初の5G対応 iPhone SEの通信機能をチェック 4x4MIMO非対応の影響は?(石野純也)

第3世代のiPhone SEが、18日に発売されます。ボディのデザインは第2世代と共通で、Touch IDにも対応していますが、中身は一新。チップセットにiPhone 13シリーズと同じ「A15 Bionic」を搭載しつつ、iPhone SEとしては初めて5Gに対応しました。そのiPhone SEの実機を、一足先に試すことができたので、特に通信周りをチェックしていきます。

5Gに対応したiPhone SEですが、スペックを見ると、iPhone 13とは少々異なる点があります。MIMOがそれです。iPhone 13に限らず、5G対応スマホは基本的に「4×4 MIMO」に対応していますが、iPhone SEは「2×2 MIMO」と記載されています。おそらくこれは、4Gモデルとして登場したiPhone 8のデザインを流用しているため。アンテナ実装などに限界があったものと思われます。

4つのアンテナを束ねて高速化するというのが4×4 MIMOの基本的な考え方ですが、2×2 MIMOだと同じ帯域幅で速度はその半分になります。キャリアアグリゲーション(CA)やデュアルコネクティビティ(DC)の組み合わせもあり、iPhone SEではiPhone 13ほどの速度が出ない可能性が考えられます。実際、ドコモではiPhone 13を4.2Gbps対応機種に挙げていますが、iPhone SEは理論値が1.25Gbpsにとどまるとしています。

▲スペックには、2×2 MIMOと記載されている。この影響を確かめてみた

では、2×2 MIMOの5Gでどの程度速度が出るのでしょうか。第3世代のiPhone SEとiPhone 13 Proに同じpovo 2.0の回線を入れて、さまざまな5Gエリアでスピードテストを行ってみました。povo 2.0を選んだのは24時間定額があるためですが、大元になるau回線は4Gからの転用でエリアが広いうえに、5G用に割り当てられたSub-6もそこそこの広さで展開しています。それらのエリアによる違いもチェックしてみました。

エリアマップを見つつ、まずは転用エリアでの計測結果をお届けします。エリアは山手線の高輪ゲートウェイエリア付近。周囲には新周波数帯でのエリアもありますが、ところどころ歯抜けになっているところを転用周波数でカバーしています。結果は以下のとおりですが、予想に反してiPhone SEの方がスピードが出てしまいました。iPhone SEが127Mbpsなのに対し、iPhone 13 Proが92Mbpsです。

▲左がSE、右が13 Pro。SEの方が127Mbpsと速度が速い

同駅構内ではiPhone 13 Proがわずかに速度は上回りましたが、iPhone SEが17.5Mbps、iPhone 13 Proが24.5Mbpsと、大差はない結果に。4Gからの転用エリアのためか、速度的にも「5Gスゲーー」と言えるような数値ではありません。この傾向は、高輪ゲートウェイから田町に向かう駅間でも同じで、iPhone SEが50.9Mbps、iPhone 13 Proが87Mbpsにとどまっています。

▲駅構内ではSEが17.5Mbps、13 Proが24.5Mbps

▲移動しながらもテストした。このときはSEが50.9Mbps、13 Proが87Mbps

このテストでは、高輪ゲートウェイから有楽町駅まで行ってみましたが、途中で途切れることなく5Gにつながりっぱなしだったのはさすがau。生活導線に沿ってエリア化をしているだけのことはあります。

それはさておき、2×2 MIMOのiPhone SEと4×4 MIMOのiPhone 13 Proでそこまで大きな差が出なかったのは、基地局側の対応状況によるところが大きいと言えるでしょう。4Gから転用した周波数帯の一部は、4×4 MIMOに非対応だからです。

転用エリアで使う分には、基地局側の2×2 MIMOに引っ張られてしまうことから、iPhone SEとiPhone 13 Proの差があまり出なかったというわけです。iPhone SEのユーザー層を考えると、「2×2 MIMOだから速度が出ないのでは……」と心配する向きはかなり少ないものと思われますが、ひとまず安心の結果になりました。

一方で、5G用に割り当てられた新周波数帯をつかんだ場合、差は大きくなりました。理論値ほどの極端な違いにはなりませんでしたが、iPhone 13 Proの方が2倍以上スピードが出ることも。以下は、新橋駅構内での結果です。新橋駅構内では、iPhone 13 Proが843Mbpsと1Gbpsに近い速度をたたき出しました。これに対し、第3世代のiPhone SEは365Mbps。300Mbpsオーバーで十分速いのですが、iPhone 13 Proの結果を知ってしまうと、少々物足りなく感じます。

▲新橋駅では、13 Proの方が2倍以上速く、スペック通りの結果に。左がSE、右が13 Pro

 

有楽町の駅前も、新周波数帯でエリアができていましたが、ここでも速度差が出ていました。iPhone SEが69.1Mbpsだったのに対し、iPhone 13 Proが184Mbpsで、MIMOの違いがきちんと速度になって表れています。現状では転用エリアの方が面積としては広いため、あまり気になる違いではないかもしれませんが、スループットを出したい場所では差が出ることを覚えておいてもいいでしょう。

▲上記ほどの速度は出ていないが、新周波数帯ではきちんと差が出る。左がSE、右が13 Pro

最後に試したのは、KDDIが初の5G SAを導入した渋谷区の「Abema Towers」付近。両機種とも、現状では5G SAは利用できませんが、初のSAエリアということでKDDI側も気合を入れてエリアを作っている可能性があります。ここでの両機種の速度は次の通り。iPhone SEが619Mbpsだったのに対し、iPhone 13 Proは1083Mbpsと、今回のテストで初めて1Gbpsを超えました。ここに関しては、MIMOの差が分かりやすく出た格好です。

▲新周波数帯の場合、通信環境がよければよいほど、速度の差分は大きくなる。左がSE、右がiPhone 13 Pro

ちなみに、通信関連では、iPhone SEはデュアルeSIMに非対応なのもiPhone 13シリーズとの差分です。eSIM自体には対応しているため、物理SIMとeSIMでのデュアルSIMにはなりますが、eSIMとeSIMの組み合わせができない点には注意が必要です。

一方で、FaceTime HDなど、5G接続時に動画などを高画質化する機能には対応しています。トップスピードは上位モデルに及びませんが、価格も安いため、5Gの世界を体験してみる入門機としてはアリなのではないでしょうか。4GのiPhoneを使っていて、何となく遅いと感じている人には、特におすすめできそうです。

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