力士たちが不安を抱えたまま始まった、大相撲九月場所

 9月13日に始まった大相撲九月場所は、初日から67人が休場という異常事態となっている。日本相撲協会によれば、「幕下以下を含めた正式な休場者数の記録は残っていない」というが、少なくとも、ここ10年では最多となっている。

 その大きな要因は、玉ノ井部屋で発生した新型コロナウイルスの集団感染だ。9月18日現在、所属する力士28人中24人が感染。玉ノ井部屋に所属する力士全員が、休場に追い込まれている。

「これだけ多くの感染者が1つの部屋から出たならば、本来は場所を中止すべき。常識ある組織なら、そうしているでしょう。しかし、協会は一貫して『問題なし』と主張し、開催を強行することにしました」(大相撲担当記者)

 相撲協会は、8月17日に芝田山広報部長が「秋場所へ向け、引き締める」と、第三者との飲食を禁ずる指令を出していた。
ところが……。

「各部屋で指令が徹底されているとは言い難く、若い力士が頻繁に外出している部屋もあります。

 たとえば、『どこへ、誰と』など、外出時の行動記録をチームに提出することが義務づけられているJリーグでも、サガン鳥栖でクラスターが発生しました。角界は、そこまで厳しくやっていません。

 しかも相撲は、裸の男がぶつかり合うし、若い衆は大部屋で、何人もが集団で生活している。いわゆる “密” な状態なんです」(同前)

 こうした状況に、ある幕下力士は「後遺症も心配だし、自分のキャリアを考えると正直、休場したい」と本誌に語った。また、大部屋で暮らす別の若手力士も「大部屋での生活をやめて、アパートで暮らしたい」と本音を漏らす。

 力士たちが不安を抱えたままの、秋場所強行開催。これでさらなる新型コロナ感染者が出てしまったら、目も当てられない。