の水口創太投手がソフトバンクから育成ドラフト7位指名を受けた。医学部からのNPB入りは史上初だったが、水口は理学療法士などの人材を育てる人間健康科学科出身。竹内が12球団入りすれば医学部医学科からは初となる。

「医学部出身」の言葉が常について回るが「それ自体は悪いことじゃない」と話す。自身を知ってもらい、応援してもらえるきっかけになり得るからだ。「まだ何も成し遂げていない」と前置きしつつ、いつか夢を叶えた時の願いも明かしてくれた。

「いま野球と勉強を両方頑張っている小中学生は、2つを天秤にかける時が絶対来る。そんな時に『あいつにできるなら自分も』って、両方頑張る人が1人でも増えてくれたら自分としては嬉しいです」

 誰も歩んでこなかった道。竹内の挑戦は後進にとって一つの道しるべになるはずだ。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)