重点国有企業である華晨汽車への破産宣告は、中国の市場関係者に衝撃を与えた(写真は華晨汽車の乗用車ブランド「中華」のウェブサイトより)

深刻な経営不振に陥っている中国の国有自動車メーカー、華晨汽車集団に対して、同社の債権者が破産を申し立てたことが明らかになった。華晨汽車をめぐっては、優良資産を別会社に移して債務の返済逃れを画策しているとの疑惑も浮上している。

11月13日に企業信用情報サイトに掲示された情報によれば、格致汽車科技という企業が遼寧省瀋陽市の中級人民法院(訳注:日本の地方裁判所に相当)に華晨汽車の破産を申し立てた。裁判所は中国の破産法の規定に基づいて、申し立てから15日以内にその受理の可否を審査する。仮に受理されれば、華晨汽車の破産手続きが正式に始まることになる。

格致汽車科技は自動車用の金型の設計・製造を手がけるサプライヤーで、2019年9月にも売買契約をめぐる紛争で華晨汽車を提訴していた。格致汽車科技に対する華晨汽車の未払いがどのくらいあるのか、現時点では具体的な情報は公表されていない。

華晨汽車は、1958年創業の瀋陽汽車製造廠を前身とする遼寧省の重点国有企業である。2003年にドイツのBMWと合弁会社を設立したのを機に、中国の主要自動車メーカーの一角に名を連ねた。2005年には組織再編を経て遼寧省国有資産監督管理委員会の直属企業となり、同委員会が株式の80%を、遼寧省社会保障基金会が同20%をそれぞれ保有している。

大口債権者が中央銀行に告発の書簡

中国の国有企業は、仮に経営が傾いたとしても、多くの場合は政府が救済に乗り出す。ところが10月23日、華晨汽車の社債「17華汽05」がデフォルトを起こし、債券市場に衝撃が走った。同社が発行した償還期限前の社債の残高は172億元(約2726億円)に上る。

デフォルト発生後、債券市場では華晨汽車の破綻処理に関するさまざまな噂が飛び交った。そんななか、市場関係者の間に出回ったある内部文書が注目を集めている。中国国家開発銀行傘下の証券会社である国開証券が、中国人民銀行(中央銀行)の金融安定局に提出したとされる書簡だ。


本記事は「財新」の提供記事です

国開証券は華晨汽車の大口債権者の1社である。書簡によれば、華晨汽車は現金化が可能な優良資産の多くを別会社に移し、それを担保に融資を受けたという名目で質権を設定。この事実を隠蔽して裁判所に自己破産を申請しようと画策しており、「債務返済を逃れようという意図は明らかだ」と断定している。

(訳注:瀋陽市中級人民法院は11月20日に債権者の申し立てを受理し、華晨汽車の破産手続き開始を決定した)

(財新記者:王娟娟)
※原文の配信は11月14日