月経周期中のホルモンの変化が脳の領域に作用するという先行研究を受けて新たに調査が行われた結果、経口避妊薬の服用で脳の一部に生理学的変化が起こることが判明しました。

Frontiers | Morphologic alterations of the fear circuitry: the role of sex hormones and oral contraceptives

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2023.1228504/full

Contraceptive Pills Have a Curious Effect on The Fear-Promoting Area of The Brain : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/contraceptive-pills-have-a-curious-effect-on-the-fear-promoting-area-of-the-brain

ケベック大学の生理学者アレクサンドラ・ブルイヤード氏らは、23歳から35歳の健康な成人女性139人を調査しました。このうち62人が調査時点で経口避妊薬を服用していて、37人が過去に経口避妊薬を服用した経験があり、40人が経口避妊薬の服用経験がない人でした。これに加え、37人の同年代の成人男性も調査対象となりました。



女性は男性よりも不安障害やストレス障害になりやすいという知見から、ブルイヤード氏らはグループを比較し、経口避妊薬の使用が脳の短期的あるいは長期的な変化と関連しているかどうか、また男女間で違いがあるかどうかを調べました。

その結果、現在経口避妊薬を服用している女性は、思考をつかさどる脳の前頭前野の内側、前頭前野腹内側部(vmPFC)と呼ばれる脳領域が、男性に比べて薄くなっていることが明らかになりました。



vmPFCは恐怖心の調節に関与していると考えられています。厚さが変化することによる恐怖心への影響はわかりませんでしたが、経口避妊薬を服用中の女性はそれ以外の人に比べて行動療法に対する反応性の低下が見られたことなどから、経口避妊薬がvmPFCのような恐怖を抑制する部位を抑え、女性をより不安やストレスにさらしやすくしている可能性があるそうです。

ただし、脳領域の大きさが変化したからといって必ずしも悪影響があるとは限らず、今回の知見に基づいて個人の感情や行動について確固たる結論を出すことはできないとのこと。また、経口避妊薬の使用をやめるとvmPFCへの影響はなくなるようで、研究者らは「経口避妊薬によるvmPFCの厚さ変化は可逆的」と記していますが、その影響を掘り下げるにはさらなる研究が必要であると述べています。