ほぼすべての美容ブランドが人種差別への反対を表明するなか、業界のインフルエンサーやリーダーたちも多様性実現のため声をあげている。

ウオマ・ビューティー(Uoma Beauty)の創業者、シャロン・シューター氏は6月3日に#pullupforchange(変化のために調べよう)キャンペーンを立ち上げた。同キャンペーンはBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)への「支持を発表した全ブランド」や経営幹部に対し、「72時間以内に、黒人社員数を公表」するよう要求している。また、同キャンペーンは消費者に対してもこれに対する回答があるまでブランドの商品購入を控えるよう呼びかけている。いくつかのブランドはすでにこれに応え、黒人社員数を公表している。

シューター氏は同キャンペーンの公式インスタグラムアカウントに投稿した動画のなかで、米国人材イノベーションセンター(Center for Talent Innovation)の統計によれば、専門的な業務につく社員のうち黒人が占める割合はたった8%、役員ではわずか3.2%であり、フォーチュン500のCEOに黒人は4名しかいないと語った。

さらに同氏は次のように述べている。「これらの企業は、いわば仕事の門番だ。こうした企業が私たち黒人をもっとも長いあいだ貧窮させ、追い出し、虐げ、何もせず、それでいて何も言葉を発しなかったのだ。まさにいまこの瞬間ですらそうだ。彼らがフォロワーや消費者に、人種差別の解消にどれほど貢献したかを喧伝している、いまこの瞬間ですら」。

同キャンペーンは「調べないのであれば何も言うな(pull up or shut up)」というフレーズを用いている。これは美容業界のインフルエンサー、ジャッキー・アイナ氏も共有する見解だ。同氏は「私と提携したブランドがすべて、このキャンペーンに参加することを強く求める」と述べている。

アイナ氏はさらにインスタグラムへ投稿した動画のなかで「自分たちがこれまで果たしてきた役割を無視し続け、黒人が経済へ参加する機会を奪い続けるのは、真に永続的な変化をもたらそうとする欲求の欠如にほかならない」と訴えている。

キャンペーンに呼応するブランドたち

美容ブランド各社は、このキャンペーンに呼応してSNSで数字を発表しはじめた。最初に発表したウオマ・ビューティーでは、チームメンバーの58%が黒人であり、83%が有色人種となっている。ココカインド(Cocokind)は日本時間の6月5日午前11時に、インスタグラムに社員の6%が黒人社員であると投稿した。同社は「私たちがやらねばならないことを改めて認識し、責任をもって取り組むと約束する」と述べている。同社は今後、毎年6月30日にレポートを公表するとしている。

ミルク・メイクアップ(Milk Makeup)も6月5日の朝に45名の社員のうち9%がアフリカ系カリブ人またはアフリカ系アメリカ人であると発表した。同ブランドは投稿のなかで、「十分な黒人社員がいないことについて全責任を負う」とし、人材開発エージェンシーのスコープ・オブ・ワーク(Scope of Work)と提携して雇用方法の調整を行うと約束した。

E.l.f.はインスタグラムに、チームの「45%が多様性のある人材」で、経営陣の60%が女性だと発表した。これを満たす米国の上場企業は10社にすぎないという。

小規模なスタートアップも同キャンペーンに参加している。キンシップ(Kinship)はフルタイム社員6人に黒人社員はおらず、財務的に人員を増やせるようになったときは、「積極的かつ厳密に」多様性確保のため動くと発表した。

またファマーシー・ビューティー(Farmacy Beauty)はメールで、社員の13.6%が黒人であり、そのうち12.5%が部長以上の役職についていると発表した。同ブランドの統計によれば、社員の54.5%がマイノリティーであり、そのうち62.5%が指導的立場にあるという。

同社のPR兼インフルエンサー担当アソシエイトディレクターを務めるチャンドラー・ロリンズ氏は「これについては非常にオープンに話し合いを行っている。当社は、米国全体を反映するようなチームを構成したいのだ」と述べている。

「これは十分な数字ではない」

バースト・スキンケア(Versed Skincare)は6月4日、インスタグラムのストーリーで社員の6%がアフリカ系アメリカ人で、指導的立場および役員の14%が黒人であると発表した。

「これは十分な数字ではない」とバーストのゼネラルマネージャー、メラニー・ベンダー氏は認め、そして「もっとこの分野について思慮を深め、変化を起こすための計画をまとめたい」としている。同氏は、今回の出来事によって美容業界に「単にインクルーシブなだけでなく、積極的に反人種差別的な立場への進化」が起き、「こうした立場が実際の行動につながるようになった」と述べている。今後「実際に取り組みを進め、理解するため調査するという観点からすれば、これまで以上に学ぶべきことがある。自分たちが与える影響だけでなく、自分たちが受けることができる影響についても知らねばならない。これまでこうした取り組みは十分ではなかったと思う」。

社員の多様性の確保以外にも、いかにマイノリティーの社員が企業に影響を及ぼし、良いキャリアを築けるような企業文化やポリシーが構築できるかが問われている。LinkedInで大きな反響を得た最近の投稿を見れば、昇進やリテンション、福利厚生といった各社が取り組むべき分野が見えてくる。

エスティローダー(Estée Lauder Companies)の場合、経営陣の14.2%がアフリカ系アメリカ人であり、46.4%がマイノリティー(フルタイム、パートタイム、通常、一時勤務を含む全社員)となっている。同社には黒人リーダーおよび役員ネットワークをはじめとする30の人材グループが存在する。

リテンションも非常に大切

社会的意識の高いブランドの文化についてコンサルティングを行い、文化的で創造的な空間を提供するホープンクラス・アンド・セルフセルズ(Hopenclass and SelfSells)の創業者、シシー・ジョンソン氏は、単なる雇用数だけでなくリテンションも非常に大切だと語る。

「ファッションおよびクリエイティブ業界にいて気づくのは、黒人社員の勤務があまり長期に渡らないという点だ」と、同氏は述べ、次のように指摘する。「確かに数字の上ではよく見える。だが、自覚のない差別や変化のための機会や手段が限られているせいで、長期間勤められなくなる」。

また指導的立場にたつ黒人が少ないことが、過剰な重圧につながっていると指摘する。「『初の黒人の』といった点が強調されすぎている。これは非常に疎外的だと思う。こう言われれば誰からも非常に注目されるようになる。そして非常に高い期待を持たれてしまう」。同氏はこれが「黒人のトップの役員たちにとっての現実」であり「ミスはほとんど許されない。皆が注目しているのだ」と語る。

「価値観を掲げるだけでは不十分」

ファマーシー・ビューティーのロリンズ氏は、ブランドが「多様性のトレーニングやワークショップといった機会を設け、チームメンバーが同僚の体験していることについて学べるようにすべきだ」と指摘する。「これは社員の多様性が高くない企業において特に重要になる」。

ブランド各社のあいだで、社員の多様性が事業に良い影響を及ぼすという認識は広がり続けている。ハーヴィア・ボタニカルズ(Herbivore Botanicals)でEC担当シニアディレクターを務めるトラン・ンゴ氏は「文化的な思いやりやつながりを理解できるような人材がいることは大切だ。『この点については考えたか?』とか『それはあまり適切じゃない』といった適切なアドバイスができる人間の価値は高い」と語る。
業界のなかで、多様性について単なるリップサービスだけでは不十分だというコンセンサスが広まっている。

「私たちは価値観を広げ、自分たちが見落としてきたものを明らかにした。だがその見落としへの対応と、理解を深めようとする努力を続けてこなかったのではないか」とベイカー氏は指摘し、次のように述べた。「価値観は、ただ掲げるだけでは不十分なのだ」。

LIZ FLORA(原文 / 訳:SI Japan)