人の評価が気になって仕方がない人へ、3つの対策をご紹介します(写真:mits / PIXTA)

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未就学の子どもが2人います。保育園に行っていますが、担任の先生とのやりとりがつらいです。帰り時が一番苦痛で、子どもが先生に挨拶しないときに言わせるべきか、それとも私が先生に挨拶して帰るべきかと気を使って疲れてしまいます。また、面談では親の評価をされそうで、先生と話すのが苦手でたまりません。楽しそうに先生と話をするママたちを見ては、どうして自分は……と落ち込みます。

(仮名:小山さん)

【回答】筆者も過去悩んでいました

とても共感できる相談内容です。というのも筆者もかつて同じタイプだったからです。人と対面すると「この発言をしたら自分はどう思われるのだろうか?」「自分はどういう印象なのだろうか?」「気まずい雰囲気になってしまったらどうしよう」と以前はいつも思っていました。

人に相談すると「そんなの気にしなくていいんじゃない」とよく言われ、「それができれば相談などしない」と思ったものです。


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気にしなくていいと言われて、ますます気にすることもよくあります。例えば、「そんなに頑張らなくていいのよ」と言われても、頑張らない状態をイメージできず、むしろ頑張るイメージが出てきてしまうような感じです。フランスの心理学者、エミール・クーエの「努力逆転の法則」というものがありますが、努力すればするほど、逆の結果が生まれたりするのです。

とはいえ、今のままでは辛い状態が続いてしまいます。子どもが小学校に入っても、中学校に入っても続く可能性があります。

そこで小山さんには次の3つについてご紹介します。これまで小山さんと似たような状況にある方に伝え、実践してもらった結果、比較的効果が高かった3つの方法です。

(1)客観的になるために実態を知る
(2)マルチタスク型、シングルタスク型の2つのタイプを知る
(3)外見を観察する

(1)実態を知る

これは、自分が想像していたこととは異なる実態を認識するということです。ある保育士さんから次のようなコメントをもらいました。

「保育士にも様々なタイプの先生がいますが、『この先生に子どもを預けて大丈夫かな』とか『帰りの受け渡しはあの先生がよかったと思われていないか』となど、自分も保護者からの評価を気にしてしまいます」

小山さんの保育士版です。つまり、保護者が先生にどう思われるか気にする一方で、先生も保護者にどう思われるかと気にしているという状態です。筆者はこれを“一人コント”と名付けています。

一人で問題を作って、一人で心配して…

一人で問題を作って、一人で心配して、一人でやきもきして、一人で「私なにやってんだろ」とツッコミ入れて落ち込んで。でも相手は何も気にしていないということも少なくありません。この状態に気づくと、ちょっと笑えて来ます。笑ったときが“一人コント”が終わるときですが、実態を知られなければ、引いて客観視することも、笑うこともできません。

実態を知るためには、コミュニティを利用する方法があります。筆者は、ママコミュニティをいくつか主宰していますが、そこで出てきた質問に対して、「同じような経験している人いたらコメントください」と伝えると、たくさんの声が集まってきます。そのコメントをみて、質問された方は、自分と同じ人が実は世の中にたくさんいるということで安心します。“一人コント”を避けるためには、「実態を知る」ことが効果的なのです。

コミュニティの場というと、保育園、幼稚園などママ友が集まる場がありますが、そこでの人間関係には得意不得意が当然あります。安心できるどころか、人と比較して不安になることもあるでしょう。ストレスを溜めないためにも参加するコミュニティは、意識して選択することも大事かもしれません。

(2)マルチタスク型、シングルタスク型の2つのタイプを知る

筆者は、人を大きくマルチタスク型、シングルタスク型と名付けタイプ分けしています。親子関係、職場関係など人間関係が良好でないと思うとき、この2つのタイプに区分してみることで、今の自分を肯定できることがあります。

マルチタスク型とは、その名の通り何でも併行して複数行うことができるタイプです。裏を返すと、周囲のことが気になり、ひとつのことに集中しにくいタイプでもあります。このタイプは「こうあるべき」と思う理想の姿、秩序、形式を重んじます。「こうしたほうがいい」という損得の価値観を優先して行動、判断する傾向にあります。

一方のシングルタスク型は、一点集中型とも言い、集中力が直線的です。好き嫌いの価値観を優先して行動、判断する傾向にあります。秩序や損得を無視するわけではありませんが、自分の意志を強く重視します。

変えるというより”活かす”

この2つに区分けされたタイプで考えてみると、小山さんはマルチタスク型ではいかと思われます。様々なことを気にしてよりよくふるまおうとされていることが感じられるためです。

これらのタイプはパーソナリティそのものであるため、変えるというよりは活かすことを考えてみるとラクになります。

例えば、マルチタスク型は秩序を重んじるため、「○○のときは△△する」というようにルール化してみると行動しやすくなります。具体的に保育園からの帰り際でいくと、「子どもが先生に挨拶をしない時は私が笑顔で先生に挨拶する。子どもが挨拶したときは、私は会釈だけにする」と自分で決め事を作ってしまうのです。するとあれこれ迷わずに日々穏やかに過ごしやすくなります(マルチタスク/シングルタスクについてはこちらの記事もご参照ください)。

(3)外見を観察する

この方法は、「気にしてしまう」という特性を活用するという“逆転発想”の方法です。

これまで「人にどう思われているか、どのように評価されているか、相手に失礼ではないか」と自分の心の内面に意識をフォーカスしてきたかと思います。その意識の方向を、「相手の外見を観察する」ことに転換していきます。つまり気にする対象を変えてしまうということです。

例えば先生の話し方や、ほかのママに目を向けてみる

例えば、先生の外見に焦点を当てます。すると話し方に特徴があることがわかったり、服装や髪型など先生の特徴がわかったりします。そのように相手の外見を観察している間は、自分の心に焦点は当たりにくいため、結果として、不安感が和らいでいくという仕組みです。

また、先生と楽しそうに話をしているママはどのようなタイプの人か、どのような特徴があるのかと外観していきます。観察、分析するイメージです。すると、「私はできないと落ち込む」ことは今よりは少なくなるのではないかと思います。

他にも様々な方法があると思いますが、上記の3つのいずれか一つを、まずは試してみてください。これを機会を通じて、少しでも心が軽くなるヒントにしてもらえれば嬉しいです。

(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)