「『ACLを目ざす』とは、マリノスのようなチームが言うべき」“過度の期待”に警鐘を鳴らした札幌指揮官の言葉…欧州でも「CLシンドローム」が 【小宮良之の日本サッカー兵法書】
「チャンピオンズリーグ・シンドローム」
2000年代、欧州ではチャンピオンズリーグ(CL)の拡大で出場数が増えたことによって、夢の舞台に立てるチームが一気に増えた。人々の期待は膨らんだ。クラブも重圧を感じながら、それに応えようと補強した。しかし多くの場合、期待は風船が弾けるように重圧に潰されることになった。相応ではない戦力で華やかな舞台に立ち、夢うつつになるのか。
今年9月、横浜F・マリノス対コンサドーレ札幌の試合後の会見、一つのやりとりがあった。この日、札幌は首位を走る横浜と堂々渡り合ってのスコアレスドローで、本来の目標である「J1残留」に向けて着実に近づいた。
――引き分けたことで、来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場の可能性はなくなりましたが?
地元メディアからの問いは現実離れしたもので、サッカーに精通している記者は恥ずかしさを感じるものだろうが、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は諭すようにこう返している。
「開幕前、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を目指す、とはたしかに言いました。しかし、これは現実的ではありません。戦いが始まるのに、ファン・サポーターへ『残留を目指す』というメッセージは前向きではなかっただけで…。ただ、もしブンデスリーガでアウスブルクが『チャンピオンズリーグ出場権を狙う!』と本気で言ったら、ドイツ中が笑うでしょう。例えばマリノスのように6人の有力なブラジル人選手を獲得できる予算を組めるチームが、『ACLを目ざす』と言うべきで、予算規模であまりに違いがあるのです」
老練な指揮官は、バルーンを高く上げることに警鐘を鳴らしたかったのだろう。メディアを含めたファン・サポーターが過度な要求をすることで、チームは簡単に崩れる。現実的な目標を失ってはならない。
本来、周りが見つめるべきはサッカーの中身なのだろう。そのサッカーに面白味があるのか、選手が充実感を覚えて成長し、それが独創性につながっているか。タイトルやカップ戦の出場権を問うのも、エンターテイメントの価値ではある。しかし現実を見ずに結果だけを求めると、待っているのはろくでもない結末だろう。
