東京から放射状に伸びるJR線の複々線計画は、中央線だけが完了していません。長年の沈黙に、東京都も要望を出しました。

高架化は実現したものの、複々線化は凍結状態

 東京都は2023年11月、国の予算編成に対する提案要求をまとめました。JR中央線の三鷹〜立川間の複々線化などを盛り込んでおり、首都圏鉄道網の拡充を目指す方針です。


中央線のE233系(画像:写真AC)。

 現在、中央線は御茶ノ水駅〜三鷹間が複々線(線路が4本)となっており、各駅停車の電車と快速電車は線路が分離されています。山手線を起点とした場合、複々線区間は新宿〜三鷹間の約14km。約30〜40kmにおよぶ常磐線や総武線などの他線区と比べて短い距離にとどまります。

 三鷹〜立川間の複々線化構想は古くから存在し、高度経済成長期に国鉄が打ち出した、いわゆる通勤5方面(東海道線、中央線、東北線、常磐線、総武線)の複々線計画は、中央線だけが未だに完了していません。三鷹までは1969(昭和44)年に複々線化されたものの、その先は実現しませんでした。

 この三鷹〜立川間で増設する線路は、地下に整備することが想定されており、完成すれば中央線の混雑緩和やスピードアップが見込まれます。1994年に高架化と地下線(複々線化)が都市計画決定。このうち、高架化は2010年に実現しましたが、地下線(複々線化)は凍結状態となっています。

実現するためには何が必要?

 中央線の複々線化構想は、新たな鉄道整備の方向性を示す国交省・交通政策審議会の答申に盛り込まれています。東京都は以前から三鷹〜立川間の複々線化を要望してきたものの、採算性に課題があるとされており、整備に向けた動きは具体化していません。
 
 現状では、JR東日本による自主事業以外、整備手法がありません 。そのため、東京都は複々線化に向けた「新しい法律や制度、費用負担の考え方など整備に向けた仕組みづくり」を要望するとしています。また、立川広域防災基地に近接していることなどを踏まえ、複々線化で生じる地下空間を有効活用するなど、新たな事業スキームを検討することも求めています。
 
 ちなみに、交通政策審議会の答申には、中央線の複々線化は「京葉線の中央線方面延伸」とセットで盛り込まれています。東京駅の京葉線地下ホームから三鷹まで地下線を整備し、三鷹駅で中央線と相互直通するとしていますが、東京都は三鷹〜立川間の複々線化のみを要望に盛り込んでいます。
 
 首都圏では、凍結状態にあった西武新宿線の複々線化が2019年に正式に中止されるなど、「輸送力増強」の取り組みは下火になりつつあります。中央線の複々線化は果たして実現するのでしょうか。