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ラフロードが似合うブランドに

text:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)

トーヨータイヤは、兵庫県伊丹市に本社を構える、タイヤを中心とした自動車部品などのメーカーだ。

かつての社名は「東洋ゴム工業」だったが、2019年に、よりタイヤ事業にシフトすることを主眼に「トーヨータイヤ」に社名を変更した。ちなみに、社名の英字表記は「TOYO TIRE」だが、ブランドのロゴは「TOYO TIRES」となっている。

2020年1月の東京オートサロンには、ジープの日本未導入ピックアップトラック、グラディエーターを展示し会場を沸かせた。

タイヤ製品名としては、快適性を重視した「プロクセス」、ミニバン向けの「トランパス」、低燃費タイヤの「ナノエナジー」、SUVやクロスカントリー4WD用の「オープンカントリー」、そしてスタッドレスの「オブザーブ」などが知られている。

また、日系タイヤメーカーの参入が続くオールシーズンタイヤ市場には「セルシアス」を導入。軽からミニバン/SUVまでを対象に、19サイズをラインナップする。

最近では製品展開をSUV指向にふっており、またラリーやドリフトなどのモータースポーツにおける活躍も注目されている。

OPEN COUNTRYを拡充

そんなトーヨータイヤの新たな主力ブランドとなっているのが、前述のSUV用タイヤ「オープンカントリー(OPEN COUNTRY)」シリーズだ。

世界で最も過酷なオフロードレースといわれる「バハ1000」などの国際レースに継続参戦し、その経験によって得られた知見を商品開発にフィードバックしている。SUV、オフローダーの高い人気により、そうしたモデルのカスタム市場も活発化。大きなタイヤを装着することからファッション性も求められる。

「オープンカントリー」シリーズは、大型SUV車両が抜きん出て普及している北米市場で高く評価され、日本市場でも2016年に「オープンカントリーR/T」から同ブランドの導入を開始した。

日本国内でのSUVの新車販売台数は年々増加しており、人気が高まっている。トーヨータイヤでは、SUV市場の拡大に合わせ、「オープンカントリー」シリーズのサイズ拡充。

2月には、前述のオン・オフ性能を両立したオープンカントリーR/T、悪路走破に長けた同M/Tの新サイズを追加する。

日本では、戦略的な販売促進の展開などにもより、2020年のSUV用タイヤの販売本数は2016年比で20%増加。

SUV用タイヤの販売本数における構成は、北米比率が38%、売上換算で57%となっており、当面は「オープンカントリー」シリーズを中心としたSUV用タイヤにウエイトが置かれるようだ。

2025年に向けて 新中期経営計画

2021年2月25日に、トーヨータイヤは新中期経営計画「中計’21」を発表した。

これは、2025年に向けて「第二の創業」(これに関しては後述する)を機とした、新・グローバル戦略による企業価値の増大が目的であるという。トーヨータイヤのサイトには、東京オートサロン2021のバーチャルブースが用意されている。ケン・ブロック、ブライス・メンジス、マッド・マイクも出演。最新のドリフトマシンやカスタムカーも紹介している。

全社的には、技術/生産/販売の3分野で計画を立て、その効果的連動を実現し、成長戦略を牽引する経営基盤の構築と人材強化を図っていく。その結果、従来まで取り組んできた企業ステージから、新たな企業ステージへのステップアップを目指すというものだ。

それぞれの分野では、どのような計画があるのか。

技術分野では、前中計期間中に確立した日・米・欧のグローバルR&D 3極体制での連携を図ることで、高機能設計力/顧客志向商品力/次世代技術開発力を重要な差別化技術として掲げ、これら3分野を重点的に強化していく。

生産分野では、2022年4月にはセルビアの工場を稼働し、欧州での地産地消や米国への供給などを行い、日本工場や米国工場と合わせてグローバルでバランスが取れた高効率な生産体制を確立する。

販売分野では、公道実験でモデルを高度化させ、これまで知りえなかったユーザーのタイヤ使用状況の把握とモジュール技術を活用し、嗜好性の高いユーザー向けのニーズや使用環境にマッチしたカスタマイズ商品の提案を両立していく。

日・米の成長戦略

今後の展開としては、日本ではSUVなど伸長するカテゴリーを視野に、「オープンカントリー」シリーズのような趣向性の高い商品をはじめ、静粛性・耐摩耗性を兼ね備えた高機能商品などを意識的に開発、投入する計画だ。

並行して、「大胆なハード再編」と「DX(デジタル・トランスフォーメーション)によるソフト改革」を掲げ、販売体制を新しく抜本的に変革し、固定費を大幅に削減。オールシーズンタイヤの「セルシアス(CELSIUS)」は、2020年度グッドデザイン賞に選ばれている。19サイズをラインナップ。

それとともに、デジタルを活用した営業の高度化、営業基盤の変革により、重点商品の販売比率を向上させていく。

北米市場では、圧倒的なブランドプレゼンス(存在感)を持つワイドライトトラック用タイヤの増販はもちろん、桑名工場の能力増強をフル活用したトラック・バス用タイヤの積極的な増販、また、オールシーズンタイヤなど新しい需要の開拓など、強みを磨き上げた差別化商品群を継続、重点的に投下していく。

三菱商事と提携

前述のようにトーヨータイヤは2019年1月に社名を変更した。タイヤと自動車部品を事業の中核に据え、自動車産業の一角を担っていく姿勢を打ち出し、2019年を「第二の創業」の年としている。

同年8月には「新たな企業ステージに向けた成長戦略」を発表し、三菱商事との資本業務提携を機とした協業施策の方向性を披露した。タイヤという違いが見えにくいマーケットにおいて、個性を打ち出すことに成功した数少ないメーカーがトーヨータイヤだ。

今回の新中期経営計画では、トーヨータイヤの価値向上が両社の使命となる体制を構築し、提携による効果で100億円の収益を目指していくという。

具体的には、採算面や効果創出速度の観点から、まずは日本市場とアジア市場に注力。

日本市場では、1000以上の生産財タイヤユーザーのリストアップが完了し、2021年よりターゲットを設定して拡販活動を本格化していく。

アジア市場では、SUV用タイヤのビジネス機会の増大や小売店舗の陳列棚の確保など、新車用・市販用タイヤの販路拡大に向けた取り組みを開始る。増資資金を活用した増産プロジェクトは順調に進捗しており、稼働を開始した設備は、収益に貢献している。

セルビア工場も、計画どおりに2022年に稼働を開始することで、営業利益40億円以上の押し上げになると確信しているという。

日本市場においては、ブリヂストン、ダンロップ(住友ゴム)、そして横浜ゴムに次ぐ地位にあるトーヨータイヤ。「青を灯せ」というコーポレートメッセージで「挑戦心」や「内なる情熱」を表現しているが、ブランドステートメントである「まだ、走ったことのない道へ。」のごとく、これからの挑戦と展開に期待したい。