ヒューリックの西浦会長は「社員の教育はテレワークではできない」と語る(撮影:尾形文繁)

都心・駅チカに経営資源を集中。分譲マンションや大規模ビル開発、海外進出はしない。「選択と集中」を徹底し、時価総額で三菱地所、三井不動産、住友不動産に次ぐ4番手にまで登り詰めたのがヒューリックだ。「他社と同じ事業はやらない」というモットーの下、今度は子ども教育事業への進出を発表した。

成長志向の強い同社は、リーマンショックや東日本大震災に見舞われた年でも投資の手を緩めず、以来増収増益を続けている。今回もコロナ禍に蝕まれる実体経済をよそに、「うろたえるな」と一喝。成長の源泉はどこから来るのか。ヒューリックの成長を牽引してきた西浦三郎会長に聞いた。

あたふたする必要はない

――コロナ禍で経済に不透明感が漂っています。

コロナはこの1、2年の問題なので、あたふたする必要はない。リーマンショックの時も大恐慌が起きると言われていたが、結局は元に戻った。ホテルにしても、東京が「Go to トラベル」に適用された瞬間、当社が有楽町や浅草で運営しているホテルはあっという間に予約が入った。足元の状況がずっと続くというよりも、もしかしたら来年後半には元に戻っているかもしれない。

私はテレワークはこう(指で×を作る)なんだけど。今でも取締役会にかかる(投資対象の)物件は、大抵現地まで見に行っている。用地を大きくするために隣地を買い増せるか、土地を買って何を作るのか、テナントは何を入れるのか。物件の価値を見極める材料になる。私が2006年に社長になってから400棟以上物件を買っているが、減損したのはほとんどないんじゃないかな。物件をテレビに映して、「良い、悪い」と言うのは違うと思う。


近年はオフィスビル賃貸以外の事業も拡大。写真は都心部で展開する商業施設「ヒューリックアンニュー」(記者撮影)

今でも覚えているのが、ずいぶん前に「銀座一丁目で一緒にやらないか」とオリックスから声をかけられた。だからお昼と3時、夕方に現地を見に行ったら、(開発予定地付近に立つ)文房具の伊東屋までは人が来ているんだけど、そこから先には来てないことがわかった。だからその開発には参加しなかった。

先輩が交渉する姿を通じて若い人たちは仕事を覚える。社員の教育はテレワークではできない。

――足元でも、不動産市況は堅調だと?

保有ビルの空室率は、来年4月までの解約通知を入れても0.8%。テナントの埋め戻しも進んでいて、以前より賃料が上がったテナントもいる。駅から近くて安心安全なビルの需要は底堅い。駅から近い場所の地価も下がらないだろう。当社も銀座6丁目の土地に坪2億で札を入れて負けたけど、それがコロナ禍で1億まで落ちるかというと絶対ない。

本記事の続きはこちら『東洋経済プラス』では「不動産『熱狂』の裏側」(全5回連載)として、ホテルや物流施設でわかれた明暗、東急不動産やヒューリックのトップインタビューを掲載しています。