男子バレー西田有志インタビュー 後編

(前編:「Vリーグは時代に逆行している」>>)

 3月18日、川合俊一氏が日本バレーボール協会の新会長に就任することが発表された。1984、88年の五輪代表メンバーで、現在は日本ビーチバレーボール連盟の会長なども務める一方、タレントとしても活躍する幅広い経歴から、どんな改革をするのか注目が集まっている。

 大きな変化がありそうな中で、西田有志が考えるVリーグや日本バレー界が目指すべき未来、そして西田自身がその声を上げる理由などを聞いた。


レギュラーシーズン最終戦を終えた、FC東京の選手たちと関係者 Photo by Hino Chizuru

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――コロナ禍以降は国際試合が中止になることが多いですが、その前の2019年のワールドカップは日本開催だったこともあって盛り上がりもすごかったですね。

「メダルには届きませんでしたが、28年ぶりに4位になったということもあって、本当に大きな声援を送っていただきました。どこの会場に行っても満席でしたしね。ただ、国内のリーグが、バレーに興味を持ってくれた人たちの"受け皿"になれていないのが歯がゆいです。

 今後、また以前のように日本で国際大会ができるようになる日が来ると思いますし、そのあとにバレーファンをより拡大させていくためにも、Vリーグをより魅力的なものにしていくことは急務だと思います。僕も個人でいろいろ動こうと思っています」

――「個人で動く」とは?

「SNSやYou Tubeチャンネルによるアピールですね。日本はもちろん、世界に対しても発信をしていきたい。例えば、僕のYou Tubeチャンネルは27万人以上(4月4日現在で27.3万人)の登録者がいて、海外の方も多いですから、そういう人たちに『日本のバレーはこんなことしてるんだ』といったことを認知してもらいたいです。

 そうしたら、『ここに投資したら期待できるんじゃないか』と思ってくれる人が出てくるかもしれません。アプローチの仕方はたくさんあるので、それを多くの選手や関係者が行なってほしいですが、その前例、空気も僕が作ってどんどん"巻き込んで"いきたいですね」

――世界に目を向けるという点では、タイなどでは日本バレーの人気が高く、アジア枠の選手がいるチームの試合を中心に、今シーズン途中から東アジア諸国でVリーグを放送していますね。

「タイや、フィリピンなど東南アジアでの人気は確かに高いですから、そちらに拡大できているのはいいことですね。さらに、国自体に資金力があるUAEなどに目を向けても面白いのかなと思います。ドバイなどは国内にバレーリーグもあるようですし。チームを持ちたいという企業、個人でもいいので、そういう関係者がVリーグを見に来るような仕組みも作りたいところです。

 外資の受け入れも考えないといけないと思っていますが、海外の知り合いや、経営者の方とお話をする際に、現在のVリーグに魅力を感じてくれている人はそこまで多くないと感じています。まだ"実業団のバレー"という枠を出られていない印象がありますね。プロ選手になったら海外でプレーする、というのも、目指しているプロ化の本質とは違うと思います。

 FC東京さんの活動休止も、結局は利益という点で難しくなったということだと思います。コロナ禍でお客さんがなかなか呼べない状況で、試合数を増やしたということも影響があったのかもしれません。でも、リーグを運用するには"体力"がいるでしょうから、そのために必要なものは受け入れていってほしいです」

――ここまでの西田選手の言葉から、強い危機感を抱いているのがわかります。

「バスケットボールのBリーグが盛り上がっていて、ハンドボールもプロリーグ構想が発表されました。バレー界も先を見ていろいろ動かないと、バレー界だけが置いていかれてしまうと思うんです。

 それは今回のFC東京さんの活動休止で強く感じました。僕がまだ18歳で内定選手だった時に試合をしたんですが、あの応援が一番好きなんです。サッカーチームのサポーターの方も来ているからか、みんなで声を出して歌うんですよね。その応援の方法だけが正解ではないですが、めちゃくちゃ盛り上がっていた。応援のいいお手本のひとつと思っていたし、仲がいい選手も多いですから、そんなチームがなくなってしまうことが本当に悲しいです。

 活動休止はとても大きな出来事だと思いますが、バレーファン以外で今回のニュースに関心を持ってくれた人はそこまで多くないと感じます。それが実情だと思いますし、それに対して具体的な動きができず、その決定を変えられなかった自分の力不足も感じた。だからより、『今動かなきゃ』という気持ちが強くなっています」

――現役の選手が、ここまで具体的に危機感を口にすることは珍しいと思います。

「ファンの方の中には、『選手だから、そこまで言わないほうがいいんじゃないか』と感じる方もいるでしょうね。反感を抱く方もいるかもしれませんが、このままではVリーグ、ひいては日本バレー界の未来が失われるかもしれないという現実を突きつけられているのに、目を背けることはできません。

 Vリーグで4シーズンをプレーして、イタリアに渡って違うバレー文化に触れた今だからこそ、『日本バレーも変わる時だ』と感じたんだと思います。結局は何を言っても変わらないかもしれないけど、誰かが言わなければ、行動しなければ何も起こらない。日本ではプロの選手が少ないので、Vリーグで選手会を作ることは難しいでしょう。それでもやはり、選手側から声を上げていく必要があると、僕は思っています」