日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。今回は「もう女として見てもらえないんだな」と寂しさを噛みしめる50代の読者・良子さんにお話を伺いました。60歳を迎えた夫と、これから二人でゆっくり過ごそうと思っていた矢先に起きた夫婦の危機とは。詳しく伺いました。

「こんなハズじゃなかった」還暦の夫を襲った胃の痛みの正体

私はもともと新卒で入った外資系企業でキャリアを積んで20代を過ごし、30代を過ぎてからは、もうこのまま結婚はしなくてもいいかなと考えていました。

でも、おひとり様生活を満喫していた44歳のとき、当時同じ職場にいた50歳の夫と結婚。お互い、同じ時期に両親を立て続けに亡くし、親戚との距離感や今後の自分の老後について似たような課題や価値観を持っていたことで意気投合したのがきっかけでした。

●夫が60歳になったら、私もリタイアしよう

すでにお互い、子どもをつくろうという年齢でもなかったので、行為の頻度はそんなに多いほうではなかったかもしれません。でも「おはよう」や「いってらっしゃい」「いってきます」のタイミングでは必ずキスをして、お風呂にも毎晩一緒に入っていました。

湯舟の中で一日の出来事をお互いに報告し合ったりする時間を二人ともすごく大切に思っていて。行為が少なくてもスキンシップは取れていたから、頻度の部分をほとんど気にしたことはありませんでした。
いずれ夫が定年を迎えたら、私も早めにリタイアして「二人で世界中をのんびり旅行したいね」なんて夢を語り合っていたのですが、現実はそうそう思うようにはいかず。ひとつの区切りだと思っていた夫の60歳の節目に思いがけない出来事が発生しました。

●環境が一転。楽しみだった定年後の時間が…

結婚10年目の年でした。「60歳になったら定年を迎えるから、子会社とかで再雇用してもらって、ラクなポジションに」と、そこをゴールを見据えていた夫。しかし、いざ、60歳になったら同じグループ会社の取締役になってしまったのです。

新しい職場は私と同じ建物内ではありますが、仕事内容と共に生活環境が激変。今後の暮らしの目論見は大きく外れてしまいました。
出張も激増し、長距離移動で体力的な負担も増えていたと思います。慣れないポジションで、人と会う機会も大幅に増えたこともあり「疲れがなかなか抜けない。こんなハズじゃなかったのにな」こぼしている夫を心配していました。
そんな生活が1年近く続いた頃、夫が「胃が痛い」と言ってきたのです。食事の量がガクンと落ちました。

妻が感じた悪い予感。家に帰ると…

「早めに病院へ行きなさいよ」と私が言っても、夫は「すぐ治まるし、もう少し様子を見るよ」ばかり。なかなか言うことをきいてくれません。実際、ずっとおなかが痛いわけではなく、ときどき胃が痛む程度だったようです。

食欲が落ちてから10日くらいたったある日、夫がついに会社を早退することになりました。

●ふと見送った夫の後ろ姿が目に焼きついて

「周りの人から『顔色悪いから帰れ』って言われて、タクシーで帰宅します」というメッセージを受け取り、慌てて夫のいるフロアへ直行。ちょうど帰り支度をしているところでした。
「ちょっと、大丈夫なの?」と声をかけると「うん、近所のクリニック、13時には開くよね?」というので、「そうね」と返事をすると「それじゃ、午後になったらちゃんと行くから平気だよ」と言ってひとりで帰っていきました。

私は、そのあとすぐ商談があったのですが、ふと見送った夫の後ろ姿が目に焼きついてしまいました。なんとなく嫌な予感がしたのです。

上司に事情を話し、夫の後を追いかけてすぐに帰宅。すると玄関を入ったすぐのところで、夫がうずくまるように倒れているのを発見。靴を履いたまま、部屋にも入れず苦しそうにうめく夫。すぐに救急車を呼びました。

●救急隊「胃じゃなくて心臓だと思います」

私は必死にこの10日間くらいの夫の様子を説明しました。食欲がなかったこと、時々胃の痛みを気にしていたこと、病院へ行けていなかったこと…。

救急隊員の一人が「痛みがあるとき普通脈は上がるのですが、ご主人の場合、脈が落ちてきています。これは胃じゃなくて心臓だと思います」と言いました。

私がショックを受けて言葉を失っている間も、救急隊の方々は迅速に病院へ連絡を取ってくださり、たまたまこの日、有名な心臓の専門医が来ているという近くの病院への搬送が決まりました。

●心筋梗塞だった夫。大切な人を亡くしていたかも

病院へ着くとすぐに手術が必要ということで、私は渡される書類に次々とサインをしました。すぐに心臓にカテーテルを入れる手術が行われ、夫は一命をとりとめたのです。

医師からは「このようなケースの場合、4割くらいは病院へ到着する前に亡くなってしまうのですよ。奥様がすぐ発見してくださってよかった」と言われて、あのとき、自分も早退するというとっさの判断ができなかったらと思うと、急に怖くなりました。大切な人を失ってしまったかもしれない。
次回は、心筋梗塞から夫が回復した前後で、良子さん自身の体にも異変が‥。完全にセックスレスになっていったお話をしたいと思います。