航空機メーカー、ボーイングのお膝元として知られるシアトルの空の玄関、タコマ空港。ここは日本の空港からすると不思議な感覚を味わえるような巨大構造物があります。どのようなところなのでしょうか。

すげーでっかい橋がかかる空港ビル

 日本からもっとも近いアメリカ本土の都市として知られているシアトルは、大手航空機メーカー、ボーイングのお膝元であることから航空産業が盛んな都市としても知られています。このエリアの空の玄関口である「シアトル・タコマ空港」は、日本の空港の感覚で行くと、かなり個性的な場所であるといえるでしょう。


シアトル・タコマ空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 2023年現在、この空港のランドマークとなりつつあるのが、「IAF(国際線到着施設)」と呼ばれる到着導線です。そのもっとも特徴的な機構は、空港ターミナルの南側で本館と別館(サテライト)をつなぐ巨大な橋でしょう。この橋は85フィート(約26m)の高さに設置されていることから、その下を旅客機がくぐれるような構造になっており、ボーイング777のような大型の旅客機もくぐれるようになっています。

 この巨大な橋を同空港は「誘導路上に掛けられた世界最長の構造物」と称しており、長さは780フィート(約238m)にもなるのだとか。実際、このサテライトに到着したJAL(日本航空)便に乗ったところ、長いエスカレーターで橋上の通路にでると、眼下に行き交う旅客機をガラス越しに眺めながら本館へと向かい、再度長いエスカレーター(これらも全米トップ10に入るほどの長さを持つとのこと)で降りるというレアな経験ができます。

 この「IAF」の設置により、同空港では、国際線エリアで対応できる機数や乗客数を大きく増加させたほか、乗り換え時間の短縮も実現できたとのこと。なお、サテライト出発の国際線を利用する際にはこの橋は使えず、本館の地下にいったん降り、シャトルトレイン「SEA Underground」に乗ってサテライトへと向かう必要があります。

 シアトル・タコマ空港のユニークなところはそれだけではありません。3本ある滑走路のうちの一部には、先進的な機能が備わっています。

先進的な機能&「シアトルらしい」ところも

 シアトル・タコマ空港に発着するJAL便の整備を行う駐在の整備士は、「一部滑走路では、路面に異物が落ちていないか確認できるレーダーがあるのです。私は日本でこの装置の存在を聞いたことがないです」と話します。

 万が一滑走路に機体のパーツなどの異物が落ちたと空港側に報告が入った場合、通常は滑走路を一時閉鎖し、車両などを用いて点検をするのが一般的です。しかし空港の滑走路には、レーダーで異物がないか確認できるため、閉鎖時間が従来より大幅に短縮できるそうです。


シアトル・タコマ空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 そのようなシアトル・タコマ空港ですが、航空機産業が盛んな都市らしく、本館の共用エリアの天井から複葉機や、初めて無着陸・無給油の世界一周飛行を達成した飛行機「ルータン ボイジャー」の模型が吊り下げられているなど、「空の街」らしい展示物も。また、シアトルはジミ・ヘンドリックスをはじめ多数のロックミュージシャンを輩出した場所であることから、空港内のライブも実施されているとのことです。