市場調査会社、インテージのデータから中古車の購入者と市場を明らかにする(写真:yamahide / PIXTA)

フルモデルチェンジや新型車の登場、新車の販売状況といった新車に関する情報はよく目にするが、中古車の情報はどうだろうか。

中古車の販売は、メーカー直営店から小規模な販売業者まで販売チャネルが広いため、市場全体の把握がしづらい。そのため、データとともに論じられているものはあまり多くないように思える。

市場調査会社のインテージが毎月約70万人から回答を集める自動車に関する調査「Car-kit®」では、新車購入者だけでなく中古車購入者の情報も取得している。そこで、今回は中古車について「どのような人々が」「どういった車種を」「どんな理由や目的で」「どうやって購入しているのか」をデータとともに確認していこう。

<分析対象数>
中古車購入者:2015年1月契約者〜2021年12月契約者、146,061名
新車購入者:2015年1月契約者〜2021年12月契約者、221,131名

自動車市場の4割が中古車

まずは、新車と中古車の販売割合を見てみよう。Car-kit®は毎月調査を行っているため、月ごとにデータを見ることができるが、月単位で見るとデータが細かすぎるため、四半期ごとにまとめたデータで見ていく。結果は、概ね「新車6:中古車4」だった。

注目すべきは、2020年4〜6月契約者の中古車の多さである。


これには新型コロナウイルスが影響している。日本で最初の感染者は、2020年1月に確認された。その後、2020年4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に1回目の緊急事態宣言が発令され、4月16日に対象は全国に拡大されている。

この時期は新車ディーラー各社も営業が制限されており、新車の購入が平常時よりもしづらい状況であった。また、製造や流通においても大きく影響を受けていた。そのため現車がすでにあり、契約さえ完了すれば乗り出しまでの待ち時間が短い中古車が、すぐに車を必要とする人々に普段以上に求められたと考えられる。

その後、「with コロナ」としての生活様式の見直し、複数回にわたる緊急事態宣言の発令と解除の中で、新車/中古車比率はコロナ前である2019年とほぼ変わらない6:4に落ち着いてきている。

しかし、2021年後半からは半導体不足や国際物流の遅延といった理由から、新車の納期が延びている。2〜3カ月はざらで、一部の車種やグレードでは半年を超える場合も少なくないという。急ぎで車を必要とする人を中心に、中古車を選択する人々が再び増加するかもしれない。

中古車の販売価格は、中古車情報サイトなどを見れば知ることができるが、実際の購入金額がどのように推移しているかの全体像はなかなか掴めない。そこで、「値引き前車両価格+オプション価格」を購入年別にまとめたデータを出してみた。

結果は、興味深い内容となっている。購入価格は、明確に右肩上がりだ。


2021年の中古車の購入価格(平均値)は144万円で、5年前の2016年(121万円)から20%程度も上昇している。手の届きやすい価格で車を購入したいがために中古車を選択している人々がいることを考えると、これだけの金額上昇は家計に影響を及ぼしているだろう。

続いて購入者の「性別・年代構成」を見ていく。男女比では、新車=男性59%:女性41%に対し、中古車=男性63%:女性37%と、中古車は男性がやや多い。

中古車購入者の年齢や年収は?

年代構成を見てみると、30代以下の占める割合は新車=29%、中古車=38%、40代以下では新車=48%、中古車=58%と中古車のほうが若い購入者が多い。


「ほしい車がすでに終売となっており中古車しかないから」「旧車が好きだから」といった理由で中古車を買う人ももちろんいるが、中古車購入者の大部分は支払い価格の面で中古車を選択しているだろう。そのため、まだ余剰資金の十分ではない20〜30代の割合が多いと考えられる。

「世帯年収」についても見てみよう。


400万円未満の割合は、新車=21%、中古車=30%。500万円未満は新車=33%、中古車=45%、600万円未満まで広げると、新車=46%、中古車=58%となっており、先程の年代構成とも連動する形で、中古車購入者のほうが世帯年収は低めだ。

「支払い方法」にも違いはあるのだろうか。

新車購入時には「残クレ=残価設定型クレジット」という、月々の支払い額を抑えられるクレジットの形態がある一方で、中古車の場合は購入店舗によってはそういった支払い方法に対応していないこともある。そのためか、現金一括の割合が約7割と高かった。


中古車では購入者にしめる20〜30代の割合が多く、手持ちの現金で支払える範囲の車両を選択しているのだろう。

購入車両は、どのように使われているのだろうか。「主運転者」のデータから確認してみると、中古車のほうが「自分だけが運転する」の割合が高くなっている。


ファミリーユースというよりは、個人で使用するパーソナルユースを目的に購入している人が多いようだ。結婚前の若年層が多いことに加え、セカンドカーとして中古車を購入する人も少なくないだろう。

では、どのような用途に使っているのだろうか。「購入時の想定利用用途」を見てみると、中古車では「通勤・通学」「仕事」のスコアが高く、「ドライブ」「旅行」「レジャー」といったものは低い。主に、日常の足として使われていることが読み取れる。


新車NO.1は「N-BOX」だが中古車は?

最後に、中古車で売れ筋の車種を確認してみよう。直近3年間を半年ごとに集計したところ、次のような結果がえられた。


2019年1〜6月契約者を除き、TOP3は軽自動車が独占している。ランキングの顔ぶれはあまり変わらず、スズキ「ワゴンR」、ダイハツ「タント」、ホンダ「N-BOX」、ダイハツ「ムーヴ」、トヨタ「アクア」がほぼトップ5に入ってきており、以降ホンダ「フィット」、トヨタ「プリウス」、日産「セレナ」、日産「ノート」、トヨタ「ヴォクシー」といった登録車が続く。


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先程、中古車の購入価格の推移の結果を示したとおり、購入価格は毎年上昇している。一方で車種ランキングに大きな変動はない。これには(1)需給のバランス、(2)高年式の車両の割合の変化、(3)安全装備の充実などにより新車の車両価格が上昇し、それに応じて中古車価格も上昇したなど多くの理由が考えられる。

こうして、さまざまな観点から中古車市場の概況を見てみると、中古車に求められるものや新車市場との違いが浮き彫りになってくる。詳細に踏み込めばまだまだ分析の余地はあるが、今回は1回目ということで全体を示してみた。本テーマについては、また別の機会に掘り下げていこうと思う。

(三浦 太郎 : インテージ シニア・リサーチャー)