2019年からJALは、ボーイングの本拠地であり「飛行機のふるさと」と知られるシアトル線の運航を開始しています。実はこの路線、ほかの路線と比べても一味違った特色を持ちます。

27年ぶりの復活? JALの乗員にとってもふるさと

 アメリカの航空機メーカー、ボーイングの本拠地はワシントン州シアトルです。このシアトルへJALが2019年より、成田から直行便を運航しています。長年、ボーイングの旅客機を多数運用し、主力機として使用してきたJALにとって「飛行機のふるさと」への定期便は、どのようなものなのでしょうか。


シアトル・タコマ国際空港のJAL機(乗りものニュース編集部撮影)。

 実はJALがシアトル線を就航させたのは、これが初めてではありません。

 同社は1959年にシアトル線を開設、その後同社の北米路線においては、搭乗・降機もできる経由地としてもシアトル発着便を断続的に採用していました。しかし1992年11月、シアトル線は運休に。現在の成田〜シアトル線は、27年ぶりにJAL機のシアトルへの帰還を果たした路線だったのです。

「以前のJALシアトル線を知っている人は、便がなくなるとき本当に寂しい思いをしました。再就航のニュースを聞いた際、現地の日本人コミュニティは、皆さんが思っている以上に、興奮に包まれたことを記憶しています。しかも尾翼デザインは運休した当時とほとんど同じ『鶴丸』マークでの再就航です。まさに『鶴丸が帰ってきた!』といった感じでしたね」

 当時を知るJALの原田美紀さんは、このように話します。

 また、同氏によると、「かつてJALの乗員が訓練していたモーゼスレイク空港も近隣にあり、現地の方々もJALに親近感を持っていただいているようです」とのこと。「飛行機のふるさと」だけでなく、「パイロットのふるさと」と呼べる路線でもあるわけです。

 このようなJALのシアトル線ですが、27年間のあいだに現地では大きな変化があったほか、再就航にあたり大きな戦略をもって同路線を運航しているようです。

現シアトルはどんなところ?&手堅い戦略をもっての復活

「2001年にイチロー選手のマリナーズへの入団をきっかけに、多くの日本のメディアがシアトルを取り上げるようになりました。それに加え、当時徐々に知名度を高めていたマイクロソフト、スターバックスもシアトル本拠地と言う事で、「あのシアトル」と、シアトルの名は一気に日本中に知れ渡ったと思います。現在ではアマゾン、コストコなど大企業の本拠とする地であるほか、観光という面ではアミューズメントパークのような人工的な遊びではないものの、レーニア山の絶景やオリンピック山脈など、自然とテクノロジーの融合した小粋なスポットもある街です」(原田美紀さん)

 シアトル線の強みは、こうしたビジネス・観光需要に加えて、シアトルを経由した乗り継ぎ需要があります。シアトル・タコマ国際空港はアメリカ北部の巨大航空会社、アラスカ航空の拠点のひとつです。


中央がJALの原田美紀さん(乗りものニュース編集部撮影)。

 JALでは、シアトル線就航を契機にアラスカ航空と提携を強めており、現在は59路地点で2社のコードシェア便(共同運航便)を増やしたほか、JAL便名でアラスカ航空機に乗れることに加えて、2023年からアラスカ便名でJAL航空機に搭乗できる対応を開始しています。

「シアトルではアラスカ航空の人気が非常に高く、マイレージの使い勝手も良いこともあって、ほとんどの人がアラスカ航空のカードを持っているほどです。こういった取り組みの効果はかなりありますし、アラスカ航空ユーザーの方々にJALを知ってもらえる機会にもなっているのではと考えています」(原田さん)

 多くのJAL機、そして多くのパイロットにとっての「ふるさと」でもあり、アメリカ本土の重要な戦略拠点であるシアトル。JALのシアトル線は、ほかのアメリカ路線とは少し違った毛色を持ったものといえそうです。