【台風19号】景観重視で堤防建設を拒否 多摩川があふれた二子玉川の現場を歩いた - 田野幸伸
※この記事は2019年10月15日にBLOGOSで公開されたものです
日本列島に深い爪痕を残した台風19号。東京都と神奈川県の県境になっている多摩川も氾濫し、世田谷区の二子玉川駅付近では、500メートル以上にわたる堤防未整備区間から住宅地へ水が流れ込んだ。国土交通省京浜河川事務所では、堤防整備の説明会を度々行っていたものの、地域住民からは「景観が大切」と理解が得られていなかったという。
早速現場に向かった。
二子玉川駅のすぐ下が未整備区間
二子玉川駅はここ10年の再開発で一気に近代化し、シネコンやホテル、タワーマンションが立ち並ぶエリアとなった。その昔はバーベキューのために来る駅というイメージが強かったが、立派な建物に圧倒される。駅のホームから見下ろせばもうそこは氾濫した河川敷。こんなにも近いのか。
河川敷まで歩いて3分ほど。大雨から3日経った15日には、土砂はだいぶ片付いていた。
河川敷に到着すると、バッキリ折れた標識と大量の流木がからみついた看板。ここを濁流が流れていたんだなと思うとゾッとする。
そこかしこに上流から流れてきた枝や草などがびっしり。ここは堤防の内側なのだが、越水した堤防のない区域は線路の反対側になる。
マンション前に大きな土のうが積まれているが、二子橋を超えたあたりから堤防がない。ここを多摩川の水が乗り越えていったのだ。
兵庫橋の先は完全に土砂で埋まっていた。
国道246号線をくぐった先もまだ堤防がないエリア。河川敷の荒れ具合が濁流の強さをものがたっている。
この地ではかつて川辺にあった料亭が景観を売りにしており、堤防を作れなかったと言うが、21世紀になっても、やはり景観を望む地域住民の声があり、堤防が作られることはなかった。
今回の被害を目の当たりにして「そら見たことか!」というのは簡単だが、実際に現場へ足を運んでみると、河川敷の広さに「洪水がここまでくるわけないでしょwww」という楽天的な考えをしてしまうのもわかる。
堤防作って景観悪くなって地価が下がったらどうすんじゃ!と思ってしまうのが人間の性。結果浸水する地域のレッテルを貼られてしまったが、いま一番後悔しているのは反対派の住民ではないだろうか。
人は自分の都合のいいように考えてしまう
かくいう私も、床上浸水なんて起きないでしょ!と、江戸川区に持っているアパートに水災特約をつけておらず、江戸川区の40万人以上に避難勧告が出たときはただただ祈るだけだった。自分の都合のいいように考えてしまうのは誰も同じである。東京都では死者が出なかったが、10月15日午後6時の時点でNHKによれば全国で67人が死亡、1人心肺停止15人不明。47河川の66か所で堤防が決壊したという。2018年の西日本豪雨では263人が亡くなった。
万が一は起こる。災害から我々は学ばなければならない。