同棲3年目、彼女にいきなり別れを告げられて…。怒り狂った29歳男が言い放ったヤバすぎる一言
「2人は、幸せに暮らしました。めでたし、めでたし」
…本当に、そうでしょうか？
今宵、その先を語りましょう。
これは「めでたし、めでたし」から始まる、ほろ苦いラブ・ストーリー。
▶前回：絶対に家へ招いてくれない彼。不審に思った女が、自宅に突撃した結果…
Episode２：3年目の秋に、いきなり同棲解消を告げられた男
「美佐子、僕と付き合ってほしい」
そう告白したのは、4年前の夏のことだ。
彼女と僕は、同じ早稲田の政治経済学部に通っていた同級生だった。在学していた頃は顔見知り程度だったが、25歳のときにサークルのOB会で再会し、交際をスタートさせたのだ。
それから1年。彼女ができて自信もついた僕は、念願の大手代理店へ転職することになる。年収は倍以上になり、それをキッカケに虎ノ門のタワーマンションで同棲を始めた。
「転職おめでとう。ずっと頑張ってきた甲斐があったね！」
「ありがとう美佐子。いつも支えてくれたおかげだよ」
彼女は、僕の転職を自分のことのように喜んでくれた。そして今年で同棲3年目。「そろそろ結婚か」なんて、家族からは言われていたのに。
「ねぇ、別れてくれない？」
ある日の午前3時。美佐子から突然、別れを告げられたのである。
「えっ、なんで急に？」
「急じゃないよ。ずっと前から考えてたの」
ピンクのネグリジェに身を包んだ彼女は、ソファで提案書を作成していた僕を見つめたまま、寝室のドアにもたれかかっている。
「そっか」
僕は言葉に詰まりながら、信じられない思いで彼女を見つめた。別れの予兆など微塵もなかったからだ。
「で、別れたい理由はなんなの？」
僕の問いかけに、彼女はしばらく悩んだ後「いろいろよ」と言いながら、僕が脱ぎ捨てた靴下に目をやった。
「別れてこのマンションを出たら、どうするの？1人でこんないい部屋住めないでしょ」
同棲している虎ノ門のマンションは家賃32万円。毎月僕が23万、美佐子が9万支払っている。
僕はそれを引き合いに出しながら、彼女が冷静になって「やっぱり、さっきの別れ話は撤回する」と言うだろうと思っていた。
しかし、美佐子は冷たい声でこう言い放ったのだ。
「大丈夫、引っ越し先は探してるから」
そう言って美佐子は僕に背を向け、ため息交じりに寝室へと向かった。パタンとドアが閉まると同時に、リビングは静寂に包まれる。
― もしかして、ほかに好きな人でもできたのか？
そんなことを考えていると、だんだんムシャクシャしてくる。僕は寝室のドアを開け、ベッドの中でスマホを見ていた彼女にこう言い放った。
「なぁ、美佐子。1つだけ忠告しとくわ」
「…何よ？」
「この日本にさ、俺と同じ年収1,000万超えってどれくらいいるか知ってる？」
「さぁ」
「5％以下。このマンションに住めるのも、俺のおかげってことは忘れないほうがイイよ。美佐子が今いる下請けの会社じゃ、一生かかっても稼げないだろ」
「忠告ありがとう。…あなた、本当に変わったわね」
彼女は感情のこもっていない声でそう言うと、布団をすっぽりと被って寝てしまった。
「美佐子こそ、変わったな」
僕も吐き捨てるようにそう言って、寝室を出た。
同棲し始めた頃は何度もベッドの中で抱き合い、愛の言葉を囁き合ったのに。美佐子はいつの間にか、変わってしまったのだ。
◆
それから数日後。
「引っ越し先が決まった。1ヶ月後にはこの部屋を出るわ」
美佐子は僕の脱いだ靴下を拾いながら、こちらを見ることもなく言った。
「へぇ、美佐子の給料で住めるマンションあったんだ」
それからさらに数日後。
いつもはパンツスタイルの美佐子が、なぜかジャケットを羽織り、白色のタイトスカート姿で帰宅したのだ。
「何してたの？」と声をかけたが、美佐子は「転職活動。…もう関係ないでしょ」と冷たく言い放ち、バスルームへと向かっていく。
そして1ヶ月後。茶封筒に入った9万円を僕に手渡した彼女は、とうとうマンションを出ていったのだ。
◆
「え〜！彼女いないんですか？こんなにカッコいいのに♡」
美佐子が出て行ってから数日後。僕はモデルやマスコミ系の美女たちを、立て続けにデートへ誘った。
ハイスペックな僕に誘われた女性は、当然ホイホイついてくる。僕はその中から、モデルの夏美と付き合うことにした。
すぐに半同棲を始めたが、夏美は気の利かない女で、週1回程度しか晩御飯を作らない上にレトルトが多い。
何度忠告しても、味噌汁の味は薄かった。最終手段として、僕の母親に連絡してレシピまで送ってもらったのに、だ。
しまいには「前の彼女さん、大変だっただろうね」と謎の言葉を残し、半年で僕の前から去っていった。
その後、僕は頻繁に食事会へ参加した。もちろんチヤホヤされる。しかしあるとき、衝撃的な言葉を投げかけられたのだ。
「それってあなたがすごいんじゃなくて、会社がすごいんですよね？」
東大卒だというその女は、ワインを片手にバカにするような口調で言い放った。
「ちょっと亜美、それは言い過ぎだって…！」
隣にいた女が、ひきつった顔の僕をチラ見しながら苦笑いを浮かべる。
「だってこの人、さっきから『こんな仕事して〜』とか偉そうに言ってるんだもん。
でもそれってあなたに来た仕事じゃなくて、会社に来た仕事をやってるだけですよね？30歳でその思考、ヤバくないですか？」
◆
「クソッ！」
帰宅した僕は怒りのあまり、冷蔵庫にあった缶ビールを一気に飲み干してソファに寝そべった。
「なんなんだよ、あの女！食事会に来る女の質、落ちたんじゃないか？」
イラつく気持ちを抑えながら、スマホに目をやる。すると、上司から面談希望のメールが入っていた。
「えっ。出向、ですか！？」
翌日。部長のデスクに行くと、子会社への出向を命じられた。それは事実上の左遷だった。
「取引先から、君を外してほしいという依頼が3件も続いている。さすがに営業を続けてもらうのは会社として困るんだよ」
そう言い放つ上司の目を見つめる。それは入社したての頃に向けられていた期待の目とは真逆の、氷のような冷たい視線だった。
― 上司も、変わってしまった。
それから子会社で半年ほど働いたものの、本社からの指示待ち仕事は僕には合わなかった。
こうして僕は会社を捨て、転職活動を始めたのだ。
年収は下げたくなかったので、1,200万以上に設定する。すると大手ベンチャー企業のプロダクト開発事業部がヒットし、すぐに面接へ呼ばれた。
1次面接の人事面談を終え、2次面接は部長・局長クラスの役員面談だ。おそらくここで内定が出るのだろう。
「失礼します」
ドアを開けると、3名の男女が座っている。中心に座っている面接官と目が合った瞬間、心の内を見透かされているような気がして、僕は途端に緊張し始めた。
「あなたはなぜ、転職を？」
「会社が変わってしまったと感じたからです」
「そうですか。変わったのは会社が、ですか？」
「えっ…？」
「変わったのは、あなた自身ではないでしょうか」
そう言う面接官の視線は、驚くほど冷ややかだった。
面接後、不採用通知はすぐに届いた。1人暮らしの自宅に戻ると、そこら中に脱ぎっぱなしの靴下が散らかっている。いつも知らぬ間に片づけてくれた人の顔が、頭をよぎった。
― やっぱり俺には、あの人しかいない。
スマホを手に取ると、僕は急いで電話をかけた。3度のコールの後「もしもし？どうしたの？」と優しい声が聞こえてくる。
「…もしもしママ？僕だよ。そろそろ田舎に戻ろうと思うんだ。東京での仕事はやり切ったから」
電話口の優しい声に、自然と涙が溢れてくる。
先ほどの面接官や前職の上司、そして美佐子から向けられた哀れみの目を思い出す。変わったのが自分自身だということに、僕は向き合いきれずにいた。
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3年前に離婚した元夫に、突然呼び出された女は…？
