次世代型の電柱「スマートポール」の実証実験が各地で実施されています。高い位置から地上を見下ろし、その様子を安全運転の支援に活用したり、住民の見守りや健康促進につなげたり……。様々なアイデアが次々と考え出されています。

高いところから見てますよ! クルマや人を支援する「電柱」

 2022年現在、次世代の電柱と言われている「スマートポール」の実証実験が全国各地で行われています。大災害時に倒壊の危険性が言われ、ともすれば道路の邪魔者扱いされることもある電柱に、重要な「機能」が次々と見出されているのです。


電柱のイメージ(画像:写真AC)。

 スマートポールは、街路灯やWi-Fiスポットとして機能するだけでなく、デジタルサイネージやスピーカー、さらに防犯カメラや太陽光パネルなども備える、といったことも考えられています。今年には、大阪・関西万博での実用化を目指した実証実験として、人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の機体を模して作られたスマートポールも話題になりました。

 兵庫県三田市では、交通事故を防ぐことを目的にスマートポールの実証実験が行われています。舞台は神戸電鉄の路線が通じるニュータウン「ウッディタウン」で、市が2022年度から取り組む「さんだ里山スマートシティ構想」の一環として、電柱を所有する関西電力送配電や神姫バス、アシックスなどと協力して行ったものです。

 関西電力送配電に取材したところ、今回の実証実験は、スマートポールの機能の1つである「安全運転支援機能」と「見守り機能」を搭載した電柱で行ったとのこと。たとえば、交差点の陰から自転車が飛び出そうとすると、近くを運転中のバスの運転席に「減速してください」といった音声が流れたそうです。

 ちなみに、関西電力送配電では安全運転支援の取組みを2018年から検討しており、実証実験は今回で3回目。同社に詳しく話を伺いました。

アイデアが無限に生まれる!? ドンピシャな活用案も

 前出したバスへの「減速してください」の注意喚起は、スマートポールの「安全運転支援機能」実験の一環です。歩行者などの動向が見にくくスピードが出やすい交差点において、脇道から通行する歩行者などの情報を、電柱に設置するセンサー(レーダー、カメラ)により事前に検知、バスの運転者に伝えることで交通事故の未然防止と安全性の向上を図ります。

 通知の手段は2通りで、先ほどの車内音声通知のほか、交差点手前にあるLED表示板で視覚的に通知する方法もあります。また、今回の実験では歩行者への通知は実施していないものの、技術的には別途LED表示板を歩行者側に設けるなどの対応は可能ではないかということでした。

 そしてもうひとつが、「見守り支援機能」の実験です。Bluetooth(以下、BT)搭載の自転車およびシューズが、BT受信機を設置した電柱付近を通過することで、スマートポールがその通過時刻や運動情報を取得。住民の居場所の履歴データから見守りにつなげたり、電柱から歩行者へ歩数を通知することで運動促進を図ったりしたそうです。

 関西電力送配電によると、いずれも技術の有効性については確認、理解を得ているものの、機器のサイズやコストなど実運用については課題が残っている、とのことでした。

今後はさらに、バスだけでなく自動運転車両(無人)の安全支援の有効性についても実証検証していく予定とのこと。また、将来ドローンや電動モビリティが普及した際に、それらの充電拠点としてもスマートポールが活用できないか検討を進めているとのことでした。次世代電柱「スマートポール」の進化、今後も注目です。