【広野 真嗣】石破茂は「キングメーカー・二階」をどう見ているか…その共通点と大きな違い 5回目の総裁選に挑むのか

写真拡大 (全4枚)

なぜ菅総理は国民に説明できないのか

「昨年の総裁選では、『明治以来の東京一極集中を変える』と、国家像の変革を提示しましたが、届きませんでした。国家像を語るよりは個別具体の政策を打ち出した菅さんが総理となった。現在のコロナ禍に際して、改めて、『なぜ自粛をお願いするか』など、国のスタンスを国民に丁寧に説明することが求められています。

もともと菅総理は、理論を組み立て、それを国民に分かりやすく説明し、共感や理解を求めるというスタイルを今まであまり使ってこられなかった。それで総理になられたのですから、急に説明能力を求められても難しいところもあるでしょう。

現政権では、田村憲久厚労大臣が政府のコロナ対策を丁寧に答弁しています。誠実な閣僚に支えられているところが現政権の強みでしょう。前政権のときにままあった挑発的なところがなくなりました。総理大臣や閣僚は審議をお願いする立場ですから、予算委員会でヤジを飛ばすようなことがあってはなりません。

閣僚が物を言える雰囲気は、以前よりあるように見受けますが、官僚が物を言いにくいという雰囲気は、あまり変わっていないのではないでしょうか」

「保守の本質はリベラルであるべき」

石破茂が会長を退いたことで、石破派(水月会)の存在感は薄れた。複数の世話人で運営するかたちで会は維持されたものの、側近だった山本有二衆院議員が昨年12月に休会。2月と3月にそれぞれ退会者が出た。

現在、山本と石破を入れても17人で、総裁選立候補に必要な推薦人20人には届かない。

――菅総裁の任期は9月まで。5回目の総裁選に挑むのか。

「現総裁の任期が来た時に、どうするかという判断はしなければいけないと思っていますが、その時になってみなければ、わかりません。

3年前も、去年も、決して勝ち戦ではなかったが、自民党のためと思って挑みました。『保守の本質はリベラルであるべき』という思いがあったからです。

というとおかしく聞こえるかもしれませんが、『保守』と『リベラル』は本来は対立概念ではないはずなのです。保守とは『大切なものを継承していく』という姿勢。そしてここで私が考えている『リベラル』とは、寛容性のことです。どちらもイデオロギーではありません。

祖先を敬い、地域社会を大切する心――こうした本質を守るためには、時代に合わせて部分的に規範を変えていく必要があります。教条的にこの形を守る、という姿勢では、かえって本質を損なってしまう。そのためには、『おかしい』と異論が言える寛容性と、それを受け入れる柔軟性こそが保守の姿勢です。そうでなければ、自民党が自民党でなくなってしまう。

総裁選で問われるべきは、こうした党のあり方と、もう一つは政策的な方向性です。東京一極集中という、もはやサスティナブルでなくなってしまったシステムを構造的に変革すること。極端なグローバル経済への依存や過密な都市社会も変えていく必要がある。食料、エネルギー、サプライチェーンといった経済の基本をなす軸を、内需中心、地域分散型にしていかないといけません」

二階幹事長をどう見ているのか

気になるのは、頂点を目指す可能性に含みを残す石破が、安倍・麻生の主流派と一定の距離を取る幹事長、二階俊博をどう見るのか、という点だ。菅総裁誕生の立役者となった二階だが、昨年6月の段階では国会議員として1期後輩にあたる石破を「期待の星」と持ち上げてみせる一幕もあった。

加えて二階も石破も旧田中派出身。「国土の均衡ある発展」を今も唱える二階と、東京一極集中の是正を唱える石破には「地方振興」を重んじる上で接点はないのか。

――二階さんと結ぶ可能性は?

「昭和の自民党の文化を引き継いでいる政治家として、二階先生の存在は貴重だと思います。総選挙がいつで、総裁選がいつあるか。その局面で、二階先生がどう判断されるのか。その時に『日本国とは』『自民党とは』という議論があった上で、支持する者を決するのかどうか……今はわかりません。

二階先生の『国土の均衡ある発展』と私の考える地方創生は、地方に軸足を置くという意味では共通しますが、概念として違う部分もあります。

地方の雇用と所得を誘致企業と公共事業で創り出す、というのは、大量生産・大量消費の高度経済成長期の成長モデルです。二階先生も『あの頃をもう一度』と考えられているわけではない。民主党政権時代にあまりにも削られてしまったインフラ投資の重要性を強調されているのと、都市とそれ以外でインフラ投資に大きな差があるのは国全体としていびつだ、という思いを前面に出されているのだと思います。

私はこれらに加えて、これまでその潜在力を十二分に発揮してこなかった地方の農業、漁業、林業、サービス業こそが、もっとも伸び代があるということを強調しています。地方が主役となって、内需を掘り起こせる、少量多品種高付加価値型の産業を牽引し、雇用と所得を主体的に生み出して行くことを考えています」

――ほかにも、党内でのウイングが広がらなければ活路は開けない。

「広げて自分の立ち位置がわからなくなると困るので、納得しないと広げようがない。同僚議員によると『そこが悪いところ』ですって(笑)。

権力を取らないと政策は実現しない。そうしたリアリズムはわかりますが、権力を取るために自分を見失ったら意味がない。そこの悩みは大きいです。自分は、納得してこの仕事を終えたいと思っているから」

――権力の構図が変わることで党内に新しい風を吹き込む可能性もある。

「そう。自分のためじゃない、次の時代のためなのでしょう。『政策を究めるのだ』というところに逃げ込んでいまいか、という反省は、常にあるんです」

4月25日には、もう1人の総裁候補、前政調会長の岸田文雄の政治決戦となる参院広島再選挙が行われる。石破はいかなる道を選ぶのか。再び注目が集まる局面が近く、やってくる。

(文中一部敬称略)