W杯本大会は通常なら6月上旬に開幕する。いまごろは最終メンバーが発表される時期になる。ハリルホジッチ解任を受け、西野ジャパンとして臨むことになった前回ロシアW杯で言えば、最終メンバーの発表は5月31日だった。しかし今回のカタール大会はご承知の通り、通常より半年近く遅い11月21日に開幕する。強化の日程には時間的な余裕がある。

 2014年ブラジルW杯に臨んだザックジャパンは、W杯イヤーにテストマッチを4試合しか組めずに終わった。そのうちの2試合は壮行試合後、開催国ブラジルに向けて日本を発った後に行われた、本番直前のスパーリングマッチだった。選手選考などを兼ねた準備試合はわずか2試合。慌ただしく本大会を迎えたのに対し、今回は来月6月に親善試合が4試合すでに組まれている。翌7月にも東アジア選手権が日本で開催される。

 W杯最終予選から本番まで、メンバーに大きな入れ替えがなかったこれまでとは、異なる展開が予想される。選手選考はまだまだ予断を許さない状況にある。

 混沌に拍車をかけているのは、国内組と欧州組に大別される選手の優劣、善し悪しが不鮮明なことにある。森保監督はこれまで欧州組にプライオリティを与えてきた。その選手選考は、本場欧州で活躍する選手は、Jリーグでプレーする選手より優れているとの概念に基づいていた。だがそれはどこまで真実だろうか。時間がある今回は、疑ってみるいい機会になる。

 欧州に渡ったことを機にサッカーが突如、上達するわけではないのだ。欧州でやって行けそうな選手は、Jリーグでプレーしている時からほぼ予想できる。選手はあるとき急に欧州へ渡る。現地の試合にさっそく出場し、活躍する姿をこれまで多々見てきた。欧州で活躍してから代表に招集するというスタンスでは、旬な選手を見落とす可能性がある。欧州組か国内組かではなく、欧州で通用しそうな選手か否かなのである。選手の潜在的なポテンシャルを読む力が、代表監督には問われている。

 国内組か欧州組かで線を引くことは、分かりやすい物差しではあるが、それに頼ったり、すがったりする姿勢は代表監督としていささか格好悪い。思考停止の状態に陥っていることを、世間に曝け出しているようなものなのだ。

 欧州組と一口で括ることもナンセンスだ。欧州組がプレーする先にはそれぞれレベル差がある。抑えておくべきは、以下に示した各国のリーグのレベルを示すランキングだ。

 1位)イングランド、2位)スペイン、3位)イタリア、4位)ドイツ、5位)フランス、6位)ポルトガル、7位)オランダ、8位)オーストリア、9位)スコットランド、10位)ロシア、11位)セルビア、12位)ウクライナ、13位)ベルギー、14位)スイス……

 日本のJリーグを欧州に組み込めば、この中のどのあたりにランクされるか。Jリーグの世界的なレベルを考察することは、FIFAランクなどで、日本代表のレベルを考察すること以上に興味深いものになる。

 6位ポルトガル、7位のオランダを凌駕することは絶対にないが、10位台前半には滑り込めるのではないかとは、筆者の見解だ。しかし当然、同じリーグでも上位と下位とでは、レベルに大きな違いがある。2部の扱いをどうするかという問題もある。田中碧(デュッセルドルフ)、板倉滉(シャルケ04)、植田直通(ニーム)、柴崎岳(レガネス)がプレーするドイツ、フランス、スペイン各国リーグの2部を加えると、比較はさらに難題になる。

 一方で、チャンピオンズリーグ(CL)に出場したか否か、ヨーロッパリーグ(EL)に出場したか否かは、頼りになる物差しだ。CLは言うならば欧州1部で、ELは2部だ。UEFAもここでの成績を各種ランキングのベースにしている。