日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年3月の特集は、『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』。今月は4週に渡り、2022年2月に発売されたライヴアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』収録曲を全曲紹介。1988年以来、中島みゆきのプロデューサー、アレンジャー、音楽監督を務める瀬尾一三をゲストに送る。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのは中島みゆきさんの「一期一会」。オリジナルは2007年のアルバム『I Love You,答えてくれ』の中の曲です。先月発売になったライヴアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』からお聴きいただいております。今週と来週の前テーマはこの曲です。

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一期一会 / 中島みゆき

2022年1月から6月まで予定されていたみゆきさんのラスト・ツアー「結果オーライ」は24本のスケジュールのうち、8本を終えたところで中止になりました。2月に発売になったこのライヴアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』はその記録です。日本の音楽シーンを支えてきた不世出のシンガーソングライターの”最後のコンサート”ではなくて、”最後の旅”。このライヴアルバムはそれにふさわしい、二度とない選曲のアルバムになっております。今月はアルバムの全曲を1988年以来のパートナー、音楽監督、プロデューサー、アレンジャー、瀬尾一三さんをお迎えして、たどってみようと思っております。瀬尾さんの登場は2019年から4年連続通算5回目であります。こんばんは。

瀬尾一三:こんばんは。

田家:実はこのアルバムは出ないんじゃないかと思っていたんです。

瀬尾:当初は発売する予定ではなかったです。中島さん含めて誰もこの音源があるとは思ってなかった。誰にも言わずに録っていたんです(笑)。

田家:あ、瀬尾さんが言わなかったんだ。

瀬尾:だから存在を誰も知らなかった。

田家:知らなかったらライヴアルバム自体の発想自体生まれてきませんもんね。

瀬尾:「実は僕がちゃんとマルチで録っているんだよ」と言って、それからじゃあ、それでどうにかなりますかねという話でスタートしたんです。

田家:「実は録っているんです」というのはツアーが終わってからおっしゃったんですか?

瀬尾:中止になって、2020年12月に出たベスト『ここにいるよ』を考えて選曲をしていて、中島さんと話しているときに、実は録ってたんだよっていうのを言って、本人も「は? 嘘!」 みたいになって、音源は全部あるよって。僕は始めから、リハから録っているんでって。

田家:そのときに初めておっしゃった!

瀬尾:はい。「会場のPAで出てくるのを録っただけでしょ」って言うんだけど、「いいえちゃんとマルチで録ってますよ」って言ったら、「はー」という感じでそこは終わったんです。何しろ『ここにいるよ』を先に出さなきゃだめだったので。今度は僕がじわじわとスタッフにも「あるよ」という話をして、だんだん掘を埋めていったんです。まず、最初に本人に少し言って情報を流して、それからスタッフ側の方、レコード会社側の方にも言って、みんなで聴いてみようとなったときにラフミックスを作って聴かせました。「こういう感じだけど、ちゃんとミックスして製品にすることはできるよ」と。

田家:瀬尾さんの隠し録りから始まった(笑)。

瀬尾:隠し録りでもなかったんですね。いろいろと理由はあるんですけども、その理由はみなさまに言ってもあまりよく分からないことなので。

一期一会 / 中島みゆき

田家:なぜリハーサルから録っていたのか、そしてなぜそれを言わなかったのかはこの後追々お訊きしていこうと思うのですが、ライヴの1曲目がこの「一期一会」でありました。イントロいいですねー。

瀬尾:ライヴの「結果オーライ」をやると決めたときから、この曲は決まっていたので。

田家:この曲で始めたいと。

瀬尾:所謂、ツアーとしてみなさんとお会いするのも一期一会ということで、スタートの曲は決まっていました。「結果オーライ」ツアーは2019年には決まっていたこと。当然2018年の終わりには決まってないと、会場も押さえられませんからね。僕だけにはツアータイトルも教えてくれて、2018年の暮れには知ってました。

田家:そのときには「一期一会」が1曲目にあったんだ。ライヴ用のアレンジということで、ライヴのためにこうしなければいけないみたいなところもあっったんですか?

瀬尾:まあまあ、それは臨機応変で(笑)。

田家:イントロの長さもちゃんとライヴのオープニングということで。

瀬尾:そうですね。みなさんがコンサートの始まりを感じてくれるようにと、本人が出てきて一息ついて歌えるぐらいの長さにしなきゃダメなので。

田家:その長さに関しては「夜会」でも散々おやりになっているんでしょうし。

瀬尾:本当にそれで随分叩き上げられましたね。「夜会」も含めて。

田家:初日は新宿文化センターで始まったときは、どんなふうに感じていらっしゃいました?

瀬尾:ツアー初日だったので、どちらかと言うと上手くいってくれと思うことしかなくて。まだゲネプロも1回ぐらいしかやっていなかったので、ドキドキ感の方がすごく強かった。本人、ミュージシャン、舞台装置含め、みんなミスしないようにということばかりをずっと考えていました。お客さんがどんな反応なのか、そこまで自分の中では全く余裕がなくて。久々に焦った感じがしてましたけどね。

田家: 2018年にラストツアーというのがみゆきさんの口から出てきたときにはどう思われたんですか?

瀬尾:彼女はその頃から主要都市中心に回ってましたけれども、移動が多かった。本人的に体力的なこともあるし、移動って結構大変なんですよ。泊まっているところがホテルだと、全部荷物を持っていかなければいけない。特に中島さんは荷物が多くて、大変なので(笑)。

田家:引っ越ししてるみたいな(笑)。

瀬尾:ほとんど引っ越しに近い。彼女は人の手を借りないので、セットしたり片したりするのは全部自分でやるので、そういうのにも疲れてきますよね。だから、これでラスト・ツアーというのは、来るものが来たんだなと思いましたけどね。

田家:やっぱりいつかそういうときが来るだろうと思っていたんですね。選曲もある程度あったんですか?

瀬尾:選曲は2019年に入ってからです。リハーサルが秋口の終わりぐらいから始まったので、僕は夏ぐらいからアレンジをし始めないとダメで、その前に2人で会って曲を詰めていきました。

田家:そのときから実際に歌われた21曲だったんですか?

瀬尾:彼女の中での曲が出てきたのとこちら側からの意見ですけども、まだ自分で歌っていないので、自分の中のストーリーとして曲順を作ったとしても、それを実際に歌ってみたときに途中で果ててしまったりするかもしれない。それは僕も考えながら、「こことここはきついんじゃないの?」と話したりして、詰めていきます。

田家:そのときにキャリアの集大成なんだということは思われてました?

瀬尾:あくまで彼女はラスト・ツアーということは考えていたので、なるべくみなさんに曲目を多く聴いてほしい気持ちがありました。1988年から彼女と一緒に仕事をし始めたんですけど、その前のヒット曲も入れたいということで、それも含めて選曲しました。

田家:関わる以前の曲は、瀬尾さんはステージでおやりになっていないでしょう。

瀬尾:そうですね。彼女からのリクエストで僕が関与してなかった曲は「オリジナル通りにしてくれ」、「変えないでくれ」と言われました。「イントロとか絶対変えないで、音質も似させてくれ」って言われていて大変でしたね。亡くなったキーボードの小林信吾と相談して、「この音はどうだろう」とかシンセで音を探してもらって。それで「これでどうだ! そっくりだろう」と思いながら昔のオリジナル通りにやってみました。

田家:まさかこの曲がこの順番でという例がいろいろあったのですが、その最たるものが次の2曲であります。「一期一会」で始まって、ツアーの趣旨と「ラスト・コンサートじゃないのよ、ラスト・ツアーなのよ」という話があって、2曲目と3曲目に入ったわけですね。「アザミ嬢のララバイ」と「悪女」続けてどうぞ。ステージでも続けていました。

アザミ嬢のララバイ / 中島みゆき
悪女 / 中島みゆき

田家:信吾さんと一緒に探したのは今のキーボードの音ですか?

瀬尾:オリジナルの音を何度も聴いて、「これでもないな、こうかな、ちょっと違うね」とかいろいろと探してもらって、ほとんどオリジナルに近く再現できたと思います。

田家:かなり機材が違っているものなのでしょう?

瀬尾:そうですね。オリジナルの頃はシンセが出たてぐらいだし、あと生楽器でやっているものをわざとシンセでやったりしていたので。

田家:「アザミ嬢のララバイ」が1975年で、「悪女」が1981年。この2曲をくっつけること自体が最初で最後なんでしょうけど。

瀬尾:そうですね。本当は1曲ずつ全部完成させて、1曲1曲にしたかったんでしょうけども時間が延びちゃうんですね。この状況を知らない方は編集でぶち切って繋げたと思っている方もいらっしゃるんです。

田家:とんでもないですね(笑)。

瀬尾:それぐらいスムーズに流れているということなんですけども、こちらとしてはものすごい練習するんですよ。テンポも違うし、内容も違うわけじゃないですか。それは「夜会」でやっていたので、ミュージシャンのみなさんも慣れているから、そういうことができる。この場で言いますけどあれはメドレーです。生演奏でやっています(笑)。

田家:瀬尾さんが関わってからもそうなんでしょうけども、「アザミ嬢のララバイ」がツアーの正式な一曲になったことないんじゃないですか?

瀬尾:前のツアーで「ララバイSINGER」と繋げたことはあります。「ララバイSINGER」と「アザミ嬢のララバイ」を繋げて。だからイントロが大変でした(笑)。

田家:1988年以前のアルバムに対しては、どういう接し方なんですか?

瀬尾:過去いろいろな人たちが携わってきたものなので、基本的にちゃんと尊重した上でいじらないようにします。変にいじって僕が壊したって言われるのも嫌だから(笑)オリジナル通りにやります。今までも何曲かツアーであったと思うんですけど、1番2番の間に変わっていくことはやったことありますけどイントロは変えません(笑)。

田家:「アザミ嬢のララバイ」と「悪女」が終わって、ツアーを始めた頃のMCがみゆきさんの中で語られたりして、次の曲にいくわけですけど。ツアーを始めるか始めないかの頃のみゆきさんは、瀬尾さんの意識の中にはほとんどなかったんですよね。

瀬尾:その頃僕は吉田拓郎さんをやっていましたから、「Live 73」から「つま恋」の75年をやっていましたので他の人を聴く余裕なんかないです。本当に何もなかったです、ごめんなさい(笑)。

田家:彼女が初期の話、ツアーを始めた頃の話をして次の曲にいくわけですね。

浅い眠り / 中島みゆき

田家:今回このアルバムを全曲ご紹介するにあたって、どうしようかと思ったのはメドレーなんです。さっきの「アザミ嬢のララバイ」と「悪女」は2曲目3曲目のメドレーで。この後、4、5、6がほぼメドレーになっているでしょう。「浅い眠り」の後に「糸」と「ローリング」。この3曲が並ぶか! という。これをコンサートの雰囲気通りにお聴きいただくか。そうすると、ラジオ番組として音楽流しっぱなしで終わっちゃうかなと思って。

瀬尾:じゃあ、なんかしゃべりましょうか(笑)。

田家:「浅い眠り」は拍手が入っていたのでここで切って、また「糸」と「ローリング」はメドレーでというふうにしております。でも、3曲続いていたんですもんね。

瀬尾:はい。拍手で「浅い眠り」は終わってますけど、MCも何もなかったので。

田家:メドレーじゃないですけど、ほとんど曲繋ぎになっていた。

瀬尾:MCがなくて、拍手が終わり次第「糸」が始まってましたからね。

田家:絶妙なタイミングですね。

瀬尾:有無を言わさずというか、なんでこれが並ぶんだみたいにお客さんも呆気にとられたと思いますけども(笑)。このへんが中島さんの妙というか、波、山谷の持っていき方みたいなものとか、意表を突くような感じ。だからと言って、違和感はないわけです。

田家:全然ないですよ。「浅い眠り」もこの後の「糸」や「ローリング」と全然違う曲想ですし。それも瀬尾さんがアレンジされて、こうなっているんでしょうし。

瀬尾:もともとのアレンジそのままですけどね。

田家:1992年のアルバムですからね。

瀬尾:ただ短くしたってだけです。みなさんご存知の曲は申し訳ないけど、会場の時間のこともあるので、1曲でも多く加えたくてカットさせていただいたりしておました。

田家:短くはなっているんですけども、ちゃんと曲を聴いた感じがしました。

瀬尾:そうですね。そういうふうに思っていただけるとよかったんですけどもね。大おおにしてみなさんあまり不思議がられていないと思いますよ。

田家:気がつくと、「あれ? ちょっと短くない?」、「あの歌詞がないな」ってなる程度で。

瀬尾:なるべくスムーズに繋げるようにしてました。

田家:4曲目、5曲目、6曲目に先程の「浅い眠り」の後に「糸」と「ローリング」のメドレーが入るわけですが、「ローリング」は瀬尾さんが関わる前の曲ですよね?

瀬尾:そうですね。オリジナルは違います。僕のバージョンになって作り直したやつですね。

田家:1993年の『時代-Time goes around-』の中のバージョン。この「糸」と「ローリング」の流れはすごかったですねー。

瀬尾:普通は繋げませんよね。男女の機微みたいなものを歌って、その後に中年のヤサグレみたいな曲が出てくるという(笑)。所謂中間管理職ぐらいの人がものすごく「わー身にしみる」みたいな曲をなぜ男女の機微から繋ぐんだろうと。

田家:幸せに巡り合った歌から、まださまよってますという歌ですからね。

瀬尾:まあ、これが人生ですよ。

田家:ですよね。そういう並びを見たとき、イメージは浮かぶんですか?

瀬尾:こういう組み合わせが大好きなんで燃えますよ。間髪入れずに繋げているので、これも編集で繋げたとか言われているんですけども、ちゃんと演奏で繋がっています。

田家:お聴きいただきましょうかね(笑)。これは編集ではありません。ライヴの5曲目「糸」、そして6曲目「ローリング」です。

糸 / 中島みゆき
ローリング / 中島みゆき

田家:身も蓋もないことを恥ずかしげもなくお訊きしてしまいますが、この2曲で1番気を使われたことと、1番伝えたかったことはどんなことですか?

瀬尾:「糸」は普遍的な男女の曲で、ある側から言えば女歌じゃないですか。「ローリング」はどちらかと言ったら男歌ですよね。だから、女歌と男歌の対比ができたらいいなというのを1番に考えました。

田家:とてもデリケートで柔らかい大きなうねりみたいなものと、後半の無念さを抱え込んだような表現。この対比はあたかも組曲のような2曲に思ったりしましたね。

瀬尾:上手くそういうふうに感じてくださるのが1番いいと思います。

田家:「糸」に当時関われたときに思ったことはどんなことだったんですか?

瀬尾:『EAST ASIA』の中の1曲だったんです。20年も経って、みなさんからもてはやされるとも思わないから、想像もできないですよね。はじめは赤い糸の伝説とか、そんな感じで録って。はなから思っていたのはあまりにも生々しく生きている女性が歌うと、ちょっとお説教っぽいというか偉そうに聴こえると思った。中島さんを天上人にして天女が歌っている感じにするために、ちょっと雅な感じに作っているんです。2番から人間として歌う。最後はまた大きな天上から見ている感じに持っていこうと思って、オリジナルのときは作っていました。今回もそれの再現ですね。

田家:どんどん深みが増して、風格も増してドラマチックになりましたね。

瀬尾:中島さんもよく言ってたと思うんですけど、自分の手から離れてから育っていくもので、僕もアレンジして自分の中で思うんですけど年々熟成するんですよね。古酒になってくるので、なかなかいい味が出てるなって自分で最近思ったりしています。

田家:音楽って不思議なものだなって感じますね。瀬尾さんが今お話をしたことが名曲「糸」の編曲の全貌を語った動画サービスで公開されておりまして、「ほぼ日の学校」。ここではこういう話をされているんですか。

瀬尾:見てもらえば分かりますけども、そういうことを言いました。

田家:「ほぼ日の学校」は、谷川俊太郎さん、林真理子さん、三谷幸喜さん、笑福亭鶴瓶さんとか、いろいろな分野の方が講師として登場する学校。

瀬尾:「僕でいいんですかね」って聞いた(笑)。恐れ多くて、はじめは本当に迷って悩んだんですけども、向こうの方に上手く乗せられてやってしまいました。

田家:中島みゆきのレコーディングの秘密に迫りますという学校です。

瀬尾:いつもここでも迫ってますけどね(笑)。

田家:もう1つ、瀬尾さんの『音楽と契約した男』。2020年に出たこの本が重版に重版を重ねて、4刷が決まった。

瀬尾:ありがとうございます。なんかそうやって言うと、ものすごく売れているみたいですけど版が重なっただけで、ちょっとしか売れていない(笑)。出す数が少ないんで、これだとベストセラーっぽく聴こえますけどもそんなんじゃないです。

田家:でも4刷って、これだけ本がなかなか売れない時代で、素晴らしいことだなと思います。このライヴ、ラスト・ツアー「結果オーライ」はこれが5曲目、6曲目でありまして、ここでステージも空気が変わるわけですが、この先は来週ということで来週もよろしくおねがいします。ありがとうございました。

瀬尾:ありがとうございました!


ライブアルバム『中島みゆき2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』

田家:「J-POP LEGEND FORUM中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」」今週はパート1。先月発売になりました、2枚組ライヴアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』の全曲紹介。プロデューサー、音楽監督、瀬尾一三さんをゲストにお送りしております。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

冒頭でも話したのですが、このラスト・ツアーのライヴアルバムは出ないんじゃないかと思っていたんです。普通、ライヴツアーの収録ってスケジュールが半分以上過ぎてから行われるもので、今回のラスト・ツアーは3分の1で図らずも中止になってしまった。誰もその時点ではこのままなくなってしまうとは思っていませんでしたからね。でも収録されていたというのが、謎だった。NHKホールではそういう気配がちょっとあったなと思ったんですけど、収録しているという話は全然聞いてなかったので、いつの音源なんだろうと思ったのですが、瀬尾さんが録っていたんですね。みゆきさんも知らなかったということが、瀬尾一三さんという存在がどういう役割を果たしているか、全てを物語っております。
私事になるのですが、このツアーを見届けさせてもらえないだろうかということで、ヤマハの方にお伺いを立てて了解をもらって同行していたんですね。ツアーが終わるまでに主要スタッフの話を聞いて、みゆきさんにとってコンサートツアーがどういうものなのか最後にまとめるつもりだったのですが、ほとんど聞けないまま終わってしまったんです。自分の中ではあのツアーは一度幕を閉じてしまっていたのですが、こういうアルバムが出てあらためてツアーはこうだったと話ができる。それが今月の特集になっているわけですね。コンサートを観た人しか知らない。チケットを取れなかった人、持っていても見ることができなかった人はどんなツアーだったか、知る術がなかったのですが、このライヴアルバムが出ることで、それが幻ではなくなった。そんな1ヶ月でもあるということです。こういうツアーだったということを話せるのがうれしいと思いながら、来週も迎えたいと思います。

<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
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「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
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