さかのぼること3月、タッパーウェア(Tupperware)は厳しい状況に直面していた。同社は、1950年代からプラスチック製の食品容器を販売してきた、象徴的なキッチンウェアブランドだが、2019年にその売上高は13%減少。同社はこれまで数十年にわたる困難な時期を経験していただけに、この数字がもたらすインパクトは大きかった。しかし、そこに新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が勃発。すべてが一変した。

同社の販売員の多くが認めるように、パンデミック以前から、タッパーウェアパーティ(Tupperware parties)は縮小傾向にあった。これは、個人宅で開くホームパーティ形式で行われる、同社のブランド名を一躍有名にした販売方法である。販売員は、独立した事業主として友人や家族の参加を募りながら、タッパーウェア商品を売り歩き、報酬として販売手数料をもらい受ける形だ。このアプローチは、同社の中心的な販売モデルである一方、別の時代の遺物のようにも見える。同社で幹部を務めるある人物は、マーケティングメディアのドラム(The Drum)にこう語っている。「人々は、いまもタッパーウェアを求めている。単にどこでどう見つければよいのか分からないだけだ」。

世界中に広がるパンデミックは、タッパーウェアにとって、死を告げる鐘になるかもしれないと思われた。だが、報告された四半期決算を見る限り、それとはまったく逆のことが起きている。タッパーウェアの売上が急激に伸びているのだ。

販売員ネットワークが貢献



米国とカナダでの売上増は72%にのぼり、過去20年で最大の上げ幅を記録した。好調の背景には、巣ごもり需要によりキッチン用品の購入が増えたこともあるが、多くの独立販売員がFacebook、Zoom、TikTokをうまく活用して、オーディエンスへのリーチを拡大できたことも奏功している。

「株価も急騰している」。そう指摘するのは、資産管理会社のD.A.ダヴィッドソン・アンド・カンパニー(D.A. Davidson & Co.)でタッパーウェアの株価を追跡するアナリスト、リンダ・ボルトン・ワイザー氏だ。

この急成長の大部分は、キッチン用品全般の需要増によるものだ。「家庭で料理をする機会が増えれば、残り物を保存する機会も増える。当然、食品用の保存容器が必要になる」と、ワイザー氏は説明する。結果的に、タッパーウェアの透明プラスチック容器を大量に購入する人が増えた。ハーブチョッパー(Herb chopper)、ワインボトルオープナー(Wine bottle openers)、電子レンジ用の調理器具など、あまり知られていない同社商品でさえも売上を伸ばしている。

しかし意外にも、この大幅な売上増は従来的なオンラインストアに依存したものではない。同社の取引の大部分は、昔と変わらず、全国的な販売員ネットワークに由来しており、その販売員たちは、伝統的な販売手法をSNSに移行する道を見いだした。ワイザー氏によると、昨年立ち上げた同社のオンラインストアは、収益全体のわずか4%を占めるにすぎないという。

バーチャル販売会を駆使



多くの数字が示す通り、今年のタッパーウェアの販売員たちは例年になく意欲的だ。今年、毎年恒例の全国販売会議には、例年の2500人から3000人を大きく上回る、8000人の販売員が参加した(バーチャルという形式も奏功したようだ)。

多くの販売員は独立して事業を営む個人事業主で、それぞれタッパーウェアのコンサルタント集団のような会社を経営している。ニューヨーク市を拠点とする販売員のキム・サントイエンマ氏は、同氏が所属するオフィスで働くコンサルタントは、3月の54人から大幅に増えて、現在は125人が在籍しているという。収益も顕著に増加しており、3月上旬から5月にかけて6倍に跳ね上がった。

サントイエンマ氏は3年前、交通事故で休職を余儀なくされたあと、タッパーウェアの販売員として働きはじめた。同氏の話では、「数カ月間、仕事を休んで家にいたのだが、何かしていないと気が済まない性分だったので、ホームパーティをはじめた」という。現在、サントイエンマ氏はフルタイムで働くかたわら、タッパーウェアの仕事も続けている。

パーティーの中身



オンラインでのタッパーウェアパーティは、そのほとんどがFacebookやZoomで開催される。サントイエンマ氏と連携してパーティを開催するホストは、Facebookでイベントやグループを作成して、家族や友人を招待する。1時間で終わるパーティもあれば、1週間続くパーティもある。サントイエンマ氏は、定期的にこのようなイベントにライブ配信で参加して、ゲストたちと交流する。そしてライブ配信中に料理をしながらタッパーウェアの商品を紹介する。一方、ホストの役割は特定の商品にゲストの注意を向けさせることだ。サントイエンマ氏の説明によれば、「ねえキム、この商品、息子さんにどうかしら」などと、直接商品を勧めることもあるという。パーティの開催中、サントイエンマ氏は自分が運営する、個人ストアのリンクをゲストに送り、彼らから直接タッパーウェアの商品を注文してもらうという。

パーティを盛り上げるために、ときにゲームを提案することもある。たとえば、Zoomのパーティでは、参加者全員に起立を促し、パジャマのズボンを履いていた人に景品を出したりする。同氏の息子もたびたびオンラインパーティに登場する。最近では、夕食をつくりはじめると、息子から「ライブ配信しよう」と誘われるという。

サントイエンマ氏はこのパーティを通じてホストの勧誘もおこなう。パーティで知り合った友だちのそのまた友だちに、パーティの開催を打診する。売れた商品に応じて、ホストにはタッパーウェアのクレジットが貯まり、販売員のサントイエンマ氏には25%のコミッションが支払われる(同氏によると、旅行や資金援助などの特典もあるという)。

対面式は足元にも及ばない規模



純粋に数字の観点から見ると、オンラインパーティには販売の面でも大きなメリットがある。というのも、対面式のパーティなど足下にも及ばないほど規模が広がるからだ。サントイエンマ氏の顧客は、オレゴン州やオクラホマ州にもいるという。同氏いわく「もはや車で1時間の距離に縛られることはない」。

タッパーウェアの販売員が活用するのは、FacebookやZoomにとどまらない。昨年からタッパーウェアの登録販売員として活動しているレイチェル・ジェイド・ウォーレン氏は、WhatsApp(ワッツアップ)を活用して、テキストオンリーのタッパーウェアパーティを開催した。潜在的な顧客たちと大量の写真や商品説明をやり取りしたという。

TikTokなどの新たなチャネルも



ウォーレン氏は、若い人たちにもタッパーウェアに興味を持ってもらうため、TikTokも活用している。タップ・トック(TupTok)と呼ばれるこのポロモーションは、派手さはない反面、生活感が演出されている。人気の#PewPewPewChallengeで、タッパーウェアの商品をフィーチャーした動画を投稿したところ、同氏の個人ストアに10個程度の注文が入ったという。

タッパーウェア最大の売りは(それはときに困難でもあるのだが)、米国の小売店舗では購入できない点にある。2000年代初頭にターゲット(Target)と結んだ提携は惨憺たる結果をもたらした。同社の商品が容易に入手できるようになると、良くない連鎖反応に火がついたのだ。タッパーウェアの商品が誰でもターゲットの店頭で購入できるようになったため、販売員から商品を購入する顧客が減少。既存の販売員の活動が鈍化した結果、新規の販売員の獲得にも支障が出た。2003年には、販売員の数は25%も減っていた。

ワイザー氏はターゲットとの提携に絡むこの災難を「典型的なチャネルの衝突だった」と表現する。「小売店舗での販売は御法度だ」と同氏は語る。さらに、メキシコにはタッパーウェアの実店舗があるが、その実店舗でさえ、独立販売員たちの存在価値を損なわぬよう、一部の限定商品しか置いていない。

だからといって、タッパーウェアが全面的に変化を嫌っているわけではない。昨年、同社はニューヨークのソーホー地区に期間限定のポップアップストアをオープンした。タップ・ソーホー(TuppSoho)と命名されたこのストアには、25ドル(約2600円)の再利用可能なストローなど、カラフルで高価な商品が並べられた。

同社はCNNの取材に対して、「私たちの商品はいまもここにあり、若い世代も利用できることを示したかった」と述べているが、実のところ、このポップアップストアは入手しにくいタッパーウェア商品を、トレンディに見せるための仕掛けでもあった。大半の若者にはタッパーウェアの販売員がどこにいるかなど分からない。しかしその入手困難さは、バーキン(Birkin)のバッグのように、ひとつのセールスポイントになるかもしれない。

「重要なのは人間関係」



それでも、ワイザー氏はタッパーウェアの将来が、物理的な小売店舗にあるとは考えていないし、それは販売員たちも同様だ。

「結局のところ、重要なのは人間関係だ」とサントイエンマ氏は語る。誰しも売り手と交流があれば、買う可能性は高くなると同氏は言う。「どうせ買うなら友人から買いたい。実際、顧客の一部はいまでは私の友人だ。私の誕生日には電話をくれるし、彼らの誕生日には私も電話で祝福する」。

[原文:Digital Tupperware parties are bringing the brand back into vogue]

MICHEAL WATERS(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)