同じ日本に暮らしていても、地域によって生活環境はさまざまです。カーライフの面でも、エリアごとの道路状況や文化の違いによって、交通マナーや運転傾向が異なることがあります。

なかには馴染みのない土地を運転していて、カルチャーショックを受けてしまうこともあるでしょう。今回はMOBY読者の方々から寄せられた投稿のなかから、「地域の運転特性」についてのエピソードを紹介します。

「●●のドライバーは道を譲らないから気をつけて」

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SNSなどでは「名古屋走り」や「茨城ダッシュ」というように、ある地域で散見される交通違反のありようを表現する言葉が流通しています。このような「ご当地走り」の呼称があるエリアは全国に点在しており、自治体や都道府県警察によって注意喚起がなされるケースも見られます。

今回寄せられたエピソードにおいても、こうした呼称をもつ都道府県の運転マナーに関する投稿が散見されました。1つめは、信号が黄色から赤に切り替わりそうなタイミングでも交差点に突入する「阿波の黄走り」で知られる徳島県について、また別の角度からのエピソードを紹介します。

「四国に行く際、徳島出身の知り合いから『四国のドライバーは道を譲らないから気をつけて』と聞かされ、半信半疑で向かいました。実際に、すれ違いができない山道に通りかかった際、対向車側に少し広いスペースがあるのに、向こうが躊躇なく突っ込んできて。『こういうことか』と思わされました」(50代男性・会社員)

JAF(日本自動車連盟)が2016年に地域ごとの交通マナーについて行ったアンケート調査では、徳島県において自身の地域の交通マナーを「悪いと思う」「とても悪いと思う」と回答した人の割合が73.5%に上り、全国2位という結果に。

もちろんこれは意識面の調査であり、「実際にマナー違反がどの程度起きているのか」を客観的に示すものではありません。とはいえ、少なくとも住民自身が「この地域の交通マナーは悪い」と感じていることは見てとれるでしょう。

「ウインカーなし=まっすぐ進む」とは限らない?

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さらに、上のアンケートにおいて同様の割合が8割を超え、全国トップとなったのが香川県です。こちらについても、読者の方からエピソードが寄せられました。

「香川県の道路で、右折専用レーンの先頭に、ウインカーを出さずに止まっている車両がいるとして……この車はどちらへ進むと思いますか? 正解は『そんなん知らんわ!』です。ここではウインカーは何の参考にもなりません」(60代男性・神職)

ウインカーを出していない車が当たり前に進路変更をしてくるというのは、周囲の交通主体にとって大きな脅威になります。居住エリアにかかわらず、進路変更や右左折の際には必ず「ウインカーによる意思表示」を欠かさないようにしましょう。

なお、徳島県と香川県を除いた四国地方について先のアンケート調査を見ると、愛媛県が16位、高知県が28位と、平均的な水準であることがわかります。四国地方以外の結果についても、隣接する都道府県間で数字に差が生じるケースは多く見られました。

黄色信号で止まっただけなのに…まさかの走行

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上のような「ご当地走り」の例として、SNSなどでしばしば言及されるのが長野県松本市の「松本走り」です。主に対向車が接近している最中の強引な右折や、対向の左折車に被せる形での右折などを指す言葉であり、かつては松本市の広報誌でもその危険性について取りあげられたことがあります。

一方で、危ない運転は松本市に限りません。実際に松本市に居住している方から、次のような意見が寄せられました。

「最近同窓会で、地元の茨城県に行く機会がありました。当時の雰囲気を懐かしむため、あえて下道で、よく使っていた国道50号を通っていきました。

走っていて感じたのは、片側二車線の道が増え、アベレージスピードが上がっていたことです。それはいいとしても、信号が赤でも突っ込んでいく車を何台も見かけ、ずいぶん変わったなぁと思いました。

私が黄色信号で減速し、停止すると、地元ナンバーの後続車は急ブレーキ。正直、『松本走りなんてかわいいものだな』と思いましたね」(50代男性・会社員)

ここで挙げられている茨城県も、交通マナーについて言及されることの多いエリアです。先のJAFの調査においては、茨城県の回答者のうち67.2%が自身の居住エリアの交通マナーについて「悪い」「とても悪い」と答えており、全国で3位という結果に。

また、上の「赤信号で交差点に突入する」ケースとは異なりますが、同県において信号が青になった瞬間に直進車に先んじて右折することを「茨城ダッシュ」と呼び、これについては茨城県警のホームページでも注意喚起をしています。

車線変更のタイミングにも地域によってギャップが生じる!?

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先に触れた「名古屋走り」という言葉に見られるように、名古屋市に対して「交通マナーが悪いエリア」というイメージを抱いている人は少なくないのかもしれません。一方で、名古屋から関西地方までを主な運行区間としているバスのドライバーの方からは、次のような話が寄せられました。

「名古屋在住で、高速路線バスのドライバーをしています。主に京都や大阪など関西方面への運行が多いのですが、地域によってマナーがかなり変わることを実感しています。

関西に入ると、私が運転するバスの目の前でウインカーを出し、被せるように進路変更してくる車がしょっちゅうあります。バスは急には止まれませんから、もう少し車間を空けて進路変更してもらいたいですね」(50代男性・高速路線バスドライバー)

バスやトラックは乗用車に比べて制動距離が長くなり、また急ブレーキの際に荷崩れしたり、乗客に危険が及んだりする可能性がありますので、大型車両の前方にギリギリで入り込む形での車線変更は避けましょう。

もちろん、地域にかかわらず危険なマナー違反を目にすることはあるでしょう。一方で、地域によって運転のしかたにギャップが生じることは珍しくありません。どんな場所を走る場合にも、交通ルールを遵守することを大前提としながら、とくに土地勘のない場所においては「自分にとっての『当たり前』が通用しない可能性」を心に留めておくことが必要なのかもしれません。