米Humaneは11月9日(現地時間)、AIウェアラブルデバイス「Humane Ai Pin」を発表した。HumaneはAppleで数々の製品に貢献してきたベテランデザイナーとエンジニアが設立したスタートアップで、Open AIのCEOであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏やMicrosoftが出資している。5月にTED講演で行った「Ai Pin」のプレビューで存在が広く知られるようになり、次世代のモバイルデバイスになる可能性が指摘されるAIウェアラブルデバイスの先駆けとして注目を集めていた。



Humaneの共同設立者の1人であるイムラン・チャウドリ(Imran Chaudhri)氏は、Appleに22年間在籍し、デザイナーとしてMac、iPodからiPhone、Apple Watchまで数々の製品の新しいユーザーインターフェイスとインタラクションを手掛けてきた。

デスクトップPCからノートPC、スマートフォン/タブレット、スマートウォッチと、過去半世紀にわたってコンピューティング能力の向上とともにデバイスは小型化してきた。次時代のデバイスの可能性としてAR(現実拡張)/VR(仮想現実)デバイスに期待する声が強まっているが、「すでにあるスクリーンを目の前に移すだけで、私たちと世界の間にある障壁を増やすばかりです」とチャウドリ氏は指摘する。著名テクノロジージャーナリストのウォルト・モスバーグ氏が2017年に、同氏の最後のコラムで「テクノロジーはやがて目に見えなくなるだろう」と書いた。今日のAIの発展は、そこに向かうデバイスに「デザインにおける次なる飛躍をもたらす」というのがHumaneの見方だ。

Ai Pinはペンダントのようなウェアラブルデバイスだ。コンピュータのパック(Air Pin本体)とバッテリー・ブースターのパックから成る2ピースデザインで、2つはマグネットで接続され、服の襟などを挟んで胸元に付けるのが基本的な装着スタイルになる。AirPin本体もバッテリーを内蔵しており、使用しながらバッテリー・ブースターを交換することが可能。



QualcommのAI Engineを搭載したSnapdragonプロセッサー(オクタ・コア、2.1GHz)によるカスタムSoCを搭載。メモリーは4GB、ストレージは32GB eMMC。

Laser Inkディスプレイ、タッチパッド、超広角カメラ、アンビエントライトセンサー、3D深度センサー、モーションセンサー、GPS、マイク(デュアルマイクアレイ)、スピーカー、LTE (VoLTE)、Wi-Fi 5(802.11ac)、Bluetooth 5.1などを装備。Bluetooth経由でワイヤレスイヤホンとペアリングできる。

AirPinは、話かける、タッチジェスチャー(タッチパッド)、ジェスチャーまたはオブジェクトをかざす(カメラ)など、マルチモーダルな方法でユーザーとAIの直接的なインタラクションを可能にする。単独で機能する独立したデバイスであり、スマートフォンやその他のコンパニオンデバイスとペアリングする必要はない。



AirPin本体はスクリーンを備えないが、レーザー・ビーム・スキャニング(LBS)システムで手のひらをスクリーンに変える。このLaser Inkディスプレイは手のひらを追跡するように設計されており、20〜40cmの範囲で720pの解像度で、鮮やかに情報(テキスト、グラフィック、UIなど)を投影するという。スピーカーはHRTF(頭部伝達関数)を用いて、装着しているユーザーにサウンドが効果的に届くように最適化する。



使用例を紹介すると、タッチパッドをタップ&ドラッグしてAirPinを起動(プライバシー保護を優先してウエイクワードは採用しなかった)。「次の日食はいつ?」と話しかけて質問すると、AirPinが音声やテキストで日食の日時や観察に適した場所を教えてくれる。



音楽サービスTIDALと提携しており、TIDALユーザーは「SF映画の曲を再生して」というように話しかけてTIDALの音楽ライブラリにアクセスできる。AirPinの前に手のひらを広げると音楽再生のコントローラが表示される。手のひらを左に傾けると「戻る」ボタン、右に傾けると「スキップ」ボタン、手前に傾けると「一時停止」ボタンに移動し、人差し指と親指の先端をくっつける動作で選択というようにジェスチャーで再生を操作する。





「Cosmos」というOSによって、マルチモーダルなインタラクションと高度なセキュリティを実現している。ユーザーがAIを利用する目的は様々だが、AIソフトウェアフレームワーク「Ai Bus」によってユーザーが必要としていることを理解し、適切なAI体験およびサービスに接続する。利用できる機能については、TIDALのほか、MicrosoftとOpenAIとのコラボレーションによって「世界で最もパワフルなAIモデルやプラットフォームにアクセスできる」としている。

13メガピクセルカメラは、5要素レンズ構造で120度FOV、f/2.4の超広角レンズを装備する。焦点距離は40cm〜。撮影できる静止画の解像度は4208x3120ピクセル、将来のアップデートでビデオ撮影も可能にする予定。

AirPinの左上にRGB LEDによる細長いドットが表示される。これはグリーンの時はカメラ、レッドでマイクというように、AirPinが動作中であることや使用中の機能をユーザーや周囲の人に伝える役割を果たす。また、AirPinの上部にRGB LEDライトによるBeaconを備える。これはグリーンの時は信頼できるコンタクトからのメッセージの着信、レッドでエリアアラートというように重要なことをユーザーに知らせる通知機能だ。

カラーは、Eclipse(マットブラック)、Equinox(シルバーxブラック)、Lunar(シルバーxホワイト)の3色。サイズはAir Pin本体が44.50x47.50x14.98mm(34.2g)、バッテリー・ブースターが45.20x47.16x8.25mm(20.5g)。



価格は699ドルから(バッテリー・ブースターx2個、充電パッド、充電ケース、ケーブル、アダプターが付属)。Ai Pin専用の携帯電話番号(通話/テキスト/データ無制限)を含むサブスクリプション「Humane Subscription」が月額24ドル。米国で11月16日から予約注文を受け付け、2024年初頭に出荷を開始する予定。