UoC UNIVERSITY of CREATIVITY 共同編集長の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするInterFMの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。

2月23日(水・祝)の放送では、先週に引き続きダンサーの田中 泯(たなか・みん)さんが登場。これからの時代の創造性や、生死に対する考えについて語ってくれました。

(左から)Hide、田中 泯さん、Misa


1978年にパリで開催された「日本の時空間―間(ま)―」で海外デビュー。以降、「アルキメデスの大戦」やNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など、さまざまな作品で活躍している田中 泯さん。プライベートでは40歳から山梨で自給自足の生活を送っており、そこで培われた身体を使い、76歳になった今でも各地で踊りを続けています。

◆鏡がある場所では踊れない

Hide:僕らは2021年に曹洞宗僧侶の藤田一照さんをお呼びして、「つくること」と「生まれること」の境って実は曖昧なんじゃないかって話をしたんですね。つくることってけっこうおこがましい行為だし、混ぜ合わせても自然と生まれるものがある。だけど、そうやって生まれたものはつくったことになるのかってことを語り合いました。田中さんはつくるとか、生まれるとかに対して、どう思われますか?

田中:お百姓をやっているので「僕がつくった」って便宜的には言っているけれど、とてもじゃないけどそんな風には思えないです。「いつの間にこんなに立派に育ったんですか」って感じですよ(笑)。

Hide:踊りに関しても同様の感覚ってありますか?

田中:「私が踊っているんだ」っていう感覚はあまりないですね。私の体は私によって使われているけども、同時に“環境”によって使われているような。鏡を見ながら踊ったりポーズを取るっていうのができない人なんですよ。

Hide:そうなんですか。

田中:踊りの稽古場ってだいたい壁面に鏡があるんですけども、カーテンをつけてもらわないとだめですね。鏡があると踊りにならないんです。

Hide:自意識に縛られてしまうということですか?

田中:自意識というより「嫌だよ」って感覚ですね。テレビやドラマの撮影でメイクがあると、自分の映った鏡を見ていられないんですよ。「目を瞑っていいですか? 開く必要があったら教えてください」って言っています(笑)。

Misa:(笑)。

◆人間は生まれながらにして創造性を有している

Hide:AIがどんどん増えていく時代のなか、これからの創造性はどういう風に考えていけばいいでしょうか?

田中:霊長類から人類へ進化をしていく過程で、偶然に助けられて何かを見つけていったわけですけども、それってことごとく創造的だと思うんですよね。そして、そこにはたくさんの本能が同伴して動いている。僕は、本能というものを常に新しくつくっていくべきだと思っています。

僕はどんな会話をしていても、頭のなかでは踊りのことがあるんですね。ですから、言葉や話をどんどん踊りのほうに手繰り寄せてしまうんです。これって、僕にとってはほとんど本能に近いものだと思っています。

Hide:なるほど。

田中:人間は、踊りを他の動物よりも遥かに贅沢かつ意味ありげなものにつくり変えていきました。他の動物たちの踊りというのは求愛行動を意味するものが多いですけど、それを人間はずっと見てきて、もっともっとディテールのあるコミュニケーションに進化させた。

ですから、(踊りは)生きる=創造的であることの一番いいモデルではないでしょうか。今の社会で「生きることと創造性を一緒にさせながら物事を考えていくことって可能かな」ってことは、ちょっと思いますけれどもね。

Hide:生きることと創造性を考えていく上で、何を一番大事にすべきですか?

田中:「個人」ですね。たった1人の人間の情報だけで、コンピューターをフル稼働させないといけないかもしれないですし、自身の記憶のなかで喋っていないものって山ほどありますから。それって、みなさんもそうなんですよ。生きていく上で出せるものっていうのは、ほんの一部だと思います。それくらい、人間の細胞がやってくれている仕事って、とんでもない量なんですよ。

そこで僕らは感情を生んだりいろんなものをつくる。感情だって、自分1人で動かしているものではなく、全部何かの行き来があって生まれたものなんです。僕らの体というのは、「社会のタネ」なんですよ。社会を感じ、反応し、やりとりが始まるタネを持って人間は生まれてくるわけです。それってすごく素敵なことですよね。人間というのは、初めから創造的なんですよ。

田中 泯を追ったドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』


◆死ぬ瞬間まで踊り続けていたい

Misa:泯さんは「生まれ変わる」ってどうお考えですか?

田中:細胞の集合体から“僕”という存在が意識を持って生まれてきて、今こうして暮らしているわけですよね。つまり、僕にとって体は最初の決定的な環境なんですよ。体と僕のあいだには関係があるんです。漫画みたいな表現だけれども、小人の田中 泯が体中にいっぱいいて、そいつらが「うわーこっちだー」って、あっちこっちで動いているわけです(笑)。

Misa:(笑)。

田中:自分は偶然に生まれて、偶然に日本人で、偶然に踊りが好きになった。最後の最後まで偶然なんですよ。死をコントロールできないし。だけど、「死んだらどうなりたいか」という、言ってもしょうがないことに対していろいろ夢見るのは、生きる上でとっても大切なことです。お食事みたいなもの。

それをしっかりと抱きかかえていくというのも1つの方法だと思いますし、「死んだら生まれ変わる」と信じることもすごく大切なことかもしれません。でも、「信じねばならない」ではないと僕は思います。僕は死んだらどうなんでしょうね? 死んだというところまで自意識があるのかどうか。でも、少なくとも死ぬ瞬間まで踊っていて、そして止まりたい。死ぬということは、「止まること」なんでしょうね。

Hide:生きている限り、ずっと動き続けていますもんね。

田中:多少の誤差はありますけどね。髪の毛なんかは死後でも霊安室で伸びたりするらしいですし(笑)。

Hide:(笑)。

田中:もし、また生まれてくるんだったら、そのときには僕の意識はないわけですけども、次は大きな単細胞で生まれてみたいなあ。

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次回3月2日(水)の放送は、実業家の遠山正道さんをゲストにお迎えしてお届けします。

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/voice/show/40878と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。ぜひチェックしてみてください!

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聴取期限 2022年3月3日(木)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト:hhttps://www.interfm.co.jp/mandala