7月12日からパブリックベータ版のiOS 16が配信されている。ロック画面の大幅な改良が目玉だ(筆者撮影)

iOS 16のパブリックベータ版が、7月12日から公開されている。パブリックベータ版とは、一般に公開する完成前のバージョンのこと。広く公開し、志願者を募ることでバグの洗い出しやその修正などを行うのが目的だ。アップルは、例年、正式版の前にパブリックベータ版を配信しており、簡単な手続きを取るだけで自身のiPhoneにインストールすることができる。一足先に最新のOSを試してみたい人にはうってつけの仕組みと言える。

注目しておきたい新機能を紹介する

利用には、アップルのサイトで自身のApple IDを登録する必要がある。ベータテストに参加する意思表示を行うということだ。この手続きをすると、プロファイルをiPhoneにダウンロードできる。ダウンロード後に、通常の手順と同じようにOSのアップデートをかけるだけで、パブリックベータ版のOSをインストールできる。


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バグなどが残っていたり、アプリが動かなくなってしまったりするケースもある。ただし、あくまでもベータ版なだけに、普段使いのiPhoneに入れるのはお勧めできないが、バックアップを取ったうえで試してみるのは手だ。使っていない予備のiPhoneがあれば、そちらにインストールしてもいいだろう。

ここでは、そんなiOS 16の中で注目しておきたい新機能をピックアップ。パブリックベータ版から、その魅力の一端をお届けする。なお、本来パブリックベータ版はスクリーンショットの公開が禁止されているが、本稿では取材に基づく許可を得ている。

iOS 16の目玉と言える機能の1つが、刷新されたロック画面だ。現行のiOS 15では、ロック画面に表示できるコンテンツは非常に限定的。壁紙こそ変更可能だが、時計は固定表示で、あとカメラとフラッシュライトを呼び出すショートカットしか表示されない。通知が多いと、画面のほとんどがそれで占められてしまう。

ガラリと変わったロック画面、ウィジェットが便利

これに対し、iOS 16ではカスタマイズできる箇所が大幅に増えた。写真を配置できるのはもちろんのこと、時計のフォントや色の変更まで可能。写真には、フィルターをかけることができる。フルカラーの写真は情報量が多すぎて、画面内部がゴチャゴチャしてしまいがちだ。フィルターをかけることで、写真を表示しつつ、時刻や通知などを際立たせることができる。


ロック画面の背景写真にフィルターをかけたり、ウィジェットを配置したりと、さまざまなカスタマイズが可能になった(筆者撮影)

ロック画面にウィジェットを置けるようになったのも、iOS 16の大きな進化だ。ウィジェットは、ホーム画面に置けるものよりも小さく、どちらかと言えば形状はApple Watchのそれに近い。アクティビティの進捗状況やバッテリー残量、次の予定など、標準でも様々なウィジェットが用意されている。画面のロックを解除する必要なく、こうした情報をチラ見できるのは便利だ。

カスタマイズしたロック画面は、複数作成しておくことが可能だ。切り替えも簡単で、ロック画面表示時に背景の写真を長押しして、スワイプするだけだ。これにより、例えば、プライベートのときには子どもの写真を、ビジネスのときには当たり障りのない標準の壁紙をといった形で、ロック画面を使い分けることが可能になる。手動で切り替えてもいいが、「集中モード」を使うと、時間帯や場所に応じて自動で変更することもできる。

iPhoneは普段から肌身離さず持ち運ぶパーソナルな端末。机の上に置いておくと、通知などが届いたタイミングで他人にも見えてしまうだけに、ロック画面は自分仕様にカスタマイズしておきたい。iOS 15までと比べ、その幅が一気に広がったのはうれしいアップデートと言えそうだ。

iOS 16は、AIの活用も進んでいる。その成果がわかりやすいのは、画像の切り抜きだ。iOS 16の「写真」アプリには、被写体を自動で認識して、簡単な操作で人物や物などを切り抜くことができる機能が備わっている。切り抜いた写真は、メールなど別のアプリに張り付けて送ったり、別の背景の上に置いたりすることが可能だ。こうした作業を、手動でやるには輪郭を正確になぞっていく必要があり、骨が折れる。iOS 16なら、これが長押し一発だ。

フォトショップもビックリの画像切り抜き

まず「写真」アプリで切り抜きたい写真を開いたあと、切り抜きたい人や物を長押しする。すると、切り抜く対象が一瞬だけ光る。その状態で指を動かすと、切り抜く対象だけが移動する。あたかも写真の中から一部分だけを指で押して背景から引き離しているかのよう。認識も非常に速く、ストレスなく操作することが可能だ。


人や物を長押しするだけで、簡単に切り抜きができる(筆者撮影)

切り抜いた写真をその場で離すと、「コピー」と「共有」、2つのメニューが表示される。メールに添付したいときには、「共有」から「メール」を選ぶだけでいい。コピーを選択すると、クリップボードに画像が保存されるので、後は張り付けたいアプリを起動してペーストするだけだ。画像の合成をしたいようなときには、コピーしておくといいだろう。

また、写真を切り抜いた状態のまま、別の指で画面を操作することもできる。メールに添付したい場合、切り抜いた画像を指でホールドしたまま、別の指を使ってホーム画面に戻り、「メール」アプリを立ち上げて、新規作成なり返信なりを選んで編集画面で指を離す。こうすると、好きなメールに切り抜いた写真を張り付けられる。コピーの操作でも同じことはできるが、こちらのほうが操作として直感的だ。

ただし、写真アプリ内で他の画像を切り抜いた写真と、別の背景合成するような編集には対応していない。こうした作業をしたいときには、写真加工アプリが必要になる。髪型やポーズが複雑な人物を切り抜くと、背景が少しだけ残ってしまうこともあり、完璧ではない。とは言え、長押し一発で簡単に切り抜きできる機能は、利用価値が高い。文章内に貼り付けるだけでも雰囲気が大幅に変わり、洗練されたイメージを与えられる。応用の幅が広く、利用機会は多くなりそうだ。

同じくAIを使った機能として非常に便利なのが、カメラによる文字認識だ。機能自体はiOS 15で導入されたものだが、英語や中国語のみの対応で、日本語は利用できなかった。iPhoneの言語設定を日本語にした状態でも、欧文や数字の読み取りはできたので、役立つ場面はあったものの、出番は限定されていた。iOS 16では、この機能がついに日本語に対応。英語などと同様、フォントとしての文字だけでなく、手書きの文字も認識する。

カメラで日本語も認識、テキストとして使える

利用の仕方は次のとおりだ。まず、カメラを起動して文字が書かれている紙や画面を写す。カメラが文字を認識すると、倍率変更ボタンの端に、文字が書かれた紙のようなアイコンが現れる。ここをタップすると、該当する部分だけが切り取られたような状態になる。後は、Webサイトのテキストと同じように、必要な部分を指でドラッグしていくだけだ。

読み取った文字は、その時点でテキストとして扱われるため、コピーすれば、他のアプリにドラッグできる。手書きの文字でも、同様の操作をすれば、自動的にテキスト化される。職場や学校、行政機関などで配られたプリントを読み取って必要な部分だけをメールで送ったり、画面に写っている文字を読み取って検索したりするような場面で活躍する。レストランのメニューに書かれた難しい漢字の読みを調べたいときにも便利。日本語に対応することで、利便性が広がった格好だ。


テキスト認識機能が日本語に対応。手書き文字も読み取れる(筆者撮影)

文字認識は、カメラだけでなく、写真アプリ内でも有効。撮った写真に書かれていた文字を検索する際に、活用できる。ただし、手書きの文字に関しては、欧文と比べると誤認識も多い印象だ。平仮名、カタカナに加えて漢字も混じる日本語は、文字数はもちろん組み合わせも多彩になるため、これは致し方ないところかもしれない。走り書きのように、文字の形が崩れていると、認識精度は落ちるので注意したい。

また、iOS 16ではクイックアクションの機能が加わっている。これは、電話番号が書かれているときに直接電話アプリを呼び出したり、金額が書かれているときに通貨を換算したりできる機能のこと。コピー&ペーストでアプリを呼び出すよりもタップする回数が減って、操作がシンプルになった。欧文や数字だけでよければ、テキスト認識はiOS 15でも利用できる。パブリックベータ版をどうしてもインストールできない人は、現行バージョンでその使い勝手を試してみてもいいだろう。

(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)