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「オーラ」に込めた気品と存在感

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)editor:Taro Ueno(上野太朗)

コンパクトカー「ノート」の上級タイプとして日産が発表した「ノート・オーラ」。

【画像】別格の座り心地【ノート・オーラ/ノートを細部まで比較】 全218枚

オーラ(AURA)には英語で「気品」や「独特の雰囲気」といった意味があり「気品があり、存在感を放つプレミアムなクルマになるように、という想いを込めている」と商品企画担当者は説明する。


日産ノート・オーラ    神村 聖

果たしてそんなノート・オーラ(以下、オーラ)は、通常のノートとどう異なるのだろうか。

ここでは、オーラに盛り込まれたノートとの違いを6つのポイントに分けて紹介しよう。

走り しっかり感じる20psの差

まずは、走りだ。

オーラはノートに上級装備を組み込んだ仕様と思われがちだが、それだけではない。


日産ノート・オーラ    神村 聖

走りも「動力性能」と「乗り心地&操縦安定性」の2つの面でアップグレードしている。

動力性能に関しては、1.2Lの自然吸気エンジンを発電機として使い、モーターを駆動して走るシリーズハイブリッド式であることはノートもオーラも変わらない。

しかし、エンジンはモーターなどの主要部品は同じながら一部の補器類と制御を変更することでモーター最大トルクを7%、最高出力は18%高めている。

具体的にいえば、最大トルクはノートの28.6kg-mに対して30.6kg-m、最高出力は116psから136psと強化されているのだ(エンジンスペックは変わらない)。

「ノートは燃費重視の制御、オーラはドライバビリティ重視の味付け」と開発者はいう。

試乗してみたところ、発進加速での違いはあまり差を感じなかった(どうやらタイヤ&ホイールの重量増が主力増加分を吸収しているようだ)が、その後の「伸び」が違うことを確認できた。

ノートに対して排気量を拡大したような印象で、20psの差はしっかり感じられる。

静寂性 見えない部分にも上級感

2つめの差別化が、乗り心地と操縦安定性である。

15インチもしくは16インチを履くノートに対してオーラは17インチとタイヤサイズが異なるが、オーラではそれにあわせてサスペンションのセッティングを変更。ダンパーやコイルスプリングもノートとは別の部品を組み合わせる。


日産ノート・オーラ    神村 聖

また、フロントドアへの遮音ガラスの採用やルーフへの吸音材の追加など、静粛性も高められている。

ノートとオーラは、外観の変更や装備追加など見える部分だけでなく、見えない部分もしっかりと差別化されているのだ。

差別化といえば、3つめのポイントとしてエクステリアのなかでもリアフェンダーに注目したい。

フロントやリアのデザインもノートと異なるオーラだが、気になるのは張り出したフェンダーだ。

前後ともにフェンダーは片側20mmふくらみが増し、全幅が40mm増えている。

フェンダーの張り出しは高性能車が通常のモデルとの差を表現する手法として用いることが多いが、国内向けの一般的なモデルで採用するのは珍しい。

それにしてもワイドフェンダーとは、クルマ好きにとってなんとも魅惑的な響きだろうか。

リアフェンダー周辺はリアドアから張り出しを増すが、興味深いのは単にボリュームが増しているだけでなく上部のプレスラインがノートとは異なること。

Cピラー下あたりを見ると、よりフェンダーの張り出しを強調する造形となっていることがわかる。

テールランプはノートとオーラで内部の発光ユニットが異なるものの、寸法は共通。なのでそれを基準として両者を見比べると、オーラのフェンダーの造形をより理解しやすい。

ちなみにフェンダーの張り出しによってオーラは5ナンバー枠をはみ出して3ナンバー登録となるが、自動車税は5ナンバーでも3ナンバーでも変わらない。「3ナンバー化されて困る」という状況があるとすれば、それは自宅駐車場が3ナンバーサイズに対応していないというケースくらいだろう。

インテリア 異例ともいえる「上質さ」

4つめのポイントは、インテリアの仕立てだ。

注目はインパネ周辺で、まず目につくのはインパネ上部。ハード樹脂そのままのノートに対し、オーラはツイードを表面に張った仕上げで見るからに上質感が高い。


日産ノート・オーラ    日産

これは見た目だけでなく触感もよく、その下の木目調パネルと相まって質感の高さはノートに対して相当な差がある。

この木目調パネルは15もの工程を経て作られる凝ったもので、艶を抑えた見た目の質感が高いのに加えて表面に微細な凹凸があり、本物の木材のようだ。

また、センターコンソールもインパネのように木目調パネルとツイードの組み合わせとし、ノートとは差をつけている。

そしてもう1つの違いがメーター。

5インチのセグメント表示に7インチのTFT液晶を組み合わせるノートに対し、オーラは12.3インチTFTのフル液晶メーターを採用。

大型車では採用例が少なくない12.3インチの液晶メーターだが、このクラスとなると採用例はほかに思い浮かばない。ナビの地図を表示するなど、表示デザインは切り替え可能だ。

レザーシートの座り心地も違う。

オーラには「レザーエディション」として本革をコーディネートした仕様も用意しているが、実はノートもオプションで本革を選択可能。

その場合はどちらも同じ表皮なので見た目に差はないが、実際に腰を下ろしてみると座り心地が違うことに驚いた。

その理由は、内部構造。

表皮の下に10mmのクッション材と20mmのソフトウレタン、合計30mmのソフト層を追加してジワリと沈み込むクッション性をプラスしているのだ。

こういった構造は、スカイラインやエルグランドなどの上級モデルで採用しているが、コンパクトカーに使うのは異例中の異例である。

そんな座り心地が、オーラのキャラクターを明確にする5つめのポイントだ。

細部にわたる専用設計 BOSEこだわりの音響も

そして最後に、6つめのポイントとしてお伝えしたいノートとオーラの違いがオーディオ。

オーラだけに、オプションとして「BOSE」のオーディオが用意されているのである。


日産ノート・オーラ    神村 聖

オーラはクルマ作りの初期段階からBOSEが関わり、音作りに影響する内装トリムの素材選定までBOSEの意見を聞きながら作り上げられた。

そんなBOSEオーディオのハイライトが、ヘッドレストにスピーカーを組み込んでいることである。

ヘッドレストに内蔵したスピーカーがもたらすメリットは何か?

それは音の広がりを好みに応じて調整できることだ。

音楽を聴くとき、前方にステージがあるようなサウンドにするか、それとも包まれるような音作りにするかを任意に無段階でコントロールできるのである。

こういった切り替えは十数個もしくはそれ以上といったたくさんのスピーカーを組み込んだ車でなら実現できるが、オーラのように8個のスピーカーだけでは普通は再現できない。

しかし、オーラでは耳の近くにスピーカーを置いて音場を作ることで実現したのだ。この機能は国内向けのモデルでは初搭載だ。

もちろん、プレミアムオーディオだけに純粋に音がいいのはいうまでもない。

「ノート・オーラ」というクルマは、単にノートの見栄えをよくして装備を変えた上級車種と思われがちだ。

しかし、パワートレインからサスペンション、そしてレザーシートの座り心地までしっかりと専用チューニングがおこなわれている。

単に化粧を変えただけでなく、細部にわたり専用設計となっているのだ。

通常のノートに比べて約40万円の価格アップとはなるが、見えない部分にまで手が入っていることをしっかりと理解しないと、キャラクターを見誤ることになるだろう。