ロッテ、頂点をつかめず…リーグ優勝の可能性が完全に消滅
◆ チームとしての浮き沈みを今季も改善できず
『頂点を、つかむ。』というチームスローガンを掲げたロッテだったが、24日のソフトバンク戦に0−6で敗れ、今季のリーグ優勝の可能性が完全に消滅した。20年から2年連続で2位に入り、特に昨季は2位ながら球団としては51年ぶりにリーグ優勝マジックが点灯するなど、リーグ制覇したオリックスと最後の最後まで優勝を争った。優勝の機運が高まったなかで、結局今季もリーグ優勝を達成することができなかった。
昨季までコロナ禍により20年が延長10回打ち切り、昨季が9回で打ち切り、レアード、マーティンの両外国人と救援陣の頑張りで2年連続2位に入ったと言われることは多かったが、チーム全体としての力が上がっていたことは間違いない。ただ、ここ数年何百回も述べてきているように、チームとしての浮き沈みが激しく安定した戦いができないという課題を今季も克服することができなかった。
昨季でいえば、開幕5連敗で深刻な得点力不足に喘いでいたが、開幕6戦目に16点を奪い大勝し、そこから打線に勢いがつき引き分けを挟んで4連勝、交流戦明け投打が噛み合わず苦しい戦いが続いた中で藤原恭大が再昇格した7月3日の楽天戦から5連勝、東京五輪明けも最初の2カードで2勝3敗1分と負け越し4位転落も、8月18日の西武戦から1カ月近く連敗がなかった。
今季も6月4日の巨人戦後に借金が今季ワーストタイの9になったが、翌5日の巨人戦に10−4で勝利すると、同日からの1カ月で14勝5敗と大きく勝ち越し、7月1日の楽天戦後に借金を完済し、翌2日には貯金を「1」とした。7月23日の日本ハム戦には今季最多の貯金3とし、前半戦を46勝44敗1分、首位と2ゲーム差の4位で終えた。
もうひとつの課題点は、ここ一番という大事な試合をことごとく落としていること。昨季は1つでも勝利すれば優勝マジック点灯というなかで、9月28日からのオリックスとの3連戦にまさかの3連敗、試合のなかった10月1日に2位・オリックスが勝利したため2位に後退した。
今季も首位の背中が見えたなかで、オールスター明けのオリックスとの3連戦に3連敗。ここからチームはなかなか勝つことができず、8月23日の西武戦後には借金は7に膨らみ、首位とのゲーム差も8.5とリーグ優勝がほぼ絶望的な状況に。ライト・福田秀平がフェンスにぶつかりながら魂の好捕があった8月24日の西武戦に、5−2で勝利するとチームが再び浮上。今季に関してはチーム状況があがったときに貯金を増やすのではなく、借金を完済する戦いだったため、なかなか貯金生活ができなかったのも優勝を逃した原因のひとつといえる。
◆ 足を使った攻撃
打線に関していえば、レアード、マーティンの長打力に長年依存していたことは間違いないが、チーム全体として四死球で出塁した後、1本の安打で1つ先の塁を狙った足を使った攻撃、送りバントといった細かい攻撃をチーム内でここ数年徹底、浸透しているのも事実。井上晴哉、安田尚憲、山口航輝といった足が速いとはいえない選手たちも、“1つ先の塁”を常に狙った。
“1つ先の塁を狙った走塁”、“足を使った攻撃”はできていたが、今季は要所で送りバントのミスが多く、またランナーが出てもチャンスにあと1本が出なかった。もちろん、長打が打てることに越したことはないが、そもそもチームとしてレアード、マーティンを除いて長打力のある日本人選手が井上、安田、山口くらいで、どうしても連打が出なければ、複数得点という攻撃がしにくい。
だからこそ足を使った攻撃、送りバントを使った攻撃になるのだろうが、今季は打線全体が繋がらない、相手投手に抑え込まれる、チャンスで1本が出ないという試合が多すぎた。来季に向けて、山口が14本塁打、安田が9本塁打と長打の打てる若手選手が育ってきているのは明るい材料。2人が8・9月のような働きをシーズン通してできれば、来季以降長打という部分で少しは改善されそうだ。
◆ 投手陣の課題
投手陣は絶対的なエース、先発ローテーションの軸を担う投手がシーズン通して今季も出てこなかった。前半戦は佐々木朗希が4月10日のオリックス戦で完全試合を達成するなど防御率1.48、6勝をマークし、ロメロもチームトップの7勝をあげた。後半戦は佐々木が3勝、ロメロが1勝、前半戦思うような投球ができなかった美馬学が勝ち頭となり、8月以降の2カ月で4勝、6試合・38回1/3を投げ、自責点はわずかに1と、抜群の安定感を誇った。
小島和哉がシーズン通して先発ローテーションを守っているとはいえ、打線の援護に恵まれず、チームトップの22試合・134回1/3を投げ、防御率2.88も、3勝10敗と黒星が大きく先行。開幕投手を務めた石川歩は前半戦、後半戦ともに故障で離脱した。絶対的なエースがいないことに加え、後半戦の大事な時期にローテーションで投げなければいけない先発投手たちが不在だったのも痛かった。佐藤奨真、本前郁也、鈴木昭汰ら若手投手に、リーグ優勝、CS進出に向けて大事な試合で先発するのは少し荷が重かったかもしれないが、この経験を来季以降に繋げて欲しい。
リリーフ陣は絶対的な守護神・益田直也が井口資仁監督就任後、初めて一軍登録を抹消されたが、シーズン途中に加入し、メジャー時代にクローザーの経験のあるオスナが抑えのポジションにハマった。守護神が離脱した後、抑え不在でチームがズルズル落ちる傾向にあるが、オスナがその役割を果たしたことは大きい。
一方で勝ち試合の7回、8回を投げる投手をシーズン通して固定することができなかった。2年連続2位に入っているとはいえ、20年、21年ともに益田以外は顔ぶれの違った“勝利の方程式”。今季はゲレーロ、東條大樹、西野勇士、唐川侑己などが勝ちパターンを任されたが、故障や不振、新型コロナウイルス感染による離脱があり、“これがロッテの勝利の方程式!”というのをなかなか作れなかった。
昨季勝ちパターンを担った佐々木千隼、国吉佑樹が一軍を不在にする期間が長かったなかで、小野郁は頼もしい存在に成長し、岩下大輝、廣畑敦也、八木彬など、リリーフ陣の層は全体的に厚くなった印象。だが、今季は安定したリリーフが出てくるとその投手の登板数が増える傾向にありその後、調子を落としてしまうということが多かった。3連投した投手がオスナしかいなかったとはいえ、勝ちパターンのリリーフがビハインドでマウンドに上がることも多くあり、運用という部分において課題が残った。
リーグ優勝の可能性は完全に消滅してしまったが、クライマックスシリーズ進出の可能性はわずかながらに残っている。この時期、試合内容は関係ない。とにかくどんな形でも勝利するだけ。残り試合、全勝する強い覚悟を持って戦って欲しい。リーグ優勝という頂点をつかめなかったが、CSに進出し、そしてCSを勝ち抜き日本シリーズに進出して日本一という、頂点をつかみたい。
文=岩下雄太
『頂点を、つかむ。』というチームスローガンを掲げたロッテだったが、24日のソフトバンク戦に0−6で敗れ、今季のリーグ優勝の可能性が完全に消滅した。20年から2年連続で2位に入り、特に昨季は2位ながら球団としては51年ぶりにリーグ優勝マジックが点灯するなど、リーグ制覇したオリックスと最後の最後まで優勝を争った。優勝の機運が高まったなかで、結局今季もリーグ優勝を達成することができなかった。
昨季でいえば、開幕5連敗で深刻な得点力不足に喘いでいたが、開幕6戦目に16点を奪い大勝し、そこから打線に勢いがつき引き分けを挟んで4連勝、交流戦明け投打が噛み合わず苦しい戦いが続いた中で藤原恭大が再昇格した7月3日の楽天戦から5連勝、東京五輪明けも最初の2カードで2勝3敗1分と負け越し4位転落も、8月18日の西武戦から1カ月近く連敗がなかった。
今季も6月4日の巨人戦後に借金が今季ワーストタイの9になったが、翌5日の巨人戦に10−4で勝利すると、同日からの1カ月で14勝5敗と大きく勝ち越し、7月1日の楽天戦後に借金を完済し、翌2日には貯金を「1」とした。7月23日の日本ハム戦には今季最多の貯金3とし、前半戦を46勝44敗1分、首位と2ゲーム差の4位で終えた。
もうひとつの課題点は、ここ一番という大事な試合をことごとく落としていること。昨季は1つでも勝利すれば優勝マジック点灯というなかで、9月28日からのオリックスとの3連戦にまさかの3連敗、試合のなかった10月1日に2位・オリックスが勝利したため2位に後退した。
今季も首位の背中が見えたなかで、オールスター明けのオリックスとの3連戦に3連敗。ここからチームはなかなか勝つことができず、8月23日の西武戦後には借金は7に膨らみ、首位とのゲーム差も8.5とリーグ優勝がほぼ絶望的な状況に。ライト・福田秀平がフェンスにぶつかりながら魂の好捕があった8月24日の西武戦に、5−2で勝利するとチームが再び浮上。今季に関してはチーム状況があがったときに貯金を増やすのではなく、借金を完済する戦いだったため、なかなか貯金生活ができなかったのも優勝を逃した原因のひとつといえる。
◆ 足を使った攻撃
打線に関していえば、レアード、マーティンの長打力に長年依存していたことは間違いないが、チーム全体として四死球で出塁した後、1本の安打で1つ先の塁を狙った足を使った攻撃、送りバントといった細かい攻撃をチーム内でここ数年徹底、浸透しているのも事実。井上晴哉、安田尚憲、山口航輝といった足が速いとはいえない選手たちも、“1つ先の塁”を常に狙った。
“1つ先の塁を狙った走塁”、“足を使った攻撃”はできていたが、今季は要所で送りバントのミスが多く、またランナーが出てもチャンスにあと1本が出なかった。もちろん、長打が打てることに越したことはないが、そもそもチームとしてレアード、マーティンを除いて長打力のある日本人選手が井上、安田、山口くらいで、どうしても連打が出なければ、複数得点という攻撃がしにくい。
だからこそ足を使った攻撃、送りバントを使った攻撃になるのだろうが、今季は打線全体が繋がらない、相手投手に抑え込まれる、チャンスで1本が出ないという試合が多すぎた。来季に向けて、山口が14本塁打、安田が9本塁打と長打の打てる若手選手が育ってきているのは明るい材料。2人が8・9月のような働きをシーズン通してできれば、来季以降長打という部分で少しは改善されそうだ。
◆ 投手陣の課題
投手陣は絶対的なエース、先発ローテーションの軸を担う投手がシーズン通して今季も出てこなかった。前半戦は佐々木朗希が4月10日のオリックス戦で完全試合を達成するなど防御率1.48、6勝をマークし、ロメロもチームトップの7勝をあげた。後半戦は佐々木が3勝、ロメロが1勝、前半戦思うような投球ができなかった美馬学が勝ち頭となり、8月以降の2カ月で4勝、6試合・38回1/3を投げ、自責点はわずかに1と、抜群の安定感を誇った。
小島和哉がシーズン通して先発ローテーションを守っているとはいえ、打線の援護に恵まれず、チームトップの22試合・134回1/3を投げ、防御率2.88も、3勝10敗と黒星が大きく先行。開幕投手を務めた石川歩は前半戦、後半戦ともに故障で離脱した。絶対的なエースがいないことに加え、後半戦の大事な時期にローテーションで投げなければいけない先発投手たちが不在だったのも痛かった。佐藤奨真、本前郁也、鈴木昭汰ら若手投手に、リーグ優勝、CS進出に向けて大事な試合で先発するのは少し荷が重かったかもしれないが、この経験を来季以降に繋げて欲しい。
リリーフ陣は絶対的な守護神・益田直也が井口資仁監督就任後、初めて一軍登録を抹消されたが、シーズン途中に加入し、メジャー時代にクローザーの経験のあるオスナが抑えのポジションにハマった。守護神が離脱した後、抑え不在でチームがズルズル落ちる傾向にあるが、オスナがその役割を果たしたことは大きい。
一方で勝ち試合の7回、8回を投げる投手をシーズン通して固定することができなかった。2年連続2位に入っているとはいえ、20年、21年ともに益田以外は顔ぶれの違った“勝利の方程式”。今季はゲレーロ、東條大樹、西野勇士、唐川侑己などが勝ちパターンを任されたが、故障や不振、新型コロナウイルス感染による離脱があり、“これがロッテの勝利の方程式!”というのをなかなか作れなかった。
昨季勝ちパターンを担った佐々木千隼、国吉佑樹が一軍を不在にする期間が長かったなかで、小野郁は頼もしい存在に成長し、岩下大輝、廣畑敦也、八木彬など、リリーフ陣の層は全体的に厚くなった印象。だが、今季は安定したリリーフが出てくるとその投手の登板数が増える傾向にありその後、調子を落としてしまうということが多かった。3連投した投手がオスナしかいなかったとはいえ、勝ちパターンのリリーフがビハインドでマウンドに上がることも多くあり、運用という部分において課題が残った。
リーグ優勝の可能性は完全に消滅してしまったが、クライマックスシリーズ進出の可能性はわずかながらに残っている。この時期、試合内容は関係ない。とにかくどんな形でも勝利するだけ。残り試合、全勝する強い覚悟を持って戦って欲しい。リーグ優勝という頂点をつかめなかったが、CSに進出し、そしてCSを勝ち抜き日本シリーズに進出して日本一という、頂点をつかみたい。
文=岩下雄太