ロレックスが、8月に、世界最大の時計小売業者の1社であるブヘラ(Bucherer)を買収したという驚きの発表をしたとき、ブヘラの競合他社にはすぐに影響が及んだ。ロレックス傘下のブヘラが高級時計分野で過度の市場シェアを奪うのではと投資家が懸念したため、ブヘラの主な競合相手であるウォッチズ・オブ・スイッツランド(Watches of Switzerland)は、その価値を一瞬にして4分の1近く失った。

ウォッチズ・オブ・スイッツランドの成長ぶり



しかし、11月7日に発表されたウォッチズ・オブ・スイッツランドの第2四半期決算により示されたように、同社はいまのところ投資家の不安をうまく和らげている。米国での力強い成長と再販への新たな注力を提示した決算発表の後、その日の株価は14%上昇した。

ウォッチズ・オブ・スイッツランドは、米国での時計の総売上高が前年比で11%増加したと報告。米国ではほかのラグジュアリー企業の成長が鈍化しているなか、この成長は貴重だ。前四半期に米国で10%の成長を遂げた後、米国では2四半期連続で売上高が伸びている。前四半期の時点で、米国での成長は、それ以外は期待外れだった同社の四半期の明るい兆しだった。しかし、ウォッチズ・オブ・スイッツランドは、中古品の販売が88%増加しており、現四半期は再販部門に大きなライフラインを見出している。

重要度が高まる時計再販市場



時計の再販は時計市場全体の強力な分野として成長を続けており、時計市場そのものも活況を呈している。新品のスイス時計の市場規模は530億ドル(約8兆円)であるが、中古時計市場の価値はその約半分の240億ドル(約3.6兆円)。モルガン・スタンレーが11月発表した予測によると、2026年までにその規模は350億ドル(約5.3兆円)に拡大する可能性が高いという。

高級時計カテゴリーは、価格が高く、新品の生産数が総じて少ないことを考えると、再販は大きな力である。実際、再販の影響力は非常に大きく、5月にはロレックス(Rolex)がスイスの時計ブランドとして初めて自社の認定中古時計プログラムを開始したほどだ。同社は、現在ではブヘラを通じて販売しており、また、ウォッチズ・オブ・スイッツランド、そして新設の1916カンパニー(1916 Company)(旧ウォッチボックス、Watchbox)でも最近販売されるようになった。

ウォッチズ・オブ・スイッツランドのブライアン・ダフィーCEOは、声明で次のように述べている。「ロレックス認定中古品プログラムに対する初期の反響にはたいへん勇気づけられている。これは、米国では7月に、英国では9月に始まったものだが、認定中古品のシールが示す真正性と品質保証に対して顧客から強い手応えがある」。

ラグジュアリー以外のほかの時計ブランドも、今年初めにリワウンド(Rewound)プログラムを開始したタイメックス(Timex)のように、自社の再販チャネルを構築し始めている。さらに、リストチェック(Wristcheck)やベゼル(Bezel)といった中古時計を取り扱う新興企業がいくつも生まれており、米国や香港などの市場で拡大している。

時計再販市場の変動性は鈍化



時計再販がブームになってはいるが、このセクターに変動性がないわけではない。昨年は価格の変動が激しく、中古のロレックスの価格は大幅に下落した。その下落は鈍化しており、ブルームバーグによると中古市場でのロレックスの価格は、2年ぶり安値となった7月と比べて9月には2%しか下落していないということだが、近い将来も変動は依然続くと思われる。

時計再販プラットフォーム、クロノ24(Chrono24)のティム・ストラッケCEOは次のように語っている。「これは、新たな需要により価格が不当な高値にまで上昇したこの数年の反動だ。昨年、価格は大幅に下落したが、今はほぼ安定している。当社には毎月約3万件の取引がある。価格が完全に安定するか、底値に達すれば、需要はさらに高くなるだろう。現在、価格が少し上がるのを待っているセラーもいる」。

[原文:In the face of consolidation, more watch retailers are turning to resale as a lifeline]

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)