産後パパ育休を取ってくれたことは嬉しいが…?(写真はイメージ)

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「オトコの産休」こと「産後パパ育休」をご存知だろうか。子育て支援のために2022年10月1日から始まる新たな男性の育休取得推進制度だ。

出産直後から育休が取りやすくなるが、意外にも働くママの間で不評なことが、働く主婦層の実情や本音を探る調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)の「産後パパ育休をめぐる女性の意識調査」でわかった。

かえって働くママのストレスがたまる、というのだ。いったい、どういうことか。

働く女性の6割以上、産後パパ育休開始「知らなかった」

「産後パパ育休」とは、妻の出産後に夫がこれまで以上に休暇を取りやすくするための制度で、10月1日から改正育児休業法が施行されることに伴いスタートする。

従来の育休とは別に、生後8週間以内に休みを最大4週間(28日間)とることができる。さらに、2回に分けることも可能だ。たとえば、妻の出産に立ち会った直後からの退院・母子の身の回りの世話・出生届提出...など一番大変な時期に2週間。

その後、いったん職場に復帰した後、再び2週間休むなど、より柔軟に夫も「産休」を取ることができるというわけだ=図表1参照。

厚生労働省の最新データ(2021年度)によると、女性の育休取得率は85.1%だが、男性はわずか13.97%。政府が2025年までに目標とする30%とは開きがあり、新たな取り組みに期待がかかる。

ところで、この「産後パパ育休」、どのくらい周知されているのか。

「しゅふJOB総研」の調査によると、まず「産後パパ育休」が始まることを知っているかどうか聞くと、「知らなかった」が64.6%と、6割以上の人が知らなかった=図表2参照。まだまだ浸透していないことがうかがえる。

「夫が家事育児をせず、かえって妻のストレスに」

続けて、「産後パパ育休にどんなメリットがあると思うか」と聞くと(複数回答)、最も多かったのは「家事育児の経験が夫の視野を広げる」(58.9%)だった。それだけ夫には家事育児の実情が見えていないと感じている妻が多いということか。

さらに、「夫と子どもが、かけがえのない時間を過ごすことができる」(53.5%)、「家庭内における性別役割分業意識の解消につながる(40.9%)、「妻のストレスが軽減される」(39.8%)と続いた=図表3参照。

一方、「どんなデメリットがあると思うか」と聞くと(複数回答)、「夫が家事育児をせず、かえって妻のストレスが溜まる」(49.8%)が半数近くでダントツ1位。2位の「昇進が遅れるなど夫のキャリアダウンにつながる」(23.8%)、3位「休業期間中の夫の仕事勘が鈍る」(23.5%)、4位「夫に大きなストレスがかかる」(23.2%)の2倍以上の差をつけた=図表4参照。

この2位〜4位がいずれも夫の立場を心配しての内容。それだけに、1位の「妻のストレスになる」というデメリットは、それとは対照的である分、よけいに深刻と言えそうだ=再び、図表4参照。

「産まれたての時、たくさん相手してくれて助かった」

フリーコメントをみると、賛否両論に分かれている。

賛成する人からはこんな意見が聞かれた。

「産後1か月は出産後の女性の身体がとても辛いことや、精神的にうつなど不安定になりやすい。だから、長い子育てという共同作業のうち最初の数か月が特に家族のサポートが必要だと知らせたほうがよいと思う」(20代:パート/アルバイト)
「積極的にパパ育休は取得させるべき。ママにだけ育児を任せるのは環境によっては負担になる。また育児という経験を通してしか体験できない貴重な時間を味わってほしい」(50代:正社員)
「男性の意識が変わる機会が増えると思う」(50代:派遣社員)
「男女の平等を推進する、大きな一歩かと思います」(60代:派遣社員)
「子育ては立派なことだ、価値のあることだということを国が義務教育で教え、男女格差をなくすようにしてほしい」(50代:今は働いていない)

また、実際に夫が育休を取ったという経験者からもこんな声が寄せられた。

「うちは夫が1年間、育休を取りました。イライラする時もありましたが、話し相手がいるだけでも助かりました」(40代:公務員)
「うちは産後1週間ほど休みを取ってくれましたが、役所の手続きなどもしてもらえるし、産まれたての姿をたくさん見て相手してもらえたので、よい経験ができたと思う」(30代:今は働いていない)

「趣味に走ったり、自分の勉強に当てたりしそう」

一方、デメリットのほうが大きいと見る人からは、こんな意見が寄せられた。

「産後パパ育休を勘違いしている男性が多い。育児をするためでなく、給料はもらって仕事は休めると。パパ育休など要らないと思う」(50代:派遣社員)
「家事もできない人がいるのに、育児をできるのか? かえって妻の負担が増えてイライラしそう」(50代:今は働いていない)
「育休を取るだけではなく、何をするための休暇なのか、男性側へ教育がなされないと全く無意味になりかねないと思います。趣味に走ったり、自分の勉強に当てたりしそう...」(40代:パート)
「お手伝い程度なら必要ないと思う。休みではなく、朝の家事、夜の家事をしてもらうための時短ほうがよい」(50代:パート)
「育休を取る男性の数は格段に上がるかもしれないが、取得期間が1週間や2週間では、結局はあくまでも『お手伝い』で終わってしまい、『育休率の上昇』だけ持ち上げられてしまうのではないかと危惧しています」(40代:正社員)

このように、制度や男性への不信感を露わにする女性が多かった。

また、実際に夫が育休を取ったという経験者からもこんな不満の声が寄せられた。

「私の主人は育休を取得しましたが、ストレスが増大し、私に対して暴言を吐くようになってしまいました。私自身は楽ができましたが、育休があればいいというものではないな、と実感しております」(30代:今は働いていない)

「育休よりも年休を確実に消化することのほうが先」

「産後パパ育休」自体に、こんな疑問点を挙げる人も。

「いまだに産休が取れない、退職を迫られる、自営などで妊娠をためらう女性がいると思うので、女性全員がしたい時に産休育休を取れる社会を先に実現させてほしい」(40代:パート)
「育休を取った人の穴埋めリソースが確保できない限り、導入すべきではない。制度だけあっても、若い人や子どものいない人にしわ寄せがいき、現場が疲弊してしまうからです。業務改善と並行して実施することが必須と考えます」(50代:公務員)

また、

「子供が成人するまで、普通に必要な時に有給休暇消化を確実にこなし取得しやすくするほうがパパ育児も楽しいのではないかと思う」(40代:パート)
「育休をとれるのはありがたいが、その前に毎年ドブに捨てている有給休暇を全て消化できるようにして欲しい」(育休は満額支給ではないので)(30代:パート)

などと、育休よりも年休を確実に消化することのほうが先だ、とする意見も多かった。

今回の調査結果について、「しゅふJOB総研」の研究顧問の川上敬太郎さんはこう語っている。

「せっかくの制度ですが、夫が育休を取得したとしても、本当に育児するのか懸念している女性が相当数いることがわかります」「夫が長期間仕事から離れることで、キャリアダウンなど、さまざまな不利益を被ってしまう悩ましさもあります。夫婦はどちらも育児や家事の当事者です。そのうえで、夫婦間で最適な役割シェア方法を模索し、職場では育児や家事が『視野を広げる』ことを含めた『家オペ力』向上機会として評価する取り組みを検討し、政府は育休制度の認知度向上に努める必要があると考えます」

調査は、2022年9月16日〜9月23日に求人サイト「しゅふJOB」などに登録している女性596人にインターネットを通じてアンケートした。

(福田和郎)