悪い報告でも、伝え方を工夫すると改善策が見えてきます(写真: mits / PIXTA)

悪い報告ほど上司に言いにくい。こんな経験はありませんか。しかし、先延ばしにするほど、悪循環にはまることに。悪い報告でも数字を使ってすぐに報告すると、改善策が見えてきて、気持ちも楽になります。Sophia Bliss最高執行責任者COOで北海道東川町CFOの定居美徳氏の新著『数字で示せ』を一部抜粋・再構成し、お届けします。

A「大変です! お客さんから、半額にしないと契約キャンセルすると言われました」

B「お客さんからの値引き要求が来ています。今回限り100万円を半額の50万円に承認お願いします。中古品でいいので、値引き後でも30万円の利益を確保できます」

悪い報告は、「早く・正直に・数字で」行いましょう。あなたにとっても、上司にとっても、問題解決につながるからです。

年度末まであと2週間。

売上目標達成に向け、お得意さまとの契約目前で、ライバル会社が特別値引き。こちらも値引きしないと、売上目標も厳しそうです。

こんなとき、上司への報告は、気が重いものです。

ついつい明日にしようと思いがちに

「今さら何言っているんだ!」と言われたら、どうしよう。ついつい、明日にしようとか、もう一度お客さんと相談してからと思いがちです。

でも、悪い知らせは思い切って「早く・正直に・数字で」話すとうまくいきます。悪い知らせは、遅くなるほど傷口が広がります。時間が経つほど、できることも少なくなります。当然、ウソや隠しごとはプラスになりません。

とにかく、悪い知らせは「早く・正直に」これが基本です。

そして、もう1つのポイントが「数字で話す」ことです。悪い報告を数字で話すことで、「上司を味方につける」ためです。

上司を味方につけるには、上司の立場で考える必要があります。

値引き要求、納期遅れ、プロジェクトで予想外のトラブル……。上司は立場が上になるほど、いろいろな問題が降りかかり、判断を求められます。

また、上司は社内・社外、立場の違う相手に説明・交渉しなければなりません。しかも相手や部署によって、優先順位や判断が違うのです。

たとえば、工場からの配送が、安い配送業者を使ったために1日遅れたとします。生産部門は生産に関係ないから「問題ない」、経理は費用が減らせたから「問題ない」、でも、営業はお客さまのクレームで「大問題」だったりするのです。

そこで必要になるのが「共通言語」つまり、数字で話すことです。立場によって優先順位や判断が違う問題も、「いくら」を話す、つまり”お金”という同じものさしで判断することができるのです。

今回の値引きのケースでも同様です。

「いくら」を数字で話すと、上司はあなたと同じものさしで判断できるのです。

Aの話し方では、お客さまの値引きが会社の売上・利益にいくら影響があるかわかりません。要求を受けたほうがいいのか、それとも注文がないほうがいいのか、判断もできません。

Bの話し方は、値引きにより、売上で50万円のマイナスが出ます。でも、同時に中古品を売ることで利益を確保できます。利益の数字がわかれば、上司はOKするかどうかを判断できるのです。

このように、悪い報告をするときは影響が「いくら」なのか、数字で話します。すると、上司は味方になってくれます。さらに、数字で対策を提案すると、上司の信頼も得て、評価にもつながるのです。

急に資料作成を頼まれた場合

さて、次は同じく上司との会話です。

上司から急に資料を作るよう頼まれたら、あなたはどちらで答えますか?

A「いきなり、急ぎで資料作成してと言われても困ります。こっちも忙しいし、どう作ればいいかわかりません。ところで、こっちの相談はいつ聞いてくれるんですか?」

B「明後日の会議資料ですね。前回資料を参考に、明日の10時までに80%の原案を作ります。そこで15分確認お願いします。そこで5分別件の相談をしたいです」

上司から急な仕事が振られてきたら、チャンスです。

「いつ・何%」を使いこなせば、あなたの努力が何倍にもなって返ってきます。なぜなら、次の4つの要素がすべて劇的に向上するからです。

・スピード→上司の都合に合わせ、ベストなタイミングで仕事できる

・効率→苦手な仕事をやらなくて済む

・仕事の成果→上司の空いた時間に、自分の仕事を相談できる

・評価→上司の評価が上がり、自分の評価も上がる

上司が急な仕事を振ってきたら、「いつ・何%」で次の3つを確認しましょう。

・最終ゴールは「いつ」か?→この場合は、明後日の会議

・直近の締め切りは「いつ」か?→明日の10時に上司がチェック

・取り急ぎ「何%」完成すればよいか?→100%パーフェクトが必要か、ある程度準備して、上司と一緒に完成すればいいのか

急ぎの仕事なので、もちろん「いつ」は大事です。同時に、実は大事なのが、この「何%」なのです。

「いつ・何%」を切り離すと、落とし穴にはまります。

たとえば、今回の資料作成。完成には、ある程度の文章や資料などを集めて原案を作る時間と、言葉の表現やレイアウトなど細かい部分を仕上げる時間にわけられます。

完成度で言えば、前者が80%で、後者が20%程度です。でも、後者の20%に、思った以上の時間がかかることはありませんか?

自分では100%の完成版と思って上司に提出したのに、手直しを指示されるのも、よくあることです。

それなら初めから80%まで作り、上司と一緒に仕上げをするほうが効率が良いのです。上司が自分でゼロからやるより早いのも明らかです。

また、上司が完成をイライラして待つこともありません。

このように最終ゴールの「いつ」と、直近の締め切りの「いつ」、さらに完成度合いの「何%」を数字で話すことで、急ぎの仕事に、効率的な対応ができるのです。

部下からのプロジェクトの進捗報告

A「何度もメールで依頼しましたが、返事がありません」

B「プロジェクトが2週間遅れています」

部下からの報告です。あなたは、どちらの報告を聞きますか?

Bです。部下がAのように話し始めたら、「事実と数字」を聞いてください。

Aのように、部下に言い訳をさせてはいけません。時間とエネルギーのムダです。なぜなら、言い訳で物事は解決せず、未来も生まれないからです。その代わりに、ゴールに向かって、次の一歩を踏み出させるのです。

部下の言い訳を聞かないというと、冷たい上司と思われるかもしれません。しかし、それは間違いです。部下に言い訳をさせても、プラスはありません。

言い訳をさせるのは、上司の落ち度です。部下は、悪い問題を伝えられないから、話題をそらすのです。話題をそらすほど、部下の心の中に悪い問題が重くのしかかります。問題解決ができない自分を責めて傷つき、やがて自信をなくします。部下は、もがきながら、やっとの思いで上司に言い訳を話しているのです。

私が勤めていたGEでは「悪いニュースは最初に報告する」ということを叩き込まれました。悪いニュースを、タイムリーに共有し、対策を相談する。これが、上司と部下のあるべき関係です。

とは言え、部下も悪いニュースを伝えるのは気が重いものです。

そんなとき、上司はどうすればいいのでしょう?ズバリ、「悪いニュースの共有を、毎日の習慣にする」のです。

メンバーへの3つの質問

オススメは、「デイリースクラム」という手法です。チームで毎朝15分ミーティングを行い、メンバーに3つの質問をします。

「あなたは、昨日何をしましたか?」

「あなたは、今日何をしますか?」

「何か、あなたの進捗をさまたげているものがありますか?」

昨日何をしたか、今日何をするかの質問で、部下の仕事を理解できます。進捗をさまたげているということは、問題や悪いニュースがあるということです。こうすれば、悪いニュースの報告も、毎日の習慣になります。


デイリースクラムは、報告で終わらせてはいけません。解決に向かわせます。「いつ、いくら、何%」で、未来へのアクションを話させるのです。

「プロジェクトが2週間遅れています」と、報告を受けたら、解決のためのアクションを、続けて話してもらいます。

「システム会社に5分後(いつ)電話し、日程を確認します。5万円(いくら)の追加費用で、3日後(いつ)には、90%(何%)まで回復可能です」

すると部下は、具体的な解決策を、進んで提案できるようになるのです。ここで必要なのは悪いニュースを伝えてもよいというあなたへの信頼感です。

部下がいつでも安心して、あなたに悪いニュースと解決策を話せる環境をつくる。そうすると、部下が成長できるのです。

(定居 美徳 : Sophia Bliss最高執行責任者COO・北海道東川町CFO)