Google DeepMindが気象予測AI「GraphCast」を発表しました。10日間の天気を予測する場合、従来の気象予測システムではスーパーコンピューターを数時間稼働させる必要がありましたが、GraphCastでは1台のマシンを1分稼働させるだけで従来の予測システムを超える精度での予測が可能とアピールされています。

Learning skillful medium-range global weather forecasting | Science

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi2336

GraphCast: AI model for faster and more accurate global weather forecasting - Google DeepMind

https://deepmind.google/discover/blog/graphcast-ai-model-for-faster-and-more-accurate-global-weather-forecasting/

従来の天気予報システムは、気温や気圧などの観測データをもとに将来の気象を計算する数値天気予報(NWP)と呼ばれる手法を用いています。しかし、NWPには「計算アルゴリズムの構築には専門知識が必要」「計算を実行するためにスーパーコンピューターなどの非常にコストのかかる計算リソースが必要」といった問題が存在しています。

Google DeepMindが開発したGraphCastは欧州中期気象予報センター(ECMWF)が公開している気象観測データセット「ERA5」に含まれている過去40年間の気象観測データを学習しており、将来の気象状況を迅速かつ高精度に予測できます。ECMWFの高分解能10日間大気予測モデル「HRES」で気象を予測するには数百台のマシンで構築されたスーパーコンピューターを数時間稼働させる必要がありますが、GraphCastではGoogle製AI特化プロセッサ「TPU v4」を1分稼働させるだけで予測可能です。

GraphCastは地球を緯度0.25度×経度0.25度ごとに分解して気象を予測可能です。GraphCastを用いて10日間の気象を予測したデモ映像が以下。

A selection of GraphCast’s predictions rolling across 10 days - YouTube

Google DeepMindがGraphCastとHRESの気象予測精度を1380の評価変数で比較した結果、90.3%の変数でGraphCastの方が高精度であることが示されたとのこと。さらに、気象予測にとって重要な高度6〜20kmの予測に限定すると99.7%の変数でGraphCastの方が高精度であることが示されました。

以下のグラフは、GraphCast(青線)とHRES(黒線)によるハリケーンの進路予測精度を示したもので、横軸が予測日から数えた日数、縦軸が実際の進路とのズレを示しています。グラフを見ると、GraphCastの方が進路予測と実際の進路のズレが小さいことが分かりますます。



なお、Google DeepMindはECMWFと協力してGraphCastを用いた10日間天気予測を閲覧できるデモページを公開しています。

ECMWF | Charts

https://charts.ecmwf.int/products/graphcast_medium-mslp-wind850



また、GraphCastの学習に使用したコードは以下のGitHubリポジトリで公開されています。

GitHub - google-deepmind/graphcast

https://github.com/google-deepmind/graphcast