高齢者ドライバーは安全装備充実の最新車種に乗れ「安全車限定免許」の検討を - 毒蝮三太夫
※この記事は2021年04月05日にBLOGOSで公開されたものです
高齢者の免許更新がますます厳しくなるんだってな。なになに、道路交通法の改正で「75歳以上のうち、過去3年間に速度超過や信号無視などの違反をした人に実車試験が課せられ、合格するまで免許更新できない」と・・・。
これが来年の6月までに実施されるってことらしいな。高齢化で高齢者ドライバーも増えて、痛ましい事故が増えてるのは確かだ。高齢者の免許を厳しくすること、俺は大賛成だよ。実車試験おおいに結構。運転は技能なんだから、その能力をきちんとテストするのはいいことだよ。
ライフラインでもある自動車 年齢だけで線引きするのは反対
だけど単に年齢だけで線引きするようなことは反対だからね。世の風潮として「高齢者＝運転が危ない」ってイメージがあるけども、80歳だろうが90歳だろうが、健康で認知力がしっかりしていて、安全運転ができる人から免許を取り上げるようなことはしないでほしい。
俺はこの春に85歳になった。若い頃からずっと車は好きで運転は今も現役だよ。ジムへ通うのも車だし、大好きな八ヶ岳にドライブするのは人生における大事な楽しみのひとつだ。だから俺自身、車のない生活は考えられない。
高齢者で運転を続けている人って、バスや電車の公共交通が不便な地域で病院へ通うのに欠かせなかったり、日常の買い物で重たいものを運ぶのに必要だったり、車そのものがライフラインになってたりする人も多いと思う。
俺の場合、車の運転は移動のためだけじゃなく、心身のリフレッシュに欠かせない、精神的なライフラインって感じかな。運転で独りになることで、ちょっとせわしい気分から一回離れて、気が落ち着いたり、頭の中が整理されたりする。気分転換になったり、イライラやストレスが消えたり、思いきり好きな音楽が聴けたり、俺の心身には欠かせない時間なんだ。
だけどうちのカミさんは俺のことが心配らしくて、近頃は「もう運転やめなさいよ」って言ってくる。とくに高齢者ドライバーが事故を起こしたニュースなんかあったときは、その口調が厳しくなるよ。
運転機会の減った高齢者は返納するのが賢明
俺の周りでは「免許更新やめて返納したよ」って人が多い。それもひとつの判断だし、とくに普段運転する機会が減ってるなら早いとこ返納したほうがいい。そのほうが賢明だよ。
免許持っててたまに運転するのが一番危ないんだ。なまった体で急に運動するようなもんでさ。まったく運転しないペーパードライバーならむしろ安全だけど、ペーパーにも成り切らない半端が一番ダメ。これを「ハンパードライバー」と言う（笑）。
運転する感覚を普段から使っているか、定期的に保っているかは本当に大事。それに、道路って生きものなんだよ。同じように見えて少しずつ変わったりしてる。そのちょっとした違いに気づくことが危険回避につながる。そこに敏感なのが普段から運転してるドライバーだと思う。
安全装備が充実した最近の自動車
俺さ、カミさんに勧められて3～4年前に白内障の手術をしたの。そしたら、まあ見える見える、よく見えるようになったんだ。ビックリしたね。一番ビックリしたのは自分の顔を鏡で見たとき。それまでボヤけてたシワやシミがやけにクッキリと見えちゃって、これにはまいったよ（笑）。
手術前は左右両側の視界が狭くなってたんだ。それが手術後はぐっと広がって運転にも余裕ができた。あなたの身近に親や親戚や上司や知りあいで運転してる高齢者がいて、もし白内障の「気」があるなら手術を勧めたいよ。糖尿から白内障はなりやすいって言うから気にしてみてよ。視力が上がれば安全運転につながるんだから。
あとね、今乗ってる車が車検も近づいてきたのと、そこそこ乗ってて買い替えの時期でもあったんで、新しい車に買い替えることにしたんだ。ディーラーで色々説明を受けたんだけど、最近の車って安全機能がますます進歩してるな。自動ブレーキとかCMでも見かけるけど、今回詳しく説明受けて、その進歩がよくわかったよ。
アクセルとブレーキの踏み違えで急発進してコンビニのガラスに突っ込んだり、駐車場で激突したりとか、よくあるだろ。最新の車って、アクセルとブレーキを踏み違えても、前に障害物があるとセンサーが働いてスピードの出ない機能があるの。それなら「あ！」って気づいてぶつかる前に取り返しがつくし、ぶつかっても被害は最小に抑えられるもんな。
あとは、音声認識機能。運転中にカーナビでもエアコンでもラジオでも音声で操作できる。ハンドルから手を離さないでいいんだから安全性は高まるよ。俺なんか、カミさんが助手席に乗ってたら「ラジオつけてくれ」「ボリュームあげてくれ」「エアコン涼しくしてくれ」なんて、カミさん頼みのカミさん認識機能だったから、運転中にカミさんの手を煩わせなくて済むよ（笑）。
「高齢者用の免許」新設も一案？
あのさ、車の事故で、車に欠陥があったんじゃないかって裁判の争点になることあるよね。確かにそういうケースも中にはあると思う。でも、比率で言ったら車そのものの原因より、ドライバーが原因であるケースのほうが圧倒的に多いと思う。運転中のミス、不注意、うっかり・・・。
そういう運転手側の欠陥を最新機能でカバーしようってことで、自動車メーカーは開発に取り組んでる。車の安全性能が上がれば、それまでにあった事故を減らすことができる。だからさ、俺は自動車メーカーの営業マンでも何でもないんだけど、こういう最新の車を高齢者ドライバーに勧めたいね。
そりゃあ値段は多少高くなるよ。けど、安全性が格段に高まることを考えたら決して高くない。事故を起こしてからのマイナスを考えたらむしろ安い。安全性が金で買えるなら買うべきだよ。
高齢者ドライバーに対して、免許更新を厳しくする制度も必要だけど、ひとつの案として、最新の安全機能が装備された車であれば運転が可能になる、新しい免許のジャンルを設けるのもありなんじゃないの？
ほら、昔、オートマ車が増えてきた頃に、オートマ限定の免許が生まれただろ。だから最新の安全機能を装備した車を、うーん、例えば「オートセイフティ（AUTO SAFETY）」ってことで「オーセフ」とでも呼んで、オーセフ限定免許を普及させるって、どうだい？
これは高齢者に限らず、若い人も同じように扱って、オーセフ免許人口を増やしていくの。交通事故とその被害者を減らしていくために、現実的な考えだと思うよ。
コロナ禍では運転が散歩代わりの気晴らしに
あとさ、今みたいにコロナで家にいる時間が増えて、外に出なくなる、引きこもる、それが習慣になる、これが高齢者にはよくないんだ。コロナが怖いってのもわかるけど、引きこもると体力や筋力も落ちるし、気持ちもふさぐし、いいことないんだよ。
いかに外に出るかってことで言えば、車が果たす役割は大きいよ。散歩代わりに、ちょっと近所を安全運転して、気晴らしができたらいいことだよ。
高齢者にとって車は危なっかしいものではなく、安全性を意識して利用の仕方を注意すれば、暮らしと心身を豊かにするいい相棒になるんだ。俺も新車の新しい機能と仲良くやりながら、安全運転を長く続けていこうと思う。
車に悪気はないんだよな、運転する側がしっかりと安全運転をすること、それが最も大事なんだよな。
（取材構成：松田健次）
