「エコタイヤ」は本当にエコ?

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クルマを所有していると、どうしても”燃費”は気になるもの。低燃費を意識し、「エコタイヤ」を装着するユーザーも多いのではないでしょうか。

現在エコタイヤ(サマータイヤ)の普及率は8割を超えており、カー用品店やタイヤ量販店などにおいて、当たり前のように販売されるようになりました。

タイヤメーカーからエコタイヤが登場しており、ベーシックなものから高価格帯のものまでラインアップしています。

そもそもエコタイヤとは何なのでしょうか。エコタイヤに履き替えることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

「エコタイヤ」は一定の基準を満たした低燃費タイヤ

出典:日本グッドイヤー

エコタイヤは別名「低燃費タイヤ」とも呼ばれます。JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)によって定められたグレーディングで、転がり抵抗性能(低燃費)とウェットグリップ性能(安全性)において一定の基準を満たしたタイヤです。

転がり抵抗性能は「C」「B」「A」「AA」「AAA」の5段階で表記され、グレードが上がるにつれて転がり抵抗が小さくなり、燃費向上に貢献します。

ウェットグリップ性能は「d」「c」「b」「a」の4段階で表記され、グレードが上がるにつれて濡れた路面でのグリップ力(制動時のグリップ力など)が強くなります。

エコタイヤに該当するのは、転がり抵抗性能が「AAA~A」かつウェットグリップ性能が「a~d」のタイヤです。

転がり抵抗性能が「C未満」、ウェットグリップ性能が「d未満」の場合は対象外であり、どちらか一方の性能が等級に適合していない場合も対象外となります。

ちなみに転がり抵抗とは、タイヤが路面を転がる際に生じる抵抗のこと。走行中にタイヤが変形することによるエネルギー損失や、路面との接地摩擦によるエネルギー損失などが含まれます。

タイヤのエネルギー損失を小さくすると、少ないエネルギーでクルマが前に進むため、燃費が良くなるわけです。

転がり抵抗とグリップ性能は”トレードオフ”の関係にあるため、転がり抵抗を小さくするとグリップ性能が低下し、操縦安定性が悪化すると言われています。

低燃費タイヤに交換するとどれくらいお得?

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では、実際にエコタイヤに履き替えることで、どれほどお得になるのでしょうか。ブリヂストン公式サイトによれば、以下のように燃費が改善すると推測されています。

C→B:1%改善

C→A:2%改善

C→AA:3%改善

C→AAA:4%改善

あくまでも参考値ではありますが、大雑把に言えば「転がり抵抗」のグレードが1つ上がると、燃費が1%改善すると考えればよいでしょう。

上記の数値を参考に、「転がり抵抗C」「燃費15km/L」「ガソリン価格165円/L」「年間走行距離12,000km」として、年間の燃料代を計算してみます。

この場合の年間燃料代は、12,000km÷15km×165円=132,000円。

一方で「AAA」のタイヤを履いた場合、燃費が4%改善すると推測できるため、燃費は15.6km/Lとなり、12,000km÷15.6km×165円=126,923円です。

この例では、タイヤ(転がり抵抗)を「C」から「AAA」に履き替えた場合、年間で5,077円ほどお得になる計算になります。

実際には4%の燃費改善は難しい?

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先ほどの例では「燃費4%改善」として計算しましたが、約4%の改善を目指すのは難しいのが現実です。

筆者地元のタイヤ販売店に、エコタイヤについて聞いてみたところ、「現在販売されているタイヤは、大半がエコタイヤ(A以上)です。そのため、仮にAAAグレードに履き替えても、燃費改善が見込めるのは1~2%程度でしょう。

低燃費であることは基本として、エコタイヤの中から静粛性やハンドリング性能、低燃費性能など、自分の乗り方に合ったタイヤを選べば問題ありません。」とのこと。

つまり、Aグレードのタイヤから履き替えたとして、最大2%程度が現実的な数字となります。

先ほどの例で計算してみると、2%改善の場合は年間燃料代129,412円となり、差額は「2,588円」です。現実的にお得になるのは1,000~2,000円程度と考えた方が良いかもしれません。

そもそも、燃費はタイヤの種類だけではなく、乗り方やタイヤのメンテナンスによって大きく左右されるもの。エコタイヤを履いていたとしても、乱暴な運転をしたり、メンテナンスを怠れば燃費は悪化します。

例えば、JAFの実験では適正空気圧を基準として空気圧不足による燃費を検証しており、「空気圧30%減で燃費が4.6%悪化」、「60%減で燃費が12.3%悪化」することが明らかになっています。

エコタイヤだからといって目に見えるほど燃費が改善するわけではありませんが、エコタイヤの恩恵を最大限受けるためにも、正しい走り方とメンテナンスを心がけましょう。

エコタイヤのデメリットはなくなりつつある

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エコタイヤが登場し始めた頃は、「燃費は良くなるもののタイヤの価格は高い」という状態でした。

もちろん、高性能のエコタイヤは価格が高くなることもありますが、現在ではエコタイヤが主流であり、エコタイヤだから価格が跳ね上がるということは少なくなっています。

また、かつては『エコタイヤはグリップ力が低く、ハンドリングが悪くなる』と言われていましたが、低燃費性と安全性を高いレベルで両立しており、普段乗りであればグリップ性能も全く問題ないレベルまで向上しています。

このように、エコタイヤのデメリットであった「高価格」「グリップ性能の低下」というデメリットはなくなりつつあるのです。

低燃費性を基本として、さらに低燃費なもの、静粛性の高いもの、グリップ性能が良いものなど、自分の運転タイプに合ったエコタイヤを選んでみてください。