裁判の中ではさまざまな資料が証拠として用いられますが、依頼人が弁護士に求めた法的助言の内容などは、犯罪目的ではない限り「弁護士・依頼者間の秘匿特権」に守られ、開示されることはありません。しかし、Googleがこの特権を不正に利用して多数のメールを隠していたとして、司法省と14の州の司法長官が連邦裁判所に文書開示を求める訴えを起こしました。

PLAINTIFFS’ MOTION TO SANCTION GOOGLE AND COMPEL DISCLOSURE OF DOCUMENTS UNJUSTIFIABLY CLAIMED BY GOOGLE AS ATTORNEY-CLIENT PRIVILEGED

(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.223205/gov.uscourts.dcd.223205.326.0.pdf

MEMORANDUM IN SUPPORT OF PLAINTIFFS’ MOTION TO SANCTION GOOGLE AND COMPEL DISCLOSURE OF DOCUMENTS UNJUSTIFIABLY CLAIMED BY GOOGLE AS ATTORNEY-CLIENT PRIVILEGED

(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.223205/gov.uscourts.dcd.223205.326.1.pdf

Google routinely hides emails from litigation by CCing attorneys, DOJ alleges | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2022/03/google-routinely-hides-emails-from-litigation-by-ccing-attorneys-doj-alleges/



訴状によると、Googleは約10年にわたって、機密性の高いやりとりを行うときはメールの宛先に社内弁護士を追加した上で、弁護士に助言を求める一言を添え、秘匿特権の対象になるよう訓練してきたとのこと。

訴状には、新入社員教育に用いられた資料が添えられており、「Communicate with care」と題して「弁護士をTOに入れること」「『弁護士/依頼人特権』をマークする」「弁護士への質問を入れる」の3項目が示されています。プレゼンが行われたとき、説明担当者は「あなたがセンシティブな問題を扱うことになったときは、メールでのコミュニケーションに気をつけることが大切です。このような状況下では、メールでのコミュニケーションに特権があることを確認するため、図のような手順を踏んでください」と説明し、法律的な助言が必要な場面かどうかについてはまったく言及がなかったそうです。



以下はそのメールの一例で、AlphabetとGoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏がYouTubeのCEOであるスーザン・ウォジスキ氏に送ったもの。冒頭に「弁護士/依頼人特権 機密事項 ケント、助言をください」との文言が入っていますが、内容は今後のプレスリリースの展開について相談するもので、法的助言が必要となるようなものではありません。名前が挙がっているケントとは、メール当時はGoogleの上級副社長兼法務統括責任者でのちに最高法務責任者となるケント・ウォーカー氏のことですが、ウォーカー氏はこの件について一切の助言を行いませんでした。



実際に、秘匿特権を主張しつつも弁護士が一切反応していないメールが多数存在しているため、原告は「Communicate with care」プログラムの影響で非公開扱いとなったメールの提出などを求めています。