「ACLは現実的ではない」と諭したペトロヴィッチ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大

 親が大きな期待をかけ過ぎると、子供は重圧を受けるという。期待と重圧の論理は、プロサッカークラブでも同じ作用がある。

「チャンピオンズリーグ・シンドローム」

 2000年代、欧州ではチャンピオンズリーグ(CL)の拡大で出場数が増えたことによって、夢の舞台に立てるチームが一気に増えた。人々の期待は膨らんだ。クラブも重圧を感じながら、それに応えようと補強した。しかし多くの場合、期待は風船が弾けるように重圧に潰されることになった。相応ではない戦力で華やかな舞台に立ち、夢うつつになるのか。

 背伸びして戦った消耗は激しく、国内リーグでも低迷した。最悪の場合、2003-04シーズンのセルタのようにCLベスト16に進出しながら、2部に転落している。デポルティボ・ラ・コルーニャに至っては、無理な投資でCLを狙い続け、短い夢の時代を謳歌した後、約1億ユーロの借金で破産申請に発展し、今や3部で喘ぐ有様だ。
 
 今年9月、横浜F・マリノス対コンサドーレ札幌の試合後の会見、一つのやりとりがあった。この日、札幌は首位を走る横浜と堂々渡り合ってのスコアレスドローで、本来の目標である「J1残留」に向けて着実に近づいた。

――引き分けたことで、来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場の可能性はなくなりましたが?

 地元メディアからの問いは現実離れしたもので、サッカーに精通している記者は恥ずかしさを感じるものだろうが、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は諭すようにこう返している。

「開幕前、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を目指す、とはたしかに言いました。しかし、これは現実的ではありません。戦いが始まるのに、ファン・サポーターへ『残留を目指す』というメッセージは前向きではなかっただけで…。ただ、もしブンデスリーガでアウスブルクが『チャンピオンズリーグ出場権を狙う!』と本気で言ったら、ドイツ中が笑うでしょう。例えばマリノスのように6人の有力なブラジル人選手を獲得できる予算を組めるチームが、『ACLを目ざす』と言うべきで、予算規模であまりに違いがあるのです」

 老練な指揮官は、バルーンを高く上げることに警鐘を鳴らしたかったのだろう。メディアを含めたファン・サポーターが過度な要求をすることで、チームは簡単に崩れる。現実的な目標を失ってはならない。

 本来、周りが見つめるべきはサッカーの中身なのだろう。そのサッカーに面白味があるのか、選手が充実感を覚えて成長し、それが独創性につながっているか。タイトルやカップ戦の出場権を問うのも、エンターテイメントの価値ではある。しかし現実を見ずに結果だけを求めると、待っているのはろくでもない結末だろう。