UoC UNIVERSITY of CREATIVITY 共同編集長の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするInterFMの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。

3月2日(水)の放送では、実業家でありアーティストの遠山正道さんが登場。「Soup Stock Tokyo」を始めた経緯を振り返り、1月25日(火)に発売したエッセイ本について語ってくれました。

(左から)Hide、遠山正道さん、Misa


株式会社スマイルズの代表を務め、「Soup Stock Tokyo」「Pass the Baton」「giraffe」 など、数多くの事業を運営。自らもアーティストとして活動し、「Art Sticker」や「The Chain Museum」など、新たなアートプラットフォームを展開しています。

◆実業家としてさまざまな事業を展開

Hide:遠山さんは「Soup Stock Tokyo」をされていることは有名だと思うんですけども、他にもいろんなことをされているじゃないですか。まずは事業家としての一面について、お話を伺いたいです。

遠山:私は1985年に三菱商事株式会社に入ったサラリーマンなんだけど、1996年に絵の個展をやったんですね。それがきっかけで、1999年に「Soup Stock Tokyo」の1号店ができました。そのあとにネクタイブランドの「giraffe」や「Pass the Baton」、海苔弁専門店の「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」などを、スマイズの会社でやっています。そして、スマイルズが作家として芸術祭に作品を出すっていうのもスタートしましたね。

Hide:「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」ですね。

遠山:そうですね。その辺ぐらいから「The Chain Museum」なる会社をクリエイター集団PARTYと一緒に作りました。そこから「Art Sticker」をやったりとか、「森岡書店」「れもんらいふ」とかにも出資や関与をさせてもらっています。

近藤:「イミグレ」も遠山さんが立ち上げたプロジェクトですよね?

遠山:そうですね。それが2年前ぐらいに有限会社「新種のimmigrations(略称:イミグレ)」というコミュニティを立ち上げました。

◆「Soup Stock Tokyo」立ち上げで重視したのは“共感”

Misa:私、「Soup Stock Tokyo」が大好きです。これまで、女の人が1人で入れるお店ってなかったんですよ。「Soup Stock Tokyo」に行くと、女性の方がみんな嬉しそうに食事をしているんですよね。

遠山:実は、女性1人で堂々とご飯を食べれる場所ってなかなかないんだよね。

Misa:そうなんですよ。女の人が1人で入れるお店が少ないってことに気付かれていたのか、あとからそうなっていったんですか?

遠山:あるとき、「女性が1人でスープをすすってホッとしているって姿」がなんとなく思い浮かんで、企画書を書いたんですよ。そこには「一言で言うと共感」って書いていました。共感の軸になるものが“スープ”だなっていう風に思ったんだよね。

Misa:なるほど。

遠山:企画書には「スープを売っているがスープ屋ではない」なんてことも書いてありました。うちの会社って、「商品」っていう言語がほぼないんですね。現場でも商品って言い方はしないですね。

Hide:なんて言うんですか?

遠山:スープ(笑)。

Hide:ああ(笑)! じゃあ、「giraffe」だったらネクタイ?

遠山:そうだね。とは言えね、単価とかは出てくる。やっぱり数字っていうのは誰にでも共通の記号なので、どうしても数字に寄っていくんだよね。

Hide:ビジネスでやる以上は仕方がないですよね(笑)。

遠山:うん(笑)。

Hide:「儲かりそうだからこれをやろう」みたいな発想から始まっていない感じがどれもあるんですよ。「なんか面白そうだからやってみよう」みたいな、そういうところから始まっているなっていう風に見えるんですよね。

遠山:まさにそうです。スープもネクタイものり弁も、“元々あるもの”じゃない? あるんだけど、「我々がやるとこうなった」みたいな感じです。そういった“自分たちらしさ”をどういう風に出せるかって考えるのが好きですし、面白いです。

◆アートとビジネスには似ている側面がある?

Hide:遠山さんは個人としてもコレクターとしても、ビジネスの上でもアートの事業を始めていますよね。ビジネス界でアートにこれだけ通じていて、実践もされている経営者って本当に貴重だなって思います。ご自身でも絵を描かれていますけども、アートに感じている一番の魅力とか、なぜ今アートと向き合うのかっていうところを聞かせてもらえますか?

遠山:やっぱり、初めて個展をやったときの体験が自分にとっては大きかったです。サラリーマンで、与えられたことをやる団体競技みたいななかで、個人競技みたいなことで評価を受けた。それで味をしめたところがあるんだよね(笑)。

(個展は)純粋に楽しかったんだけど、噛み砕いて考えると「自分たちで発意して、自分たちで作ったものを世の中に提案する」っていうのは、世の中にありそうであんまりないなって感じたんですよ。ソニーだってホンダだって、ビジネスはそういうところから始まったよね。

Hide:そうですよね。最初はそういう始まりだったんですよね。

遠山:ビジネスとそういうことは、相性がいいはずっていう感覚がある。企業家はまさにそうですよね。私の場合、商事にいたから「自分が代官山でイケてるカフェを1店舗やる」っていう感覚はなかったのね。三菱商事の資本も入れて「インフラをやりたい」って思っていた。

Hide:ああ〜!

遠山:「Soup Stock Tokyo」以前、以降じゃないけれども、「今まで女性が1人で行けるお店がなかった」って言ってくれると嬉しいです。やっぱり、1人だけで楽しんでいる話と「インフラを作っていこう」っていう話をするのは、ずいぶんと違うことですからね。

Hide:そうですね。

遠山:せっかく商事にいたから、そっち側に加担していきたいなっていう思いがありました。でも、そういうときに“1人のキラキラしたような小さな店”みたいな感覚を持つことは大事。1枚の絵を描き上げるような感覚っていうのが、すごく起点として大事だなっていう思いがあります。

◆25年間の歴史が詰まったエッセイ本を出版

Misa:遠山さんは1月25日にエッセイ「新種の老人とーやまの思考と暮らし」(産業編集センター)を出版されました。25年間雑誌に連載していたコラムをまとめたものです。どういった内容なのか教えていただけますか?

遠山:「味の手帖」っていう、昔からある渋めの雑誌なんだけども、そこに毎月コラムを書いているんですね。1個のコラムを書かなきゃいけないとき、「何かネタはないかな」「何に気になっているのかな」ってことを自分のなかで探るじゃない?

Hide:(コラム執筆が)ネタを探すレーダーになっている?

遠山:そうだね。日常のなかの“気付き”を自分なりにストーリー立てたりとか、些末なものに価値を見出そうとしてみたりとか、そういうことに繋がっていったのかな。自分なりの見方に気付けると、ちょっと楽しい。

Misa:コラムを実際にまとめてみて、「自分ってこういう風に考えていたんだ」っていう発見ってありましたか?

遠山:そうですね。最近書いた5、6個のコラムを読んでみたら「面白いなあ」って感じはありますね(笑)。

Hide:(笑)。書籍化の流れで「新しい会社を始める」と言われていましたよね?

遠山:はい。還暦になるし、自分の誕生日にエッセイを出版したんだけど、小さな個人会社を作ることにしたのね。60歳なんだけど、今の時代は100年時代だから、私は100歳まで仕事をして、105歳ぐらいで死ぬかなって思っているんですよ。

そう考えると、あと40年あるんですよね。「ここから人生の後半戦だ」って思ったときに「もうちょっと違う項目を入れたほうがいいな」と思って、個人競技をしたくなったんだよね。今までは団体戦をしてきたから。会社では端的に言うとアート活動をします。去年、「東京ビエンナーレ2020/2021」に作家として呼んでいただいたんですね。時計とかタイムマシンを作ったんだけども、それがまあ楽しくてですね。

Misa:おお。

遠山:「もうちょっと作品を作ってみたいな」と思いました。今は特に頼まれているものはないけれど(笑)、そういう風に宣言をしたり、意識を持てば話も来るんじゃないかなみたいな。そのときの受け皿が必要なんじゃないかなと思って、会社を作ります。

Hide:なるほど!

次回3月9日(水)放送のゲストは、ダンサーのTAKAHIROさんをお迎えします。お楽しみに!

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/voice/show/41164と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。ぜひチェックしてみてください!

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聴取期限 2022年3月10日(木)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト:hhttps://www.interfm.co.jp/mandala