情報量の多さを利用したさまざまサービスが始まっている

 高速道路を走るユーザーにはお馴染み。いまや高速利用者では装着率が9割を超えているというETC。「Electronic Toll Collection system」の頭文字をとったもので、そのまま日本語にすれは「自動料金収受システム」といったところだろうか。

 しかし、最新世代の「ETC2.0」は単なる料金収受システムではない。料金だけでなく情報の受け渡しも可能になっている。さらに、そうした双方向通信機能を活かして、便利な機能の社会実験も始まっている。

 その好例といえるのが、ETC2.0限定の『一時退出』料金制度だ。これは特定の「道の駅」利用を前提に、高速道路をいったん降りて、一般道を走って道の駅に立ち寄り、再び高速道路に乗り直した場合でも、高速料金は乗りっぱなしと同じ料金に調整するというもの。本来であれば必要となる“初乗り料金”ぶんが免除されるというもので、道の駅の観光スポットとしての魅力拡大を考慮した社会実験として進められている。

 現時点では全国23箇所の道の駅しか対象になっていないので、それほどメリットを感じられるシステムではないかもしれないが、こうした料金制度に観光産業へのプラス効果があると認められれば、さらに拡大することも期待できる社会実験だ。なお、道の駅への立ちよりは、決められた入口から入場し通信をする必要があり、当然ながら道の駅に立ち寄らなければ料金調整の対象とはならないので注意しよう。

 このような料金調整の機能を、さらに渋滞の低減やロードプライシングの拡大に活用しようというアイディアもある。具体的には関東地方の環状道路「圏央道」の利用を促すために、ETC2.0限定の割引制度が実施されている。

 対象となっているのは、圏央道(茅ヶ崎JCT〜海老名JCT、海老名〜木更津JCT)、新湘南バイパス(藤沢〜茅ヶ崎JCT)の区間。東名・中央・関越・東北・常磐の各高速道路を繋いで走行する際に、首都高を利用するのではなく、圏央道を利用する車両が増えれば東京都内の流入車両が減り、ロードプライシング的も意味がある。それが、この割引料金の狙いだ。通常のETC料金と比べると、普通車で1500円のところが1390円になったり、2180円の区間が1850円になったりと、1割前後の割引となる。圏央道を多く使うユーザーであればETC2.0にするメリットは大きい。

 そもそも、圏央道の利用を促したい理由は、都内の渋滞解消につなげるためだが、ETC2.0の双方向通信で得た情報をカーナビと連携させることでスムースな移動をサポートする機能もある。それが「渋滞回避支援(ダイナミックルートガイダンス)」というもので、リアルタイムの交通情報をもとに渋滞回避ルートを自動的に案内してくれるサービスだ。

これからETCを装着するなら2.0一択なのは間違いなし

 ETC2.0による情報は、高速道路全般を網羅したもので、1000km先の渋滞情報も加味したルート設定が可能という。プロのトラックドライバーでもなければ1000km先までの移動を考慮する必要はないかもしれないが、それくらいの情報量を得ることができるというのはETC2.0のメリットといえるだろう。

 そうしたリアルタイム情報は「安全支援」の面でも役に立つ。渋滞最後尾が近づいていることや落下物注意などをナビ画面に表示することもできるし、場合によっては凍結路の画像を出して注意喚起することも可能になっている。また、カーブやトンネルといった事故多発ポイントに近づくと注意喚起の表示をするといったことも可能になっている。

 アクシデントといえば地震などの災害時、クルマに乗っていると気付きにくい面もあるが、ETC2.0の双方向通信を利用し、車両側に地震発生を知らせる機能もあるのだ。さらに規制情報、走行可能ルート、避難地情報なども提供されるというから、万が一の際に大きな安心を生み出してくれることが期待できる。

 というわけで、従来型とETC2.0を機能だけで比べれば、ETC2.0を選択するという結論以外あり得ないといえる。ただし、装着コストの差はまだまだ存在しているし、ましてすでにETCを取り付けている人がわざわざ付け替えるだけのコストメリットはほとんどないといえるだろう(圏央道を多用するドライバー以外)。

 そうはいっても、これからETCを装着しよう、新車購入時につけようと考えているユーザーであればETC2.0の一択ではないだろうか。そういえば、一部のETC車載器には2022年問題といって、使えなくなる可能性があったりする。そうしたユーザーもETC2.0車載器への乗り換えを検討してみるのも良さそうだ。